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私の邪悪な魔法使いの友人  作者: ロキ
シーズン1 魔法使いの塔
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第九章 8)あの手紙

 私はフローリアに会うため、早足で廊下を歩いていた。

 そのとき、ふとプラーヌスのことが心に過ぎった。

 いや、違う。フローリアのことを考えながらも、私は同時にずっとプラーヌスのことも考えていた。


 そろそろ、謁見の間でプラーヌスと会わなければいけない時間でもある。

 それどころか彼はすぐ、ルーテティアへ旅に行こうと計画していた。


 しかし私は当然、そんな気になれない。しばらく彼と顔も合わせたくない気分だった。

 何でも見通しそうなプラーヌスだ。私が女神像を見つけたことすら、彼はどうやってか知っているかもしれない。

 いや、たとえ知ってはいなくても、もし女神像の話題が出たとき、私はそれを誤魔化し通す自信もない。


 しかしプラーヌスと会いたくない理由はそれだけではない。

 彼とバルザ殿とのやり取りを見て、プラーヌスのあまりに自分勝手な性格に辟易したせいもある。


 自分の都合の為なら、誰であろうが利用するあの自己中心的な生き方。

 私はまだプラーヌスが、バルザ殿に何か邪悪なことを仕掛けたのではないかという疑念が拭いきれない。

 あの女優を使って、彼はバルザ殿に何かをした。

 いや、疑念どころか、それは確信に変わりかけているのかもしれない。


 それにもう一つ、ずっと気に掛かっていたことがあった。


 あの手紙だ。

 この塔を去ると言っていたバルザ殿が、私に渡してくれた手紙。

 バルザ殿はその手紙のことをすっかり忘れられていたのか、医務室ではまるで触れられなかったけれど、一体そこには何が書かれているのだろうか? 


 もちろん多少の想像はつく。

 彼とプラーヌスとの間に起きた出来事が書かれてあるに違いない。

 それを読みもしないで、プラーヌスと顔を合わしてはいけないような気がする。


 フローリアに一刻も早く会いたかったが、同時にそれを恐れてもいた私は、時間稼ぎというわけではなかったが、あの手紙に目を通すことにした。

 手紙を読むために、わざわざ自分の部屋に戻るのは面倒だ。

 私は懐からその手紙を取り出して、廊下の燭台の前で広げた。


 その寸前、何か警告めいた信号が心を過ぎった。

 この手紙は読まないほうがいいぞ。私の中の何かが、そう言っているのだ。

 そこには何か、恐ろしいことが書かれているかもしれない。


 恐ろしいこと、もはやこの塔に居られなくあるような真実の類。

 私とプラーヌスの関係を根底から覆してしまうかもしれない内容。


 バルザ殿にこの手紙を貰ってすぐ、それに目を通さなかったのは、その予感を感じたせいだ。

 それなのに今、このタイミングでこれを読でんしまっていいものだろうか。


 しかし好奇心がそれに打ち勝つ。

 そして、女神像を発見してしまったがゆえの、破局への予感も、私の背中を後押しする。


 今、何もかも終わりに向かって突き進もうとしている。

 そんな感情も私を突き動かしているのかもしれない。


 あらゆる警告を無視して、私は手紙に目を通した。


 「私はどうやら、あの男に記憶を操られているようです」


 その手紙はそんな衝撃的な文章から始まっていた。

 私は生唾を飲み込んで、更に先を読み進める。


 「あの男とはもちろん、この塔の主、プラーヌスのこと。彼の魔法によって記憶を操られて、私はこの塔に縛り付けられているのです。もしかしたらシャグラン殿、あなたも同様な目に遭っているのではないでしょうか? 心当たりのことがあるのなら」


 私はここまで読んで、顔を上げた。

 心当たりなら、嫌になるほどある。

 むしろ、かねてからの私の不安が追認されたようなものだ。

 私も今までずっと、似たような不安を感じていたのだから。


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