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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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Pure white summer 2

「じゃあ、真白は三番の部屋ね」

 私の引いたくじを見て、来宮さんはこの建物の見取り図に私の名前を書き込んだ

「和希と同じ部屋か…三日間よろしくね和希」

「おう、よろしくな真白」

 今回の旅行、唯一の成人男性である尾形さんは恋人であるチアキさんと同じ部屋というのは決まっていたけど、その他はくじ引きで決めるということで前々から話していた。これは私と和希があかりちゃんの貞操を守るために来宮さんが口八丁であかりちゃんと一緒の部屋になるということを防ぐために出した案だ。

 そしてその結果、私は和希と、あかりちゃんは里穂と、みつきちゃんはえりちゃんと、来宮さんは一人部屋ということで決着した。私としてはJCチームのメンバーの中ならば付き合いが長い霧香さんが一番気が楽なのだけど、霧香さんは今頃保健室で仕事を隠れ蓑にしたゲームに興じているはずなので残念ながら一緒の部屋になることはできず、次に気が楽なタマも部活で欠席。そういう事情を鑑みれば、三番目に気が楽な和希と相部屋なのはある意味当たりだったのかもしれない。

 こういうことを言うと、私があかりちゃんやみつきちゃん、それにえりちゃんや里穂に苦手意識を持っているように思われてしまうが、そういうわけではない。…いや、嫌いではないが苦手意識は持っているんだろうな、多分。

 和希のいいところは、私に興味がないところと彼なりに気を使ってくれる所だ。例えばこうして同じ部屋になって隣で私が着替えていても彼は後ろを向いて私が着替え終わるのをまっているし、たまに夜泣きをしながら私の部屋にやってくるときにも、彼は私に抱きついて眠るが、そこにいやらしさのようなものはない。

これは一緒に関東寮にいた頃の朱莉さんに対してもそうだったらしいので、単純に彼のトラウマからくる赤ちゃん返りのような行動だろう。

和希が私に興味がないとは言ったが、もちろん他の子が東北のこまちさん的な意味で私に興味があるというわけではない。私に対しての興味とはつまり……。

 

「…またおっきくなってる…」

「ちょ…あのね、あかりちゃん。今私パラソルを支えてないといけないんだけど」

 パラソルを立てるために和希が砂を踏み固めている横で私が支柱を支えていると、後ろからあかりちゃんが手を回して私の胸を鷲掴みにした。

「うん、わかってる。だから私は真白ちゃんの胸を支えているんだよ。重いでしょ、そんなに大きいの二つもつけていたら」

「あのねぇ…ひゃっ」

「そうそう。私とあかりがこうして支えておくからだから私達にも何卒ご利益を」

 そんなことを言いながら、みつきちゃんは私の正面下方から私の胸を両手で包み込んで押し上げるようにする。

「そういうことしないの!っていうか私の胸を触ったって、二人の胸は大きくなんかならないわよ!」

「いやいや、なるって」

「いやいやいや、御利益あるって」

「いやいや、じゃなくて、ご利益なんかないんだからやめて!っていうかそんなに大きな胸が触りたいならチアキさんの胸を触ってくればいいでしょ」

 大きい大きいと言われているが、私の胸はそんなに大きくはない。この夏ちょっと成長したもののまだDに届くか届かないかというところだ。対してチアキさんはG。胸を大きくするというご利益を求めて触るならどう考えてもGだろう。

 もうお分かりだろうが、私がこの二人を苦手としている理由はこういう部分だ。たしかに私は成長が早いほうだと思うが、彼女たちだってまだ絶望するような年じゃないし、これから大きくなるかもしれない。というか、実際五年後のみつきちゃんであるみつきさんはかなりスタイルがいいと聞く。

「みつきちゃんは大きくなるのがわかっているんだし、別にいいでしょ」

「まあね」

 そう言って笑いながらみつきちゃんは私の胸から手を離してて和希の横に立ち、上下それぞれににフリルをあしらった赤のビキニをフリフリと魅せつけるように強調しながら尋ねた。

 どうやら彼女にとってご利益とやらはどうでもよく、和希に話かけるための前振りとして使われてしまったようだ。

「ねえねえ、和希はどう?胸が小さいのと大きいのどっちが好き?」

「え……いや、好きな人の胸なら別に大きくても小さくてもよくね?」

「ぐ……」

 多分みつきちゃんは、和希が小さいのがいいと言ったら今の自分、大きいのがいいと言ったら五年後の自分で売り込むつもりだったのだろうが、それは甘い。普段スケベでだらしない和希からは想像できないほど彼のあかりちゃんに対する執着は強いのである。

 まあ、だからこそ私としてはすごく楽なのだ。和希の夜泣きの件にしても朱莉さんから頼まれている事なのでこれについて朱莉さんが私と和希のことを誤解するようなことはないのでその辺りを気にする必要もない。

「…で、あかりちゃんはいつまで触ってるの?」

 本当にこの子は一体いつまで人の胸を弄っているのだろうか。

「いつまででも…っていうか、ちょっと分けて。真面目な話」

「真面目な話、あかりちゃんは何を言っているの」

 ここにタマがいてくれると適当なところで引き剥がしてくれるのだけど、今日はそのタマが不在なので自分で何とかしなくてはいけない。

「いつも思っていたけど、真白ちゃんいいにおいするにゃあ」

「こまちさんみたいなこと言わないで!」

 耳元でクンクンと鼻を鳴らしながら言ったあかりちゃんのセリフを聞いてゾクッとした私は思わずパラソルから手を離してしまった。

「あっ…」

 地盤固めの途中で風にあおられたパラソルは見事にひっくり返り、砂の中から勢い良く飛び出してきたポールの先が和希の顎を直撃した。

「ごめん和希!」

「あ…ああ。気にすんなって」

 そう言って顎をさすりながら起き上がった和希の格好はスクール水着の上にパーカーを羽織っただけという、みんなが着ているおしゃれな水着とは程遠いものだ……まあ、彼の場合、他には彼が水着を買いに行けなかったのをいいことにあかりちゃんと来宮さんが選んだ、スリングショットとかいうきわどい水着しかないので、しかたないと言えばしかたない。

 ちなみに未だしつこく私の胸を触り続けているあかりちゃんの水着はみつきちゃんと色違いのフリル付きの黄色いビキニだ。

「白い水着もよく似あっているし、真白ちゃんはやっぱり白が似合うよねえ」

「あのね、あかりちゃん。いい加減にしないと怒るわよ」

 チーム内で我慢強い方である私としてもちょっと我慢の限界が近い。

「だって私にはこれがついていないのよ!?おかしいじゃない!」

「痛い痛い痛い!力いっぱい掴まないで!」

「なんなのこの餅みたいなの!こんなの知らない!っていうか、真白ちゃん実は18歳とかなんじゃないの?」

 そんなことを言いつつあかりちゃんは私の胸をワシワシワシワシ、ワシワシワシワシ、もはや揉むというより掴む…いや、ちぎり取る勢いだ。

「いたたたたたっ…ちょっと!里穂でもえりちゃんでもいいからなんとかしてこの子!」

「無理。痛いからパイセンに胸揉まれたくないし」

 パレオ付きの赤のビキニを来た里穂はそんなことを言いながら、和希が最初に立てたパラソルの下でジュースを飲んでいる。

「真白ちゃんやくるみはわかるよ、百歩譲ってわかる。みつきや里穂やえりに負けているのもいいさ、でもなんで千鶴のほうが胸大きいのよ!」

「痛いってば!っていうか、それ私全然関係ない!」

 千鶴ちゃんの胸はみつきちゃんや里穂よりも大きく、大体私と同じくらいだと思うが、全体的に線が細いため、私よりももうちょっとあるように見える。ちなみに今回の旅行には不参加だ。

「くっくっく、困窮しておるようだな真白」

「えりちゃんでもいいからなんとかして」

「了解した、この説得のプロフェッショナル 神田えりが来たからには安堵するがいい」

 そう言って得意気に胸を張った後、黒の三角ビキニをつけたえりちゃんはあかりちゃんをビシーっと指さす。

「おい、あかりよ」

「なによ」

「貴様は胸が貧しいだけでは飽きたらず、心まで貧しくなってしまったのか?」

「は?」

「おいぃっ!」

 えりちゃんに期待した私がバカだった。いきなりなんて事を言っているんだこの子は!

「冷静になって考えてみろ、そんなバカみたいにデカいものが、千鶴と違ってたいして身長のない我や貴様についていたらどうなるか。ものすごくバランスが悪くなってしまうぞ」

「私よりは高いけど、真白ちゃんだって千鶴ほど身長高くないじゃない」

「馬鹿者!真白の腰回りを見ろ!」

「はっ…!」

「気づいたようだな」

 おい待て、二人とも一体何の話をしている。そして何に気づいた。

「その胸を支えてバランスをとるために真白の腰回りはそんなに立派になってしまったではないか」

「たしかに!パレオで隠してもなお隠し切れないこの存在感」

 それ、胸関係ないし、失礼だし。っていうか……

「自然な動きでおしり触るのやめてくれないっ!?」

 いつの間にかあかりちゃんの手が胸から腰にシフトしていた。

「いやいや、真白ちゃん。これすごいよ」

「人の尻をこれって言うな!」

「そうだろう、そんなすごい尻になりたくないだろう?だからもう無いものねだりはやめよ」

 すごい尻ってなんだよオイ。

「はいはい。そこまで。あんた達がそういう悪ふざけすると、保護者を買って出てくれた尾形さんが困るでしょうが」

 パンパンと手を叩きながらそう言って二人を止めに入ってくれたのは、なんと来宮さんだった。ちなみに彼女の水着は水色のビキニだ。

 彼女の言うとおり、チアキさんの恋人である尾形さんは、チアキさんが下ごしらえをしている間、バーベキューの用意をしながら、ビーチ全体に目を光らせてくれているのだが、彼の方を見ると、確かに気まずそうに目をそらしている。

「私達に危険が及ばないように見ていてくれる人が目をそらすような悪ふざけはしないの」

「はーい」

 あかりちゃんはそう返事をして私の尻を掴んでいた手を離すと、今度は里穂の方へと走っていった。

「大丈夫?」

「うん。ありがとう」

「気にしないで。みんなで楽しく安全に遊ぶのが一番だからね」

 そう言って来宮さんはにっこりと裏表のなさそうな笑顔で笑う。

 あれ?この人本当に来宮さんか?

「う、うん…」

「何か心配事?心配事があれば聞くけど、その…できれば早くあかりを盗さ……みんなの思い出の写真を撮りに行きたいんだけど」

 あ、いつもの来宮さんだ。


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