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私の邪悪な魔法使いの友人  作者: ロキ
シーズン1 魔法使いの塔
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第二章 2)陰鬱な召使いたち

 さっきの召使とのやり取りで、私はがっくりと気分を落ち込ませながらも、北の回廊に続く扉に向かった。

 確か昨夜、プラーヌスの説明では、そちらに厨房や召使いの居住室などがあるという話しであた。


 ここでまず、通訳が出来る人間を探そう。

 出来ればハキハキと喋って、明るく、この塔の事情に通じている、頭の良い、ベテランの召使いなんかがいい。そういう人を通訳として雇うのだ。


 だけどこの陰鬱な塔に、そんな人間がいるだろうか。

 さっきの召使いたちとの接触には絶望しか感じなかった。言葉が通じないのはまだしも、あんな性格の召使いしかいないのなら、私はますますこの塔にうんざりしてしまいそうだ。


 まあ、しかしそんなことも言っていられない。

 とにかくどんな性格であろうが、自分の仕事に協力してくれる人間を探さなければいけない。

 さもないと何も前に進みはしないだろう。このままではいつまでも、自分の街に帰ることが出来ないではないか。


 北の塔は、私の客室があった東の塔より作りが古いのか、それとも手入れがなされていないのか、石壁には欠けた箇所があったり、カビが生えたりしているところも目についた。

 しかし東の塔では感じられなかった、ある種の匂いがあった。

 それは生活の匂いというか、街の匂いというか、人間の匂いというか。上手く説明出来ないけど、決して不快な匂いではなかった。何となく安心出来るような匂いなのだ。

 私はその匂いに一抹の期待感を覚えた。もしかしたらここならば、さっきの召使たちよりもずっと親しみやすいタイプの人間がいるのではないかと。


 それに、何だかその匂いを嗅いでいると空腹感を覚えた。

 そういえばまだ朝食を食べていないことを私は思い出した。ついでに厨房かどこかで何か食べるものを頂こう。


 北の塔の廊下をしばらく進んでいくと、奥のほうからざわざわした話し声が聞こえてきた。

 歩調を早めると広場のようなところに出た。

 その真ん中には泉があり、召使たちはその縁に腰掛けて会話を交わしながら洗濯物を洗っているようだった。


 その多くが女性だった。若い女性もいれば中年の女性もいる。

 しかし残念ながら会話は聞き取れなかった。何を言っているのかまるで理解出来ないのだ。

 その顔立ちから判断する限り、どうやら中央の塔にいた召使いたちと同じ民族のように思える。


 私の存在に気づいて、召使いたちはざわめいた。あるいは、私が背後に従えているカボチャのバケモノを見て驚いているのかもしれない。

 私は敵意が無いことを示すため、カボチャのバケモノに停止を命じ、自分だけ彼女たちに近づいた。


 「やあ、僕はこの塔の主に招かれたシャグランという者なんだけど。彼に頼まれてこの塔で働く人たちの名簿作りをしているんだ。えーと、僕の言葉は通じているかな?」


 無反応だった。私は召使たちを見回す。しかしこれだけいるのに、自分は言葉がわかると名乗ってくる者もいないようだ。

 とはいえ、さっきの男性たちと違って、その意味不明な言語で、向こうからも何か話し掛けてくれていた。


 「残念ながら僕も君たちの言葉がわからないんだよ、誰かわかる人はいないかな? 出来ればそういう人を呼んで来て欲しいんだけど」


 私は身振り手振りでそんなことを伝えてみた。しかしそれが伝わらなかったせいか、それとも協力する気がないせいなのか、動く者は誰もいなかった。


 「うーん、やっぱり駄目か・・・」


 私は彼女たちにこだわるよりも、先を急ぐことにした。まず通訳出来る人間を探すことが先決なのだ。こんな状況では名簿作りなど捗るわけがない。


 この召使いたちが集まっている広場から、更に奥のほうに通じる通路があった。

 私はカボチャのバケモノを連れ、そっちに歩みを進めることにする。

 するとさっきまで自分の仕事を黙々と勤めていた召使いたちが、慌てて立ち上がり、私の前に立ちはだかった。


 「な、何さ?」


 私が彼らの行動に戸惑っていると、召使いたちは手を振ったりしながら何かを言ってくる。「そっちには行っては駄目だと言うのか?」


 もしかしてこっちは彼らの居住スペースかもしれない。それなら彼女たちが怒るのも無理はないだろう。いきなり寝室に入り込むようなもの。

 私は理解を示すように頷いて、広場の奥に向かうのを諦めた。するとそれ以上、彼らは何も言ってこなかった。


 この広場から移動するには、私が通ってきた中央の塔に通じる回廊のほうに戻るか、召使いたちの居住スペースに通じる廊下を進むか、その他にもう一つ選択肢としては階段があった。

 私に残された選択肢は必然的にその階段しか残されていない。上りと下りがあるが、私は階段を上がることにした。

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