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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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インターミッション@JC

 チアキさんが試合に向けてセッティングしてくれた特訓の合間の休憩時間、チアキさんの車でコンビニまで買い出しに行っていたあかりちゃんとみつきちゃんが数枚の紙を持って帰ってきた。

「おーい、みんなー、お兄ちゃんと狂華さんとこ結果出たよー」

 私達の予想では朱莉さんと狂華さんが一勝ずつ、あとは狂華さんと当たらなければ朝陽さんと愛純さんが勝って初戦は朱莉さんチームの勝利といったところだろうと思っていた。

 だが、結果は朱莉さん敗退、朝陽さん敗退、愛純さんは予想通り勝利で、柚那さんがダブルスでまさかの勝利だった。

……まあその、夏樹さんは、ね。なんとなくそんな感じになると思っていたし。


「うーん、意外っちゃ意外な結果だね」

 皆から少し離れたところで結果を見てあれこれ話をしていた私と和希の後ろから紙を覗き込んだ今日の特訓相手であるマリカがそう言って唸る。

「意外っていう意味だと、あなた達のパワーアップっぷりも意外なんだけど」

「あっはっは。それ、とても私以外のメンバーをフルボッコにしたチームのメンバーが言う言葉とは思えないなあ」

 チアキさんが用意してくれた私達の特訓相手はマリカたち連絡将校見習いチーム、通称深雪ちゃんと愉快な仲間たちだった。

 最初に聞いた時は正直特訓相手になんかならないだろうと思っていたのだが、深雪をはじめとしてアビーもカチューシャもベスも相当なパワーアップを遂げていて、負けはしなかったものの、マリカのいうようなフルボッコとは程遠い結果になった。

 さっき深雪が散り際(なんか最後にそういう演技をしていたので一応合わせようと思う)に言っていたことが本当だとすれば、四人のパワーアップは主にこのマリカのおかげということになるのだが。

「んー?何か言いたそうだけどなに?」

「…いや、四人に一体何をしたのかなと思って」

「せっかく一緒に住んでいるんだし、色々とね。ほら、私一応年上だから教育的指導!みたいな」

 そう、私も最近知ったのだが深雪以外の三人はこの学校に転入して以来マリカの家に居候している。そして深雪もなんだかんだで、マリカの家に入り浸っていることが多かった。

「というか、あなた一体何者なの」

「前から言ってんじゃん。イタリアの見習い魔法少女」

「どうも怪しいのよね…」

 一応、今回の武闘大会は連絡将校組は参加不可ということになっているが、マリカは現状二重国籍だと思うので、出ようと思えば出られたはずで、しかも多分今回出場ギリギリのラインになっているあかりちゃんよりも強い。

「ぶっちゃけ、マリカはあかりちゃんより強いわよね」

「ああ、さっきから俺もそれ思ってた」

「強いよ。多分和希と同じくらいかな」

 めちゃめちゃ強い!どうりで私の全速力を正面から受け止められるわけだよ!

「だったらマリカも出ればよかったのに」

「うーん…それはまあいいじゃん。それよりぶっちゃけどうなのよ、東北チームとの対戦。二人は自信あるの?」

「東北というか、精華さんチームね。意外に穴がなくて勝ちが計算出来ないのよね」

「お、なになに。その物言いだと組み合わせ次第では現役魔法少女にも勝てちゃうって言ってるようにも聞こえるけど」

「でもさ、ぶっちゃけ寿さんなら真白も勝てるんじゃないか。あかりだとちょっと厳しいにしても今回即死魔法は禁止だし、そうなると寿さんには手札がない」

 和希は得意気にそんな事を言うが、この組み合わせが発表されてから半月。『東北チームは彼女の頭脳労働で回っている』とも言われた寿さんがなんの対策もなく半月過ごしているとは考えにくい。むしろ、そういう意味では同じ即死魔法持ちの精華さんのほうが勝ちやすい気がする。

「真白は和希の意見とはちょっと違うみたいだね」

「そうね。今回場外を気にせずに飛び回れるのは私にとってはプラスだけど、タマとか橙子さんみたいなパワータイプの魔法がある相手と当たると結構不利かも。さっきマリカがやったみたいに強引に抑えこまれたら勝てないもの」

「さすが、真白は自分のことをちゃんとわかっているじゃん」

「まあね。自分がマグロみたいなもんだってことくらいは承知してるわよ」

 上位の魔法少女に対して唯一対抗できる手段が飛び続けることである私は、泳ぎ続けていないと死んでしまうマグロのようなものだ。

「ちなみにさ、二人は優勝したらどんな願い事すんの?」

「俺はましっ……」

 真白とずっと一緒にいられますようにとか言おうとしたのかもしれないが、一応私達の関係はまだ秘密ということになっているし、そういう風にタマにもみつきちゃんにもそう釘を差してある。なので和希には悪いが口をふさがせてもらった。

「おお、真っ先に真白の名前が出るなんて真白ってば超愛されてるじゃん」

「ちょ…え…?…なんで知ってるの?」

「あはは、ごめんごめん。ちょっとしたカマかけだったんだけど…でも、やっぱりそうか。最近なんか仲いいなあとは思っていたけど…なるほどねえ、優勝できるといいね」

 マリカはそう言ってニヤニヤとした視線を私達に向ける。

「一応、まだ内緒だからあんまり言いふらさないでよ」

 タマと都さん、それにやむなく朱莉さんには話したものの、実は深雪にも話していないくらいなのであまり言いふらされたくない。

「まだ…ね。くるみに無理やりくっつけられたとかなのかと思っていたけど、そういうわけでもないんだ」

「なんでそんなことまで!?」

「いや、あいつってあかりに関係することだと容赦無いというか、手段を選ばないからさ。邪魔な和希を真白とくっつけてあかり狙いの場から強制退場させる!なんてこともしかねないなあと」

「予想していたなら止めて欲しかった…」

「え!?マジでくるみなの?」

「ええ、マリカの言う通り和希をそそのかしたのは来宮さんよ」

「おいおい、最初はたしかに来宮にそそのかされたけど、今の俺はちゃんと真白のこと見てるんだからな」

「ヒューヒュー」

「ヒューヒューとか言わないで!和希も真面目な顔しない」

「和希はマジで真白はマジじゃない…ってことは真白は他に本命がいて、和希はキープとか」

「そうそう。俺キープなんだよ」

「うわっ……人は見かけによらないねぇ…」

「わかってる、わかっているわよ。今の自分が世間一般でどう見られるかってことは。でもこれはもう意地なの。女の意地」

「意地ねえ…何があったか知らないけど、意地より愛のほうがよくない?前向きにさ」

「……そんな簡単に割り切れるもんじゃないのよ」

「そうかい。ま、和希が笑ってキープだって言ってるなら、そう悪い関係でもないんだろうけど結局最後は意地より愛だと思うよ。それだけ憶えておいて頂戴な」

「ちょっと意外。マリカってあんまりそういうこと言うイメージなかったんだけど」

「おいおい、私のファミリーネームはアモーレ。イタリア語で愛だよ」

 そう言って、マリカはなんとなくひなたさんに似たちょっとうさんくさい笑顔で笑った。


 今日は朱莉さんが私達の寮に来られないということで和希を関東寮に残してバスに乗り込んだ私達は、特訓で疲れていたこともあり行きのような元気はなく殆どのメンバーが寝て過ごしていた。


 ――私と、みつきちゃんを除いては。


「真白…後でちょっといい?」

 一番後ろの席から一番前の席に座った私のところまであるいてきたみつきちゃんは、みつきちゃんが起きていることに気づかないふりをして本を読んでいた私に、そう声をかけてきた。

「うん…」

 ついに来たという感じだったが、和希がいないこのタイミングはみつきちゃんにとって都合のいいタイミングだなあとは思っていたので特に驚きはない。

「ここでも良いけど」

「ここはやめておこう、寝たふりしてる子がいないとも限らないから」

 そう言って後ろを振り返るみつきちゃんにならって私も中腰になって後ろに視線を向けると、どうやらマリカとベスが起きていたようで、ちょっと慌てた様子で姿勢を変えた。

「ね?」

「まあ、あの二人なら聞かれなくてもどこからか調べてきそうな気がするけどね」

「あはは、そうだね」

 とは言ってもやはりデリケートな話だ。聞かれないで済むのならそれに越したことはない。私は寮に帰った後でタマに声をかけ、タマには屋上への出入り口を見張っていてもらってみつきちゃんと話をすることにした。

「和希の事だよね?」

「うん。その、あの時はごめん。なんか真白に色々押し付けて逃げ回って、さらにお兄ちゃんとかにも迷惑かけるような事になっちゃって。それで、その…ちゃんとおめでとうって言ってないなって思ってさ」

「えっと…おめでとうって?」

「だから和希とのこと。私は告白せずに振られちゃったけど、真白は和希と付き合えてるんだもん。だからおめでとう」

「あ…ありがとう」

 どうしよう。みつきちゃんに対してだけは和希は実はキープなんだよーんとは言えないよなとは思っていたが、こうも真っ直ぐな目でそういうことを言われてしまうとなんとなく実は付き合ってないよということを匂わせることもできない。いや、付き合ってはいるんだけど。

「でも、いいの?諦めちゃって」

「あ、もちろん和希のことがどうでもいいとかそういうことじゃなくて、今の私にはちょっとした目標ができちゃってさ。それでちょっと恋愛している場合じゃなくなっちゃったんだ」

「目標?」

「うん、お父さんを探すっていう目標。私南アフリカでちょっとした事件に巻き込まれちゃって、それでひなた達が助けに来てくれたんだけどそのひなたたちもピンチになっちゃって。でね、そこになんと私のいお父さんが現れて大人バージョンの私と一緒に事件を解決してくれたんだって!だから私はお父さんを探しだして、あの時助けに来てくれてありがとうって言うんだ」

 なるほど、今まで消息がわからなかったお父さんの手がかり…とはいえないまでも活きているということがわかった以上、みつきちゃんとしては放っておけないと、そういうことか。

「だからって言うわけじゃないけど、真白は和希といっぱい幸せになってね。というか、私の分まで和希を幸せにしてあげて」

 ま、眩しい。みつきちゃんの笑顔がすごく眩しい。

「あ、あのね、みつきちゃん…」

 いかん、これはいかんぞ。これでは本当に和希とくっつかざるをえない感じになってしまう。

「いいの。和希が選んだのが真白でよかったって思うし…あかりとじゃきっと和希が不幸になっちゃうもんね」

「ぷっくっく…」

 タマがこっちを覗きながらめちゃめちゃ笑ってる!

 わかっている。きっとタマはあかりちゃんとくっつくよりも私とくっついている今のほうが和希が不幸だって思ってるんだろうけど、仕方ないじゃないか。

 私にだって言い分はあるし、状況がそうなるように流れてしまったんだから

「だからね、真白。本当に、和希のことよろしくね。もし和希を泣かせたら私がとっちゃうからね」

 『うん、むしろ取ってほしい、一発殴って和希を泣かせれば良いのかな?』とはまさか言えない。

「それだけだから。今度の試合絶対勝とうね!」

「う…うん…」


 結局、みつきちゃんには何も言えないまま一週間が過ぎ、いよいよ私達の試合の日を迎えた。


※JC編はあかりが主人公です。


アッカリ~ン

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