表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

176/809

ドラフト会議

 白いクロスがかけられ、向い合せにくっつけられた長机に、俺と狂華さん、ひなたさんとチアキさん、精華さんと楓さんが向かい合って座わり、いわゆるお誕生日席にはすりガラスのボックスに入った都さんが座っている。

「じゃあ、回収しますね」

 箱をもった桜ちゃんはそう言って俺達が書いたメモ用紙を集めてから都さんの横に立つと、箱のなかから一枚の紙を取り出した。

「えーっと…邑田朱莉、第一巡選択希望選手、伊藤柚那」

 桜ちゃんがそう言うと、都さんの背後にある巨大な液晶モニタの一部に柚那の名前が表示された。

「相馬ひなた、第一巡選択希望選手、能代こまち」

 桜ちゃんは淡々とした口調で次々にメモを読み上げていく。

「鷹橋チアキ、第一順選択希望選手、根津みつき。宮本楓、第一順選択希望選手、神鷹イズモ。森崎精華、第一順選択希望選手、笑内寿。己己己己狂華、第一巡選択希望選手…」

 桜ちゃんはそこで一度言葉を切り、何度も確認するように紙を見てから少し気持ちを落ち着けるかのように大きく息を吸ってから「九条真希」と発声し、それを聞いてその場にいた人間は狂華さんと都さんを除いて一様に大きく動揺した。



 事の始まりは、一週間ほど前。こまちちゃんたちがみつきちゃんと新しい三人の魔法少女、そしてなぜかひなたさんを連れて帰ってきた翌々日に遡る。

 今日と同じように集められた俺たち上位六人、狂華さん、ひなたさん、精華さん、チアキさん、楓さん、そして俺はこれまた同じような位置に座って、第二回魔法少女大武闘会大会要項と書かれた資料に目を通していた。

「と、いうことで見直し戦は、スポンサーの意向で第二回大武闘会としてテレビ放送することになりましたー!」

 そう言うと、完全に置いてけぼりの俺達とは違い、狂華さんだけが「わーっ」と言いながら拍手して盛り上げている。おそらく狂華さんだけ先に聞いていたんだろう。

「…で、前回同様チーム戦っていうわけですね」

 誰も発言しないので、俺が仕方なくそう尋ねると、都さんはうんうんと笑顔で頷く。

「そういうことなのよ。で、去年のチーム分けはちょっと不透明だったから、今年はみんなに監督兼チームリーダーっていうことで、チーム編成からやってもらおうと思って」

 不透明っていうか去年のは完全にヤラセだったからな。後で振り返って見れば楓さんだけじゃなくて、愛純の件も意図的だったんだろうし。

「っていうか、都。これトーナメント戦じゃなくて、総当り戦になっているけど」

「最近敵もそんなに出てこないし、なんだかんだで好評だったこの企画でしばらく尺を稼ぎましょうっていうのがスポンサーの意向なのよ」

「せちがらいな、まったく」

 チアキさんの問に答えた都さんの言葉を聞いてひなたさんがやれやれとため息をついた。

「はい」

「はい、精華」

 発言するために律儀に手を上げた精華さんをこれまた律儀に都さんが指すと、精華さんはこれもまた律儀に立ち上がってから口を開いた。

「ドラフトってなに?」

「……よし、精華さん。ちょっと向こうに行こうか」

 そう言って楓さんが立ち上がり、精華さんの手を引いて一旦部屋を出て行った。

 まあ、赤ヘル大好き楓さんなら、全俺が泣いた某投手とスカウトの秘話を交えてうまく説明してくれるだろう。んで、その説明を聞いて戻ってきた精華さんの第一声は多分こうだ『感動した!私もスカウトになってドラフトでこまちもしくは寿を指名したい!』

 まあ、とりあえず一旦二人のことは置いておくとして。

「でも、五人ずつ指名ってありますけど、1チーム六人っていうことは、俺達は控えっていうことですか?あ、もしかして俺達に関しては単純に指導能力を見るとかそういうことなんですかね」

「指導能力ももちろん見るわよ。カメラ入れて特訓とかの風景も撮るからね。それとは別に、試合をシングルス4ダブルス1で行うの。もちろんダブルスで勝っても勝ち星は1つ」

 なるほど、ただ単に5戦するよりも変化があって面白いというわけだ。

「で、これが私達を除いた上位30名と…というか、JCは異星人組含めて全員残っているのね。これ、地味にすごいんじゃない?」

 チアキさんに言われて資料の中にある名簿を見ると、確かにJCは全員残っている。

さらにあくまで目安にしかならないものの、名前の横に暫定ランクもかかれているのだが、あかりの36位はともかく、みつきちゃんは8位。和希が9位。タマが18位で真白ちゃんが僅差で19位となっているので上位クラスの中でもJCチームをまとめて平均すると真ん中くらいの順位にはなる。

 ちなみに異星人組は当初50%の出力を出せるようにする予定だったが、それでもかなり分が悪いということで、もうちょっと抑えられている関係もあり、可もなく不可もなくという順位に収まっている。

「さて、誰を指名すっかな…愛しの桜は今回もランク外だし……」

「…ねえひなたさん、なんで最近やたら桜ちゃんにベッタリなんです?」

 ひなたさんがかいがいしく桜ちゃんの介助をしたり、ご飯を作っているらしいという噂を聞いていた俺は、ここ一週間ほど気になっていたことを思い切って聞いてみることにした。

「…桜と別れたくないからだよ」

「悪いものでも食ったんすか!?」

「大丈夫!?具合悪いならおかゆかなにか作ろうか?」

「ひなた、今度は一体桜になにをしたの!?」

「ていうか、どういう心境の変化かしらないけど、なんかやらかしちゃったなら、今更慌ててベタベタしたってもう無理なんじゃない?」

 都さん容赦ねえなあ…

「揃いもそろってなんでそんな感想が出てくるんだよ!……はあ…実は大人みつきに俺が桜と別れるっていう予言をされてな。それを聞いて少し気をつけなきゃなって思ったんだよ」

「ああ…」

「なるほど…」

「可哀想に…」

「おお…もう…」

「言いたいことがあるならはっきり言えよ!」

「まあ、とにかくそういうことだから。みんな誰を指名するか考えておいて。競合したらクジで決めるからその時は恨みっこなしよ」

 ギャーギャーと喚いているひなたさんをスルーして、都さんがそう締めたところで精華さんと楓さんがドアを開けて戻ってきた。

 そして

「わだじズガウドになっでごどぶぎがこまぢをじめいずる!」

 精華さんは号泣しながら俺の予想通りのセリフを言った。

 ……まあ、指名したのはスカウトじゃないんだけどね。




 二巡目は俺が愛純、ひなたさんが意外なところで時計坂さん(まあ、彼女については上位に残っていること自体がちょっと驚きだ)チアキさんが和希で楓さんが喜乃ちゃん。精華さんが橙子ちゃんということで、俺と楓さんは関東・関西、ひなたさんが地方・チーム関係なく腹黒連合。チアキさんがJCで、精華さんが東北という色が濃くなってきたが、狂華さんだけが二巡目で佐須ちゃんを指名して無軌道気味だ。正直、九条ちゃんも佐須ちゃんもランキングではトップクラスではない。元自衛隊で狂華さんと出自が一緒の佐須ちゃんはともかく九条ちゃんを最初に持ってきたのがよくわからない。

「三巡目、邑田朱莉、秋山朝陽。相馬ひなた、大引彩夏。鷹橋チアキ、神田えり。宮本楓、刈宿涼花。森崎精華、小此木セナ。己己己己狂華、永田優子」

 ……資料で名前見た時も誰だろうって思ったけど、永田優子って誰なんだろう。

永田…ナガタ…優子…ユウコ…ああ!ユウか!でもここでユウを指名するっていうことは、別に勝つ気がないわけじゃないんだよな、狂華さん。




 その後、4巡目5巡目に俺が深谷さんと恋、ひなたさんが桃花ちゃんと里穂ちゃん。チアキさんがあかりと真白ちゃん。楓さんが松葉と鈴奈ちゃんというある意味予想どおりのメンバーを指名したのだが、精華さんはタマと静佳ちゃんを選択してちょっとだけカオスな感じになった他、結局狂華さんは男子会の時に会った沖縄離島方面の佳純ちゃん、北海道の瑞季ちゃんを指名するなど最後まで何がしたいのかよくわからなかった。

「なるほど、同期と関東メンバーなんですね」

 そう言いながら柚那はチーム分けの表を俺から奪い取ってマジマジと見ると「優勝できるんじゃないですか?」と言った。

「できないことは無いと思うけどな。良くも悪くも戦力が分散してるから、逆にいうとどこが優勝してもおかしくない。まあ、狂華さんのところはちょっと良くわからないけど」

「九条真希って結構強いんですかね?」

「クローニク未登場なんだよな。劇中ではモブ扱いだし、誰もいないとき小規模の迎撃に出ることはあるけど、あくまで迎撃、露払い専門なんだよなあ…」

 前に深谷さんとネギで殴りあっているのを見たことあるけど、それだけじゃ実力がどうとは言えない。だが、36位までに入る実力があるのは確かなのだ。

「今度ミーティングの時にでも深谷さんに聞いてみるか」

「そうですね。あとは…楓さんのところが普通に関西チームでチアキさんのところがJC主体って言う感じですね。それと、精華さんのところがお友達チームって感じでしょうか」

「え?精華さんって、タマとか静佳ちゃんと仲いいの?」

「二人共よく食べますから、良く料理の試食をしてもらっているらしいですよ」

「そうなのか…」

 去年の今頃は、持ち前のコミュ症で交友関係が狭くてあれだけ悩んでいた精華さんがなあ…そういう話を聞くと、なんかちょっとうれしいな。

「で、ひなたさんのところが腹黒チーム」

「おいおい、里穂とこまちちゃんはともかく、桃花ちゃんは腹黒とは違うだろ」

 なにしろ柚那自身が『すごくいい子!』と評していたくらいなのだ。え?彩夏ちゃん?うん、ノーコメント。

「私も愛純もそう思っていたんですけどね。…まあ、人を見る目がなかったっていうことで」

 一体三人の間になにがあったのか。

「…これ、しばらく訓練期間もらえるんですよね?」

「一応二週間もらえるぞ」

「じゃあ、早速明日から恋と夏樹ちゃんを呼んで特訓しましょうか」

 柚那はそう言って目を怪しく光らせながら笑った。


結局中長編になってしまうのね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ