彼方の日向 此方の暗闇 おまけ
……
「いやあ、鬼だよね、寿ちゃんは。あんな言い方したら二人とも口から出すに出せないじゃん」
「何言ってんのよ。豚キムチ作れって言ったのはあんたでしょうが。それに一度口に入れた私の料理を吐き出すなんて、誰であろうと許さないわよ」
話の最後まで耐えられずに部屋を出た彩夏とセナが残していった豚キムチをこまちの取り皿にせっせと盛りながら寿がこまちを睨む。
「またまた。あのタイミングで出してきたのは彩夏ちゃんに最後まで話を聞かれたくなかったからでしょ?」
盛り付けられた豚キムチをすべて平らげた小町はそう言ってニヤニヤとした視線を寿に向ける。
「う……」
「普段は凛として私のご主人様面している寿ちゃんが実は過去、私に救われていましたなんて、セナはともかく彩夏ちゃんには知られたくないよね。プププ」
「く……反論できない」
「やっぱり寿ちゃんはかわいいねえ。セナもかわいいけどやっぱり寿ちゃんが一番だよー」
そう言ってこまちは寿を押し倒して自分の体で抑え込むと、服の中に手を入れ始める。
「こら、やめなさいって。ちょっと、んんっ…まだ日が高いんだからぁ…ん…キムチ臭いってば…あっ…」
「だって寿ちゃんが精が付くもの食べさせるからもよおしてきちゃってさぁ。はい、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
「やめっ…あ…バカバカバカ……本当に脱が…」
「こまちさんすみません、私さっき携帯忘れちゃっ……て」
そう言って入ってきた彩夏と半裸でこまちに組み敷かれている寿の目が合う・
「さ、彩夏!?ち、違うのよこれは」
「ごめんなさいすみませんわたしはなにもみていません!」
こまちをはねのけて慌てて起き上がった寿の静止を聞かず、彩夏は「ここは魔窟だー!」
というドップラー効果付きのセリフを残して走り去ってしまった。
「あ、ちょっと待っ…誤解っ!」
「もういいじゃん、見られちゃったんだし、こころゆくまでしようよ」
「しないってば!」
そう言ってこまちの頭に拳骨を落としたところで、寿の携帯が震えた。
『しばらく居場所探しの旅に出ます。さがさないでください。というかしばらく帰りたくありません』
「さ。彩夏…」
「なんかさっき魔窟だとか言ってたけど、この国の支部に魔窟じゃないとこなんてないのにねー、なんだかんだ言っても彩夏ちゃんって若いよねー」
そう言って笑ったこまちの言葉通りに、彩夏はこの後、全国の支部、支所の魔窟ぶりを体験してやつれきって帰ってくるのだが、それはまた別のお話。
蛇足
彩夏ちゃんは基本ノーマルです。
あと、「さいか」じゃなくて「さやか」です。




