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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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男子会


 ある日、俺が買い物から帰ってくるとドアの隙間に一通の封筒が差し込まれていた。

 裏を見てみるが封筒には差出人は書いていない。

 とりあえず封筒は後回しにして買ってきた戦利品を堪能しようとしたところで、俺の部屋のドアを誰かがノックした。

 おかしい。柚那も朝陽も愛純もそれぞれ忙しいとかで今日は帰ってこないと言っていたし、チアキさんもユキリンとデートとか言っていたのでこんな時間に帰ってきているはずがない。

 唯一残っている狂華さんは狂華さんで、最近覚えたメッセージアプリが楽しいらしく直接来ずにスタンプ混じりのかわいらしい文章で連絡してくるので、狂華さんでもないはずだ。

 この戦利品達を隠すべきか隠さざるべきか。それが問題だ。狂華さんは苦笑いするくらい、チアキさんはためいきをつくくらいなので別にいいのだが、柚那に見つかると没収されるし、愛純だったら勝手に一冊もってベッドに横になって読み出す。一番面倒くさいのは朝陽でこれはなんだあれはなんだと内容について細かく質問をされる (しかも説明すると顔を真っ赤にして怒り出す)のだ。

「……大事を取って隠すか」

 狂華さんやチアキさんじゃなかったときのことを考えて隠すのが最善と俺の中のリスク管理委員会が答えをはじき出したところで、ドアが内側にはじけ飛んだ。

「いるのはわかってんだ!居留守つかうなや!」

「ずいぶん久しぶりの登場ですね、ひなたさん」

 ドアを蹴破って入ってきたのは、なんだかんだと暗躍はしていたものの、最近あまりお目に掛かっていなかったひなたさんだった。 決戦の時は顔は合わせていたがお互い色々と立て込んでいたのでまともに話すのは楓さんの一件以来になる。というか、この人アフリカに飛ばされたんじゃなかったっけか。

「・・・俺の部屋にくるのどれくらいぶりですか?」

「アーニャん時以来だな」

 まあ、それもまたずいぶんと懐かしい事件だ。

「んで、なんでしょう。また誰かが怪しいとかそんな話ですか」

「って、なんだ。まだ封筒開けてなかったのか」

 ひなたさんはそう言って俺の机の上にある封筒に視線を向ける。

「ああ、これひなたさんだったんですか。どういう内容なんですか?」

「五月のお疲れ様会をやるぞ」

「………なんでひなたさんが企画してるんです?っていうか、今日って都さんをはじめとして、ほとんど誰もいませんけど」

 誰もいないのももちろんだが、ひなたさん企画ってだけでもう怪しくてしょうがないのでできれば行きたくない。

「都達がいないからいいんだろ。男子会だよ、男子会」




 魔法少女の中で元男性組は割と少数派だ。

 正規の魔法少女では狂華さん、ひなたさん、楓さん、俺、和希。他にご当地にも何人かいるらしいが、あたりまえだが元々女性という魔法少女のほうが圧倒的に多い組織になっている。だからといってハーレムかと言えばそんなことはなく、四月の女子専用裏サイトの例をみるまでもなく元男性魔法少女はどちらかと言えば冷遇されているといえるだろう。

 ひなたさんに引っ張られて連れて行かれた店にはすでに狂華さんと楓さん。それに和希とご当地の魔法少女が3人ほどいた。

 集まっている面々を見回した俺はおそらくすごく微妙な顔をしていたに違いない。

「本当は全員集めてやりたかったんだけどな。急な話だし全員は集まらなかったんだ。まあ、とりあえず座れよ」

 俺の微妙な顔を全員集まっていないことを残念がっていると勘違いしたらしいひなたさんが、そう言って俺に席を勧める。

 だが、俺が微妙な顔をしたのは別に元男性が全員あつまらなかったからじゃない。

「この中に一人元女性がいる!」

 別にいたからなんだということもないし、仲良く飲み食いすることもやぶさかではないのだが、女性であることをはっきりさせておきたい人物がいるのだ。

「いや、いねえって。俺ちゃんと資料室で調べたもん」

「じゃあ、資料が間違ってるんですよ。ねえ、桃花ちゃん?」

「え?なにがですか?」

「いや、今日の趣旨は男子会って事になってるんだけどさ」

「はい。ちゃんと聞いてますよ」

 あれぇ?

「桃花ちゃんって元TKOだよね?」

「はい。前にお話しした通り研修生でおわっちゃいましたけど」

「……もう一度確認するけど、ここって男子会だよね?いや、別に桃花ちゃんを追い出そうとかそういうことじゃなくて、一応聞いておこうかなって…あ、そうか。誰かが桃花ちゃんの彼氏でその付き添いで来てるとかか」

 だとすればおそらく残るご当地の二人のうちどちらかなんだと思うが、二人とも桃花ちゃんの側には座っていない。

「いえ、ですから、私元々男ですよ。いわゆる男の娘ってやつです」

 ジーザス!!嘘だ!こんなにかわいい子が女の子なわけない・・・じゃない。男の子なわけないじゃないか。

「元々、クラスの女子に無理矢理女装させられていたんですけど、それがエスカレートして女装したまま原宿に遊びにいった時に小崎Pにスカウトされまして。それで嫌と言えずにアイドルの道へ進むことになったんです」

 やるなあ、あの人・・・・・本当にいろんな意味で。

「んじゃ、朱莉の疑問が晴れたところで一応自己紹介からな。まあ、この中じゃ俺は狂華の次に古参だから知らんやつはいないと思うけど、相馬ひなただ。現在アフリカ駐在で国連の魔法少女連合に出向になっている。よろしくな」

 ひなたさんはそう挨拶をすると、狂華さんに自己紹介をするように促した。

「えっと、己己己己狂華です。一応、最古参の魔法少女で、現在は魔法少女隊総隊長兼、教導隊長をしています。好きな女性のタイプはみやちゃんで、好きなご主人様はみやちゃんです」

 この人は変身してないと本当にゆるゆるなキャラだなあ。

「宮本楓だ。教導隊所属、好きな女性のタイプは胸の控えめな子だ。よろしく」

 あれ?好きな女性のタイプ言う流れなのかこれ。

「えーっと・・・・・・邑田朱莉です。好きな女性のタイプは普段はちょっと凶暴だけど二人きりの時にはすごくデレてくれる子です」

「別に柚那さんいないんだからそんなに気を遣わなくても良いと思うんだけどなあ・・・あ、平泉和希です。JC所属の中学三年生です」

 俺が振るまでもなく、和希が自分の自己紹介をつつがなく済ませる。

「じゃあ次は私が・・・若松桃花、福島のご当地をしています。さっきちらっと話に出たんですけど、元TKOのアイドルで柚那さんと愛純さんの後輩にあたります。よろしくお願いします」

 桃花ちゃんはそう言って綺麗な所作でお辞儀をした。

「沖縄・離島チーム所属、荻島佳純。えーっと、自分はヒラだし特にこれといった過去もないんで、面白くないかもしれないですけどよろしくです」

 佳純ちゃんはそう言って沖縄のイメージにぴったりの明るい笑顔で笑う。

「あれ?でも佳純ちゃん全然訛ってないね」

「だって自分東京出身ですもん」

「ああ、なるほど」

 確かに俺の同期のご当地でも恋と松葉は元々神奈川出身だし、別に赴任地と出身地の因果関係はないんだろう。

「東北チーム、東北海道担当笹森瑞季・・・・・・佳純と同じく特に付け加えることはありません」

 ちょっと悩んだ後で瑞季ちゃんはそう言ってぺこりと頭を下げた。

 瑞季ちゃんとは温泉の後、俺がしばらく東北にいたときに顔を合わせてはいるが、あのときは桃花ちゃんのことが最優先だったこともあってあまり話をしていなかった。桃花ちゃん曰く、ボーッとしている子、寿ちゃん曰く何を考えているかよくわからない子らしいが、東北チームで何を考えているかわかりやすい子なんてセナくらいしかいないと思う。ああ、あと燈子ちゃん。

「さて、じゃあまあとりあえず好きにやってくれ」

 ひなたさんはそう言ってタイミング良く運ばれてきたジョッキを取ると、みんなに飲み物が行き渡ったのを見計らってから乾杯の音頭を取った。

 

「それにしても」

 飲み会が始まって良い感じに場ができて来たところでひなたさんが俺の隣にやってきた。

「お前が一年でここまで成長するとは思わなかったぜ」

 そう言ってひなたさんが陽気に笑いながら俺の方をバシバシ叩く。どうやらすっかりできあがっているようだ。

「俺も別に成長する気はなかったんですけどね、場に流されてというかいつの間にかというか」

「何言ってんだか。お前の場合、全部柚那のためだろ」

 向かいに座っていた楓さんがそう言いながらジョッキを傾ける。

「そう言う楓さんこそイズモちゃんのためでしょうが」

「そりゃあな」

 この人は本人がいないところでは臆面もなく惚気るんだよなあ。この10%でも彼女の前で見せてあげればもっと仲良くできると思うんだけど。

 ちなみに狂華さんはひなたさんがいたずらに飲ませたカクテル一杯ですでにダウンしている。

「でも成長曲線で言ったら、この中では桃花ちゃんが一番じゃないですか?」

 咬牙とフュージョン状態だったとはいえ、一月かからずにご当地の最低ランクから上の下までランクアップして見せた。多分伸び方で言ったら全魔法少女の中でもトップクラスだろう。

「でもあれってほとんど朱莉さんのおかげなんですから、やっぱり朱莉さんがすごかったんだと思いますよ」

 ひなたさんと反対側の隣に座った桃花ちゃんがそう言って俺のぐい飲みにお酌をしてくれた。

「そ、そう?」

「だからっていう訳じゃないですけど、ファーストキスを奪われたのも、朱莉さんでよかったなって思ってますし・・・ってキャー、言っちゃった」

 桃花ちゃんはそう言って少し赤く染まった頬に手を当てると恥ずかしそうに首を振る。

 おいおい、恋の言っていた話と大分違うじゃないか。もうなんかこの際男の娘だろうがなんだろうが良い気がしてきたぞ。

「なあ、和希」

「はい。何も見ません聞きません言いません。あ、そうそう。新しいスニーカーほしいっす」

 うん。和希はものわかりの良い子だなあ。あとでスニーカーだけじゃなくてお小遣いをあげよう。

「実は朱莉さんって離島組でも結構人気あるんですよね。うちの奴らなんてみんな朱莉さんがリーダーなら良かったのにとかそんな話ばっかりで。やっぱり内側からにじみ出る男気みたいなのが自分らとは違う感じですよね」

「いやいや、買いかぶり過ぎだよ佳純ちゃん」

「なんだかんだ言っても東北組はみんな朱莉さんが帰ってから少し意気消沈していたし」

「マジで?」

「うん、特に寿隊長が顕著で、たまにうっかり朱莉さんの名前を呼んでは『ああ、もう帰っちゃったんだった』って感じで少し切なそうだった」

「なにそのかわいい寿ちゃん」

 そんなかわいい寿ちゃんなら、こまちちゃんや彩夏ちゃんと全面対決になってでも嫁にしたいぞ。

「寿さんに手をださなくても、私がいるじゃないですか」

 桃花ちゃんはそう言って俺の腕に抱きついて胸を押し当ててくる。その胸の感触たるや、筆舌に尽くしがたい幸福感を感じるほどだ。

「桃花ちゃんって実は結構胸大きいよね」

 一緒にいたときから思っていたけど、いざこうして感触を体験すると改めて実感する。

「そうなんですよ、男だったときは胸がないのがコンプレックスだったんで、手術受けるときに思い切り盛ってもらったんです」

「桃花はそれが良かったんだと思うけどな・・・」

 貧乳派&隠れTKOファンの楓さんがしみじみそうつぶやく。

「っていうか、あんた男でも女でも胸が小さければ良いんですか?」

「・・・・・・あんまり男らしいのは無理だけど、現役の頃の桃花ならいける」

「いかんでよろしい!」

 ダメだこの人。手遅れだ・・・まあ、気持ちはわからなくもないけど。

「っていうか、桃花ちゃんって女になるとき抵抗なかったの?」

「ああ、私ってもともとかわいかったから、実はずっと女の子になりたかったんですよね」

 と、ドヤ顔で桃花ちゃん。さてはクラスの女子に無理やり女装させられたとか言うのは嘘だな。

「あ、でも盛ってるって言っても別にシリコンとかじゃないんですよこれ」

 桃花ちゃんはそう言ってさらにギュッと俺の腕に胸を押し当てる。

「いや、自分の身体にもついてるからそれは知ってるけどさ」

 ここにいる全員、DNAを弄った養殖物ではあるが胸に添加物は一切なしだ。

 そんな添加物なしのブツを押し当てられてはいくら関東一の理性の人である俺でも辛抱たまらなくなってしまう。

「・・・なあ、和希」

「だから、俺は別にあかりにもみつきにも柚那さんにも愛純さんにも朝陽ちゃんにも言いませんってば。好きにして大丈夫っすよ」

 サンキューカッズ。

 柚那は二号さんまでオーケーって言ってたし。和希は黙っててくれるし、狂華さんは寝てるし、ひなたさんと楓さんとはお互い色々掴み合ってるから情報漏らすことはないと思うし・・・・・・いくか、いっちゃうか。

 元男性?そんなの関係ねえよ。かわいければいい。かわいいは正義。それに今の彼女は女性だ。今が女性なら何の問題もない。

「フヒッ・・・ももも桃花ちゃん!・・・・・・この後、暇?」

 酒のせいか、ちょっと舌がもつれてしまったが、なんとか立て直して俺はとっておきのキメ顔で桃花ちゃんを誘う。

「この後って、この飲み会の後ですか?」

「ああ。二人でちょっと飲み直さない?」

 東北にいたときはずっと一緒にいたし、別に二人で飲み直すぐらい普通のことだ。

「はい、大丈夫ですよ」

 桃花ちゃんはそう言って天使のような微笑みを俺に向けてくれる。

 俺の背後ではひなたさんが悪魔のような笑顔で笑っている気配がするが、今日は別に怖くもなんともない。

 俺が握っている秘密のおかげであの人は俺が誰となにをしていようがそれを柚那はおろか誰かに言うことはできない。

「朱莉、一応この場に居合わせたお前の友人として言っておくぞ・・・やめとけ」

 楓さんがため息交じりにそう言って俺を止めようとするが、今日の俺はやめるつもりはない。

「忠告はありがたいですけど、今日の俺はやめるつもりはないですよ」

 この一年、いろんな女の子と色々あったがすべて未遂で終わってしまっていて不完全燃焼だった俺に神様が使わした天使。それが桃花ちゃん。

 別に柚那に不満があるわけではないが、人はチャンスがあれば攻めたくなるものではないだろうか。

 特に俺のように実年齢の割に経験の少ない人間にとってそういうチャンスがあれば飛び込んできたいと思うのは当然のことだ。おそらく楓さん・・・いや、雅史君はまだ若いからそのへんがわからないのだろう。

「まあ、それがお前の選択なら別にいいんだけどな・・・後悔するなよ?」

 楓さんはそう言ってもう一度ため息をついた後、ジョッキに残っていたビールを一気にあおった。

「ささ、朱莉さん。じゃあ残っているお酒を飲んじゃって次のお店に行きましょう」

「そうだね」

 俺が桃花ちゃんがお酌してくれた酒をあおると、すぐに次の酒がぐい飲みに注がれる。

「・・・・・・さすがにハイペースじゃない?」

「でもでもだって、今日のメンバーだと朱莉さんしか日本酒飲まないんですよ。せっかく頼んだのに残したらもったいないじゃないですか。だからあと二本、頑張ってください。そうしたら、私がいいことし・て・あ・げ・る」

 桃花ちゃんはそう言って俺の耳にフッと息を吹きかけてくる。正直『うひょー』とか叫び出したい気分だ。

「よーし、どんどんもってこい!」

「はーい!じゃんじゃんいきましょう!」




 クールになれ、邑田朱莉。

 俺はあのときの自分にそう言ってやりたい。

 二件目の店でも宿泊施設でもなく自室で目覚めた俺の隣に寝ていたのは桃花ちゃんではなかった。

 二日酔いの頭痛で目を覚ました俺の隣で寝ていたのはひなたさん。酷い頭痛と、酔った勢いでひなたさんと寝ちゃったかも知れないという焦りで混乱している俺の目の前にひなたさんが突きつけたのは一枚の紙だった。

 男性魔法少女協会理事長就任承諾書と書かれたその紙にはしっかりと俺の字で俺の名前が書き込まれ、だめ押しとばかりに拇印まで押してあった。

 

「なので、別にその要求は俺の本意ではないのですよ都さん」

「まあ、話はわかったわ。要はあんたが桃花のハニートラップに引っかかって半ばむりやり男性魔法少女協会の理事長にさせられたと、そういうわけね。この要求に関してもあんたは何も知らないと」

「イエスマム。だからこの男性魔法少女協会とやらからの要求で俺がこうして呼び出しをうけて床に座らされているのは不当なんです」

 たぶんその要求を勝手に出したのもひなたさんだし。

 ちなみにその主犯であるひなたさんはすでに遙か遠いアフリカの空の下だ。

「そもそもあんたが桃花のハニートラップにひっかかるのが悪いんでしょうが」

「そりゃあそうですけど」

 要するにあの男子会は冷遇されている男性魔法少女達の待遇改善のために俺を理事長という名の人身御供にして、都さんとの交渉の矢面に立たせるための茶番だったということだ。そのために桃花ちゃんは俺に酒を飲ませ、良い感じに酔っ払った俺をたき付けて承諾書にサインをさせて拇印まで押させた。

 ひなたさんによればそのときの俺は非常に陽気で「この拇印で桃花ちゃんのボインも押しちゃうぞー」とか言っていたらしい。

 その光景を想像するだけでもうなんか・・・正直死にたい。

「でもまあ、要求はわかったわ。確かにあの裏サイトはちょっとなあと思ってたから罰則付きで至急の閉鎖と開設禁止を通達する。それでとりあえず一つ目の要求は良いとしてだ」

「いやもう一つだけで十分です。本当に十分なんでもう足崩しても良いですか」

 30分も堅い床に正座していたせいでかなり足がしびれてつらい。

「まあ待ちなさいよ。面白い要求があるじゃない」

「面白いって・・・一体なんです?俺その要求とやらの中身を見ていないんですよ」

「全員の査定のし直し」

「・・・・・・査定し直し?」

「給与の見直し、ランキングの見直し、配置のし直し、もろもろ全部見直すべきだ!というのが、アフリカ駐在がたいそうお気に召さないらしいひなたの主張ってわけね」

「・・・・・・」

 まあ、あの人アフリカ行くの本当に嫌がってたからなあ・・・

「ま、いいわ。面白いから全ご当地と正規、それにJCまでまとめてまたトーナメントでもやろっか」

「予算的に大丈夫なんですかそれ」

「前に作った闘技場があるし、撮影の時にちょいちょいやればこれといって特別予算はかからんでしょ。壊れた闘技場を直すのはイズモにでも頼めば良いしね」

 いや、まあたしかにイズモちゃんそういうの直すの得意だけどさ。

「でもみんな食いつきますかね」

「食いつくわよ。給与の見直しまで入ってるんだから」

「・・・え?」

「仕方ないわよねえ、男性魔法少女協会さんが給与も成績によって見直せって言ってるんだから」

「いやいやいや、そこはひなたさんが主犯なんですからひなたさんがって言いましょうよ」

 その言い方だと俺が悪いと誤解されかねない。

「こうして男性魔法少女協会の理事長さんまでおいでいただいてしまったんだし、見直さないわけには・・・・・・ねえ?」

「ほんとやめてくださいって、見直しはともかく男性魔法少女協会がどうとかなんかそういう話は吹聴して回らないでくださいよ」

「さて、どうしようかしらね」

 そう言って都さんは思わせぶりな笑顔で笑う。

 

 結局都さんは本当に査定のための魔法少女バトルトーナメントを執り行うのだが、それはまた別の話。

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