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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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Pure white summer 5

 肉が積み上がっていく。

 同年代の女子の中ではどちらかと言うと早く食べる方である私のペースよりもはやく、私の皿にどんどんと肉が積み上がっていく。

「ほら、また肉がやけたぞ。遠慮しないでどんどん食べてくれよな」

「あ、いえ。さっきご飯食べたばかりなのでそんなには…」

 ……なんで私はこんなところで肉を薦められているのだろう。いや、原因は明確だし理由もわかっているんだけれど。

 食事の後、予定通りの配置についた私と和希はレンズなんだかそういう兵器なんだかわからないようなものがついたカメラをつかって例の男性型異星人のパーティを隠し撮りしていた。

 すると、これもまた予定通り朱莉さんが彼らのパーティ会場に現れ、水着に白衣というちょっと理解し難い格好をしていた武蔵大和氏に接触。そして何故か薦められたビールを飲み始め、バーベキューの肉を食べ、30分もしないうちに、私達のほうに向かって上機嫌な笑顔で手招きをした。

 それを見た私と和希はしばらくどうしたものかと考えていたのだけれど、少ししてセナさんと彩夏さんが登場し、その直後、朱莉さんから私の携帯に『撤収してコンビニで氷買ってきて』という、お使い指令の電話が入った。

 そして私と和希はカメラを片付けて氷を買って合流、今に至る。というわけである。

 ちなみにさっきから私の皿に肉を盛ってくれている男性は虎徹さんといって、自己紹介の時の話によると、日本の歴史が大好きで特に近藤勇が好きらしい。ちなみに白衣は着ておらず、長めの水着にパーカーを羽織るという、大和さんに比べるとかなりまともな格好をしている。

 下は高校生くらいから30手前くらいまでに見える男性五人組である彼らは、非常に気さくに私達をもてなしてくれた。

 問題の大和さんは朱莉さんに、私には虎徹さんが、彩夏さんとセナさんには猫田さんと犬山さんという二人組が、和希には正宗くんという五人の中では一番若い子がついて色々と世話を焼いてくれている。

「っていうか、これってもう合コンじゃない…?」

 私自身は合コンというもの参加したことがないので、これは合コンだ!と力いっぱい言えるわけではないが、それでも同じ数の男女がいて、それぞれペアになって話をしたり食事をしたりしているこれは立派に合コンな気がする。

「もしくはホストクラブか」

 背後霊のようにピッタリと背中にくっついているセナさんを引き連れた彩夏さんがそう言って笑いながらやってくる。

「ねえ、もう帰りましょうよ彩夏」

「セナはもうちょっと男性になれたほうがいいんじゃない?中学生の真白ちゃんだってこれだけしっかり話ができているというのに、セナときたらさっぱりじゃん」

「だって…」

 まあ、セナさんずっと女子校だったらしいし、免疫がないのもしかたないといえばしかたがないのかもしれないけど、さっきからずっと彩夏さんの背中にくっついていて暑くないのだろうか。

「だって、猫田さんってなんか怖い…」

「そう?私はあんまり従順なのより少しワガママなくらいのほうが好きだし、あの二人なら猫ちゃんのほうが好きかなぁ。まあ、残念ながら猫ちゃんはセナがお気に入りみたいだけど」

 そう言って彩夏さんが視線を送った先で猫田さんは和希に絡んでいる。それを見て一安心と思ったのか、セナさんはようやく彩夏さんの背中から離れる。

「ああいう軽い人に気に入られても嬉しくない…うぅ…もうお姉さまのところに帰りたい」

「お姉さまってどんな子?やっぱりセナちゃんみたいにきれいな髪をしているの?」

「ひっ」

 虎徹さんがそう言って一歩近づくと、セナさんは再び彩夏さんの陰に隠れてしまった。

「残念ながら、実のお姉さまじゃないんでセナとは似ていないですよ」

「あ、そうなんだ」

「あと、セナは現在そのお姉さまを愛してやまないのでアプローチしても無駄です」

「そっか。かわいいのに残念だなあ」

「あれ?あんまり抵抗無いんですか?」

 あっさり納得した様子の虎徹さんに私が尋ねると、彼は首を横に振った。

「まあ、同性しかいないのはうちも同じだからそういうこともあるわけさ。猫田と犬山なんかはそうだね」

「何それ萌える!」

 何かのスイッチが入ったらしく、虎徹さんの言葉を聞いた彩夏さんがいきなりエキサイトし始めた。

「従順な犬受け、ワガママな猫攻めとか王道って感じ!」

 お酒が入っているとはいえ、何を言っているんですか彩夏さん。

「いや、現実は猫のワガママ受け、犬ヘタレ攻めだな」

 あなたも何を言っているんですか虎徹さん。

「ああ、ネコだけに」

「ネコだけにだね」

 そう言って二人は肩を組んでわっはっはと笑う。

 なんかもうこの二人付き合っちゃえばいいのに。

「ね、ねえ真白ちゃん。背中貸してもらっていい?」

 彩夏さんが虎徹さんと談笑していることで、隠れる背中を失ったセナさんがそう言って私の背中にくっついて来た。というか、この人はこの人で大丈夫か?

「いいですけど…セナさんってそんなに男性苦手でしたっけ?」

「苦手というか、もともと緊張はするんだけど…それだけじゃなくてここの人達ってその…」

「どうせ僕らは敵だからね」

 そう言いながら正宗くんがこちらに歩いてくる。

「おい、ちょっと待てって正宗」

 和希が彼の肩を掴んで喋るのをやめさせようとするが、正宗くんの足も口もとまらない。

「結局のところ、僕らは君たちの敵で、君たちは僕らにとって獲物でしかないんだよ。だからさっさと狩られてくれると助かるんだけどね」

 遠目にだったけど、彼は和希と仲良くやっているようだったので、こういうことを言い出すのは全くの予想外だった。

「それに、失礼じゃないか。こっちはせっかく君たちをもてなしてやろうと思っているのにビクビク警戒して隠れたりして。それに猫田さんが軽い?そんなことどうしてわかるんだよ。お前こそ自意識過剰なんじゃないのか」

 彼の言葉を聞いて私の後ろでセナさんがビクっと反応したのがわかった。

 確かに私もセナさんのは過剰反応な気がするが、それこそ彼女の事情を考慮しない無神経な対応にも問題があるはずだ。

「もてなすっていうのはね、相手の気持ちを慮る心を以って成すのよ。相手をもてなしてやろう、なんていう気持ちでやるのはもてなすとは言わないわ」

「僕はそいつに言っているんだ。関係ないやつは黙ってろ」

「関係なくない。私、あなたみたいな奴が大っ嫌いなの」

 これだけしているのに、これだけ気にかけているのに、これだけしてやっているんだからこれくらいしてもらって当然だろう…。私がJCの話が出た時に一も二もなく飛びついて、両親を説得したのは朱莉さんのこともあったけど、なによりもそんな田舎独特の風習が嫌で嫌でしょうがなかったからだ。

 そして多分、目の前のこいつはその田舎の連中と同じことを考えている。

 親切心に見せかけた下心しか無いあの反吐の出る考えを持っているに違いない。

「僕にケンカを売るっていうのか?」

「売って欲しいなら売ってやるわよ!」

「やめろって真白。正宗も」

 そう言って和希は私とセナをかばうようにして立つと彼の胸を押して距離を取った。

「和希は僕らの味方だと思っていたのに、やっぱりそっちに立つのか」

「敵とか味方じゃねえよ。アホなことで揉めてりゃ止めるし、女の子がいじめられてりゃ俺はそっちにつく。そんなもん当たり前だろうが。それとな、真白。お前も気が短すぎだ」

「別にいじめているわけじゃ…痛ってぇ!何するんですか虎徹さん!」

「お前が悪い。怖がっている相手に威圧的な態度をしたら余計萎縮させてしまって話にならんだろうが」

 見事なげんこつを正宗くんにお見舞いした虎徹さんはそう言って正宗くんを軽々と持ち上げると砂浜に放り投げた。

「子供の喧嘩に大人がでしゃばるのは大人気ないと思っていたけど、いくらなんでも子供すぎだお前は。ちょっとそのへんで頭冷やしてこい」

「真白ちゃんもね…というか、セナもだよ」

 頭にげんこつこそ落ちないものの彩夏さんの私達への視線は厳しい。

「真白ちゃんの言葉を借りるなら、もてなされるほうもそれなりの心を以って成すべきなんじゃない?この先どういう関係になるかはわからないけど、彼らは今日私達をもてなそうとしてくれている。それに対して怖いだのなんだのっていうのは失礼じゃない?」

「ご…ごめんなさい彩夏」

「謝る相手が違うでしょ。そう思ったなら猫ちゃんとこ行ってきなさい」

「……」

「はぁ…私もついていくから」

「うん…」

 セナさんはそう返事をすると、私の背中から離れて彩夏さんと一緒に歩いて行った。

「ありがとう和希。あと、ごめん。それに虎徹さんもごめんなさい。」

「いいって、気にすんなよ」

「そうそう、気にしなくていいよ。むしろうちのバカが不快な思いをさせてしまってすまなかったね」

 そう言って笑った後で、虎徹さんはひとつ咳払いをしてから再び口を開いた。

「それでその…みんな、彼氏はいるのかな?」

「え?」

「え?」

「あ、いや。まあ、ほら…ね?我々も嫁探しに来ているわけで、俺個人としてもその…な」

 あたふたとしながら真っ赤な顔をしてそんなことを言う虎徹さんは年上の男性に対してこんなことを言うのはどうかなとは思うけど、非常に可愛いくて、好感が持てる。

 このタイミングでそんなことをいい出すということはおそらく彩夏さん狙いだろうか。

「…彩夏さんのどこがいいんですか?」

 別に彩夏さんがダメだとか、やめておいたほうがいいとか言うつもりはないけど、さっきの短い時間でいったい何があっただろう。

「うぇっ!?い、いや。みんなだよ、みんな」

 どうやら、そういうことにしておいてあげたほうが良さそうな感じだ。

「朱莉さんは恋人がいますよ。それに和希も私も好きな人がいます。あと、セナさんはさっき彩夏さんが言っていたようにお姉さまのこまちさんにぞっこんですし。ということで、実はこの中では彩夏さんだけがフリーなんですよ」

「そ、そうなのか!…いや、まあ…じゃあアタックしてもいいのかな」

「彩夏さんは筋肉が大好きだから虎徹さんだとちょっと線が細いかもしれませんけど」

「よし、今日から鍛えよう」

「あ、でもあんまりガツガツ行っちゃダメだと思います。特に大和さんみたいに番組宛に変な手紙を送るとかそういうのは」

「……なにそれ」

「えーっと…」

 私はそもそも今日私達がここにくるきっかけとなった狂華さん宛の手紙の話を具体的な内容と共に虎徹さんに伝えた。すると虎徹さんは、みるみるうちに先ほどとは違う意味で顔を赤くすると『ちょっとごめんね』と一言断ってからダラダラと飲んでいる朱莉さんと大和さんの方へ肩を怒らせながら歩いて行った。

 さっきの正宗君への対応といい、今の大和さんへの対応といい、どうやらこの五人組の実質的なリーダーは虎徹さんのようだ。リーダーというか、もしかしたら風紀委員のような、そういう存在なのかもしれないけれど。

「そういえば、真白の好きな人の話って聞いたことなかったな。誰?身内?」

「内緒」

「きーにーなーるーじゃーんーかー」

 そう言って和希は私の背中におぶさるようにして抱きついてくる。

「そうやって気にするから教えないんでしょうが。だいたい、ここで私があかりちゃんって言ったらどうするのよ」

「え?そうなの?」

「違うけど、そうだって言ったらどうするのよ」

「来宮よりも強力なライバルになりそうだなって思う」

 思うって。なんだその小学生みたいな感想は。

「じゃあ、もしもあんたのことが好きだって言ったら?」

「………え、えーっと…マジ?」

「もしもだってば。そう言われて困るならそういうこと言わないの」

「困らない。もしそうならちゃんと考えるから」

「考えんでよろしい」

 私はそう言って和希にチョップをお見舞いした。

 そう、余計なことは考えないほうがいいのだ。もしもそんなことを考えている時にうっかり声に出したりして、万が一悪意のある第三者にでも聞かれたらどんな噂を流されるかわかったものじゃないんだから。

 まあ、みつきちゃんのことはちょっと考えてあげて欲しいかなとは思うけど。

「ちなみに、他の子から本気で好きだって言われたら和希はどうするの?」

「うーん……どうしよう。その時になってみないとわからないけど、全然知らない相手は嫌かな。真白とかみつきとか、タマとか里穂とかだと揺らぐかも」

「…えりちゃんは?」

「だってあいつバカじゃん。付き合ったりするとすげえ疲れそう」

 和希がそれを言うの…


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