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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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狂ヒ華

「…今度は必ずボクが君を守るから」

 あまてらすに向かうのヘリの中で、ボクは彼女に対してそう誓いを立てた。

 みつきのときの後悔があったのは間違いないが、それ以上に今回の戦いは命がけになると思ったからだ。

「気張るな気張るな。そうやって気張ってると真っ先に怪我するわよ」

 彼女はそう言っていつものように笑うとボクの背中をバシバシと叩いてきた。

「それに、あまてらすにはチアキさんたちもいるし、周囲の艦にはひなたとアーニャもいるし。あんたひとりが頑張らなくたって大丈夫だから」

「あれ?精華は?」

 すでにアーニャが乗艦しているのは聞いていたが、普段はともかく有事の際には頼りになる精華の名前を挙げないことを疑問に思って尋ねると、彼女は肩をすくめて首を振って見せた。

「結局飛行ユニットを使いこなせなかったらしくて、今ユウと交代で東北に戻る準備してる。私達が下りたら開戦前にこのヘリは精華を乗せて東北に帰る予定。で、さらにユウを乗せて帰ってくると」

「そりゃあパイロットの人も大変だ」

 ボクのつぶやきにパイロットの二人は振り返って余裕とばかりにサムズアップしてみせるが、実際一往復半してそのまま戦闘突入ということだと体力的にも精神的にもかなり厳しいだろう。

「でもそうするとしばらくの間、海にいる主力が少なくなっちゃうね」

「ま、そこはご当地のみんなもいるし、しばらくは連合軍に守ってもらえば良いだけじゃない」

「…そううまく行くと良いけどね」

「あんたって本当にネガティブねぇ」

 彼女はそう言ってボクの頭をワシワシとなでた。

 ヘリがあまてらすに着艦すると、甲板でチアキ達と尾形三佐改め二佐が出迎えてくれた。

「お待ちしておりました宇都野陸将補」

 そう言って尾形二佐が敬礼をすると、チアキ達もそれに倣って敬礼をする。

「ご苦労様。状況は?」

「作戦開始時刻は予定通り、連合軍の艦艇、陸上部隊共に順調に進軍中とのことです」

「了解。開始までブリーフィングを行いますので本部、それと各艦の魔法少女とのホットラインをブリーフィングルームにつないでください」

「了解しました。ご案内します」

 そう言って尾形二佐はそばにいた部下に指示をすると僕らの前を歩き出した。

「随分緊張してるみたいね」

 尾形二佐とみやちゃんの後ろをついて歩き出したボクにチアキが声をかけてくる。

「え?ああ。当然だろう」

「あらら、もう戦闘モード?」

「え…いや、そういう訳じゃないんだけど」

「長丁場になる可能性が高いんだから、あんまり気を張ってると途中で倒れるわよ」

「…都にも言われたよ」

 結局彼女はヘリが着艦する直前までボクの頭をなで繰り回してくれたので、今ボクの頭はかなりボサボサだ。

「都じゃなくて、みやちゃんでしょ」

「どっちでも変わらないと思うけど」

「変わるわよ」

 そういってチアキがポンポンとボクの頭をなでる。

「頼りにしてるんだからもしもの時はしっかり頑張ってよね、隊長さん」

「わかってるよ」

「あ、やっぱり適度に頑張らないで頑張って」

 ボクが気負いすぎているように見えたのか、チアキがそう訂正を入れる。

「難しい事を言うね」

「あら、知らなかった?上司に対する注文は厳しいのよ、私」

「知ってる…絶対勝とうね」

「もちろん。そのために今日までやってきたんだから」


 圧倒的な数で押し切ろうとしていた連合軍がたった一体の巨大怪人に押し返され始めたのは、朱莉達が七罪との戦闘に入ってからすぐだった。

 海側最前線で戦っていたジャンヌから個人回線で報告が入り、それに対しての都が立てたのは艦隊を後退と迂回させての救助作業と、救助にあたる艦の戦力をすべてあまてらす単艦に集めての直接対決。

 海がもりあがり障壁を作り上げている敵の超巨大怪人に対して艦隊での包囲を試みた最前線の艦隊はすべての艦が轟沈。要救助者が大量にでていたのでその作戦自体はよかった。

それにボクらにとって気心の知れたジャンヌやユーリアといった元々日本に派遣されていた連絡将校との合流も文句はなかった。でも

「なんで朱莉なの」

「楓はガス欠。精華は空を飛べないからよ」

 そう言って都は彼女に割り当てられた士官室で詰め寄ったボクの眉間を人差し指でついて、突き放した。

「なんだか不満そうだけど、今の戦力じゃ足りないし真白が拾ってこられるのは一人だけ。だったら朱莉に賭けるってのはない話じゃないでしょ」

「でももう夜だしみつきでもいいんじゃないの?」

 彼女の究極魔法である五年姫ならボク以上の出力が出るので、あるいはあの水とナノマシンの障壁を突き破ることができるかもしれない。

「みつきさんが出てくるのは一日に一回だけ。んで、もうその一回は樹海で使用済み。要するに今のみつきはごくごく普通の魔法少女でしかないんだけど、そんな子に命を賭けさせるの?しかもまだあの子14歳よ」

「それは…」

「だから朱莉でいいの。あいつは何かやってくれると思うから」

「…そう」

「なに?言いたいことがあるなら聞くわよ」

「特には。ジャンヌ達と打ち合わせしてくるから」

「ん。よろしく」

 それは、ボクには期待していないということなのか。

 ボクにできないことをあいつがやれるって、そう思っていることなのか。

 そんなことを今ここで聞いたところでただケンカになるだけだ。

 ボクは色々なことを心の奥に押し込んで、士官室のドアを閉めた。




 ボクが犯人から指定された採石場にやってくると、崖上には気を失っているみやちゃんと、彼女をさらった敵だと思われる白衣を着た青年の姿があった。

「約束通りここに来ることを仲間には知らせずに来たんだろうな?もちろんここで言う仲間とはあの旅館にいた間抜けな二人も含んでのことだぞ、最強の魔法少女」

 みつきとの電話を終えて部屋に戻ったボクが見たのは気絶させられているニアと忍。それとボク宛の手紙だった。

 ボクは二人の息があることを確認してからすぐに手紙を持って旅館を出たので二人にもこの場所のことは言っていない。

「当たり前だ。さあ、今すぐ都を離せ」

「残念ながら今すぐ解放するわけにはいかない。お前が俺の実験に付き合い切れたら解放してやるよ」

 そう言って青年が指を鳴らすと、地中から戦闘員級とおぼしき同じデザインの敵が現れた。

「まずはステップ1、魔法少女は大量の戦闘員を相手にできるか…スタートだ」

 青年が再び指を鳴らすと、大量の戦闘員がボクに向かって飛びかかってくる。

 しかし所詮は戦闘員。今までの戦闘員よりも少しだけ強いような印象をうけるがこの程度の敵、50や100相手にしたところでどうということはない。

「戦って良いんだな?」

「もちろんもちろん。戦ってもらわないとデータが取れないからな」

「そうか…スレンダーマン!」

 万年筆に内蔵されているインクをぶちまけながらボクが叫ぶと、飛び散ったインクからボクのしもべが現れる。

「殲滅」

 ボクがそう言って万年筆の柄で地面を叩くと、スレンダーマン達は一斉に敵戦闘員への攻撃を始めた。

「なるほど、このぐらいじゃ足止めにもならないってわけだ。ならばステップ2、怪人級を複数相手にできるか。スタート!」

 青年はそう言ってどこからともなく指先大ほどの大きさの球を大量に取り出すと一気に放り投げる。そしてその球は地面に落ちるなり周りにあった岩を吸収して怪人の姿をかたどり、睨み付けるようにこちらを見ている。

 その数、30。

 大丈夫。このくらいなら問題ない。

 まず手近なところに立っていた怪人に先制攻撃とばかりに万年筆を振り下ろすと、怪人はあっさりと崩れ落ちて動かなくなる。

「次」

 ボクは手近なところにいる怪人から次々と撃破して青年とみやちゃんのいる場所へと距離を詰めていく。

 最後の一体を撃破して残るは青年のみという段階になって、青年はボクに背中を向けて逃げ出そうとする。

「お、お助け…」

 よろけながら走り出す彼の背中に向かって跳び、捕縛する為に万年筆をしまった瞬間、ボクは強い衝撃を受けて元の位置まで飛ばされた。

 体勢を立て直して青年のほうを見ると、今までの怪人の三倍くらいはありそうな岩の巨人が拳を振り抜いた体勢で立っていた。

「くはははははっ!ばーかばーか!30体で終わりだと思った?残念!31体目がいたんでしたー!それにっ」

 上機嫌で笑いながら青年が指を鳴らすと、ボクが倒したはずの怪人級が起き上がり三体が合体して一体の怪人へと姿を変える。

「ステップ3、合体怪人は魔法少女撃破可能か。スタート」

 またも青年が指を鳴らすと、大きな岩の怪人がボクの方へ走りよってくる。

 とは言っても一度は倒せた相手。多少パワーアップしたところで勝てないほどのことはないはず。ボクは念のためさっきよりも力を入れて万年筆を振り下ろす。

「ざーんねん」

 高笑いの合間に青年がそう言い、今度は勝ち誇ったような笑い声を上げる。

「間抜けめぇっ!一度食らった攻撃でもう一度やられるような弱っちいものならけしかけたりしねーよ。バーカバーカ!」

「うるさいっ!」

 一度はじかれた万年筆を今度は両手持ちで振り下ろす。

 今度は衝撃の後はじかれることなく振り抜ききることができた。

 だが

「あははははははは!てめーでステッキ折ってりゃ世話ねーなぁ、おい!」

 砕けたのは敵の装甲ではなくボクのステッキだった。

「んじゃまあ、テストはここまで。お前達は連れて帰って、たっぷりと楽しませてもらおうか」

「ふざけるな!」

「ふざけてんのはどっちだ?お前は負けたんだ、負けた以上は勝者の言うことを聞くのが筋ってもんだろうが」

 まだ負けてない、ボクにはまだ奥の手がある。ただ、標的の距離が遠い。今の状態では遠すぎる。

「ボクはいい!ボクは確かに負けた。だからボクの事は好きにしたらいい」

「アホかお前は。元々お前との勝負に賭けていたはこの女、お前に勝った以上俺の総取りだろうが」

 あと、30メートル。奴があと30メートル近くに来ればボクの奥の手が使える。

「……わかった。じゃあ迎えに来て。今のボクの体力じゃそこまで登ることはできないから」

「仕方ないな。おい」

 そう言って彼はボクの間近にいた怪人にボクを連れてくるようにジェスチャーで指示を出す。

まずい、このままでは奥の手が使えない。

「ちょ、ちょっと待って!」

「今度はなんだ」

「ゴツゴツした怪人にだっこされるのは嫌。擦り傷だってできるだろうし、痛いのは嫌い」

「……ふうん?」

「知ってるよ、ボクとみやちゃんはこれから君たちの子作りに使われるんでしょ?君達だって傷だらけの女より綺麗な肌の女の方が良いんじゃないの?」

 聖から得た情報によれば、聖達が女性しかいないように、彼女たちを狙っている異星人には男性しかおらず、彼らが彼女達を狙う理由は子供を作るため。そして、その子供を作る相手としての選択肢にはボクら地球の魔法少女も入っている。

 ちなみに、異星人間での子作りにはナノマシンが必要不可欠だとかで、ナノマシンが身体の中にまったく存在しない地球人の一般女性は子作りの対象にならないらしい。

「使われるっていうのは気に入らないな。別に俺達はお前達を無理矢理道具のように扱うわけではないぞ。連れ去りはするが、あくまで子供を作るのは同意の上でだ。逆にこちら側でお前達を拒絶する者はいないから、好みの相手が選び放題でお前達にとっても悪い話ではないだろう」

 そりゃあまあ確かにみやちゃん好みの美少年でもいればみやちゃんは良いかもしれないけど、ボクは御免被りたい。せめて女性の姿をしていてくれるならまだしも、男性相手に子供を作るなんて事考えたくもない。だが、拒絶する奴がいないというのならば

「ボク、子作りするならあなたがいいな。最初は嫌いだったけど、戦っているときのあなたはすごくかっこよかったし、男らしかった」

「そ、そうか?」

 もしかしなくても、こいつすごくチョロいぞっ!

「うん。すごくかっこよかった!あ…でも、ボクなんてみやちゃんとか他の子に比べておっぱいも小さいし、女らしい体系じゃないし、嫌…かな?」

 ボクは演劇部で培ったスキルをフルに発揮してシナをつくり、儚げな声で続ける。

「ボクなんかじゃダメ…だよね…ごめんなさいっ」

 そしてボクは両手で顔を覆う。

「だ、ダメじゃないぞ。お前はかわいいと思う。うん、かわいい。その…俺もお前と…」

 彼が下りてきているのだろう。ジャリジャリという音が少しづつ近づいて来ている。

 慌ててまだ出しっ放しになっているスレンダーマンの目を通して見ると、案の定敵はボクのほうへと歩いてきている。大体の目算であと20歩、19、18、17、16…と、敵の足が止まった。

「ようお兄さん。嫁探しをしているんだって?俺に勝てば俺とこの子もつけちゃうけど、ダブルアップの勝負していかない?」

「え、ちょっ…なんで私まで賭けの対象にするんすか!?」

 声のした方をスレンダーマンで見るとそこには朱莉と彩夏が立っていた。

「だって俺達今日だけとはいってもパートナーだろ。やっぱり一蓮托生じゃないと」

「いや、だとしても勝手に賭けに使わないで欲しいんですけど」

「っていうか、なんでこんな所に朱莉と彩夏がいるんだよっ!」

 ボクは思わず泣き真似を中断して顔を上げてツッコミを入れてしまった。

「え?いや、都さんと狂華さんが行方不明だっていうんで、ニアさんから緊急の呼び出しを食らっちゃいまして。俺はたまたま彩夏ちゃんと栃木にいたんで、直行するために指定された温泉に向かって飛んでたら山の中で魔法がピカピカしてたんで、もしかしたらと思って下りてきたら丁度出くわしたと。そういう次第でして」

 なんという強運というか、ヒーローの資質というか。

「なるほど、黙って待ってりゃ俺達の所に嫁に来てくれる女が増えるのか。こりゃあいいシステムかもしれないな」

 そう言って敵の彼は呵々と笑った。

「いや、いやいやいや。ちょっと待ってよそこの…えっと…名前はなんだっけ?」

「ああ、名乗ってなかったな。武蔵大和だ」

「うわ、ここにいる誰よりも日本人らしい名前だ!」

 ある意味で、だけど。

「そ、そうか?最強の…いや、狂華が気に入ってくれたなら嬉しいな」

 そう言って大和は少し照れくさそうに頬を掻いた。

 ……あれ?

ま、まあ気のせいだよね。それはさておき

「朱莉、大和はボクも勝てなかった相手だよ?二人までさらわれちゃったりとかしたら目も当てられないんだけど大丈夫?」

 まあ、それも大和が数歩こちらに近づいてくるまでの話で…

「こっちは大歓迎だけど、俺個人としては女を多く集めるよりも早く帰って狂華と子作りしたいんだけどな」

 そう言って大和はボクの肩を自分の方へと抱き寄せた。…って!

「なんで!?いつの間にここまできたの!?」

「いや、狂華の肩が物寂しげに見えたからさ、早く抱いてやらないとって思って」

 ……あっれぇ?

「だ、大丈夫だよ。そんなに寂しくないから」

 ボクはなるべく大和を怒らせたりしないようにさりげなく彼の手を払う。

「なんだよ、照れるなよ狂華」

「て、照れてないし」

 嫌なだけだし。

「っていうか、なれなれしく名前を呼ばないでよ」

「なんだよ。俺に抱かれたいって言ったの、お前の方だろ」

「えっと……狂華さん?」

「ああ…ついに。確かに都さんは愛してるとか素直に言ったり、わかりやすい好き好きオーラ出すのは苦手かも知れませんけど、手近な男で済ますっていうのはちょっと…」

「ち、違うから。あれは言葉の綾というか場の空気を読んじゃったというか」

「つまりそんなロマンチックな空気が二人の間にあったと…」

「違うからっ!」

 なんでよりによって助けに来てくれたのがこの二人なんだろう。

「なんだ?愛してるって言われたいのか?愛してるぜ」

「言われたくないよっ!」

 なんでこの場にいる人達はまったく話を聞いてくれないんだろう。

「愛してるぜ、狂華」

「ヒュー」

「ヒュー」

「ヒューじゃないよっ!って、大和は無言で顔を近づけてこないでよっ!」

 さすがにキスをされるのが嫌だったボクは力一杯彼を突き飛ばした。すると元々ない膂力はもちろん、魔力もほとんど残っていないはずのボクの軽い突き飛ばしは、幸運にも大和のバランスを崩すことに成功し、大和はふらふらとよろけながら数歩後ろに下がって尻餅をついた。

 丁度ボクの奥の手である罠の上に。

「えっと…ごめんね、大和」

「え?」

「咲き誇れ、狂ヒ華」

「え?え?」

 ボクが起動ワードを唱えると、大和を中心に紫色に光る魔方陣が現れる。この段階で魔力の奔流は上空に向かって放出されており、普通の怪人クラスなら、先ほどまでそこに存在していた岩石の怪人同様、すでに跡形もなくなっているくらいの出力があるのだが、さすがに幹部だけあって大和は多少の傷は負っていて四つん這いという不格好な姿勢ではあるもののその場にとどまっていた。

「な、何故だ狂華!」

「いや、だって…ボク達敵同士だし」

 男と子作りとか正直考えたくもないし。

「そうか…俺とお前は敵同士…確かにそうだ…だがな」

「ごめん大和。これからもっとすごいのが放出されるから早く魔力に乗って飛んで行っちゃった方が良いと思う」

 最初こそ殺してやろうと思って仕掛けた罠だが、朱莉達が来る前後のやりとりで少し、ほんの少しだけボクの中に彼に対して情が湧いてしまっていた。

「だがな狂華、俺はそれでもお前を愛しているぞ!わかったか狂華ぁぁぁぁっ!」

 狂ヒ華の最終段階、地面から生えて来た魔力の蒼い薔薇に突き上げられながらも大和はこちらに手を伸ばしながら叫ぶが当然その手は届かず、彼は上空高く飛ばされていった。

「あれ、絶対フラグをバッキバキに勃てちゃいましたよね」

 目をこらして月夜に飛んでいった大和のほうを見ながら朱莉が不吉なことを口走る。

「まあ私達は狂華さんを男に脳内変換して楽しむんで、狂華さんは彼とお幸せに」

「いや、だからボクはあの人とは何もないんだってば」

 そう何もなかったし、これからも何もないはずだ。もしもわかり合える日がきたら友人になるくらいはいいかもしれないが、彼と子作りなんてことは今は考えられない。

「嫌よ嫌よも好きのうちってね」

「嫌いだよっ!…っていうか、絶対にみやちゃんに言わないでよ」

「さすがの俺でも言えないっすよ、『あなたの彼氏、男に寝取られてますよ』とは」

「寝取られてないよ!」


……まあでも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、さっきの大和の言葉にキュンとしたのは事実だったりするし、もしかしたら以前の件とあわせてボクにはそっちの気があるのかもしれない。

 

 


おかしい。狂華視点で、魔法少女隊の発足から最初の一年までをシリアスに振り返りつつ∞に続く話になるはずだったのにどうしてこうなった。

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