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私の邪悪な魔法使いの友人  作者: ロキ
シーズン1 魔法使いの塔
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第六章 1)上機嫌なプラーヌス

 プラーヌスがバルザ殿を馬車で連れ帰ってきたその日の夕食の時間、いつものように私たちは夕食を共にしたのだけど、そのときの彼はすこぶる上機嫌だった。


 何の問題もなく、予定通りにバルザ殿を仲間にすることが出来て、すっかり安心したのだろう。

 いつもよりも饒舌だったし、ワインを口に運ぶペースも早い。


 「次は腕の良い料理人だな。今夜の料理は悪くないが、料理人が二、三人いても構わないだろう。交互に作らせたらその味に厭きることもない。その次は召使いを総入れ替えする。しみったれた下層民のような輩は追い出す。専用の仕立て屋も雇おうかな。宮殿のように揃いの制服を用意させるんだ。それを召使たちに着せる。そうだ、建築家や大工も雇おう。少しでもこの塔を住みやすく作り変える」


 プラーヌスが熱い口調で将来を語っている。

 それは本当に珍しいことだ。

 今この瞬間のプラーヌスの心を覗けば、野原に花が咲き誇り、そこで無垢な子供が走り回っているような風景が見えるかもしれない。

 それくらい幸せそうに見えるのだ。


 「まあ、それにはかなりの金貨が必要だけどね。良い人材を雇うには、やはり報酬だよ。バルザ殿にもかなり給金を払わなければならない。もちろん彼はそれに値する人物だから、少しも惜しくはないが。しかし早いうちに、何か大きな仕事を請け負わないといけないな。本当に僕たちは破産してしまうよ」


 「そう言えば、バルザ殿は奥さんの身を案じていたようだけど?」


 塔に到着したバルザ殿を謁見の間にまで私が案内したのだけど、そのとき彼はいくつか気になることを言っていた。

 そのことを私はプラーヌスに尋ねた。


 「うん、先に彼の奥さんをこの塔に招待していたからね。別々に連れてきたので少し時間が掛かったのさ」


 「ああ、そうだったのか。でもバルザ殿は酷くナーヴァスなようだった」


 「大丈夫、2人は無事、再会を果たした。バルザ殿も安心したようだ。それはそうと、街から傭兵が来たはずだけど?」


 上機嫌なまま、プラーヌスはそう言ってきた。


 「ああ、今朝着いたよ。何やらガラの悪そうな連中だったけど・・・」


 「わかっている、暇そうな奴らを安値で雇っただけだからね。しかしそんな連中もバルザ殿が率いれば精鋭に生まれ変わるはずさ。塔を守る素晴らしい番犬になるだろう」


 とにかく僕はこれで魔族との契約交渉に専念出来る。待ちに待った生活だよ。


 プラーヌスは何もかも万全だといった感じで、夕食のエビのパイ包みを頬張り、大豆のスープに口をつけた。「うむ、美味しいな、これは。料理係に伝えておいてくれ、シャグラン、僕はどうやらエビのパイ包みが好物のようだ」


 「わかった、言っておくよ」


 プラーヌスは本当に美味しそうにモグモグと食べている。

 そんなプラーヌスの機嫌の良い表情を前に言うのはためらったが、「僕はこれで魔族との契約交渉に専念出来る」という言葉を聞いたとき、彼に報告しておかなければいけないことを思い出した。


 「プラーヌス、実はまだ一つ、厄介な問題が残っているんだけど」


 「厄介な問題?」


 「ああ、とても厄介な問題」


 ここまで言いかけてもまだ躊躇した。

 しかしむしろ機嫌の良いときに言っておくべきだと考え、思い切って言った。

 まだあの女性の不気味な泣き声が、この塔のどこからか聞こえるということを。


 「あの声が聞こえてきたら集中力が途切れる。騒音というほどではないが、わずらわしいことこの上ない」


 私の報告を聞いてプラーヌスは少し眉をひそめたが、それほど不機嫌になった様子もなかった。「あのグロテスクな生き物の問題が解決したのだから、その声も止むと僕は思っていたのだが」


 「ああ、僕もそう思っていた。だから安心していたんだけど、何の関係もなかったようなんだ・・・」


 「いや、おそらく何の関係もないはずはないな。どこかで関連しているはずだ。一時的とはいえ、それからしばらく声が止んだことは事実だろ?」


 プラーヌスはナイフとフォークを置いて、思案気に宙を見つめた。「そういえばあの女性、まだ生き残りの生き物の世話を名乗り出た女性がいたじゃないか」


 「ああ」


 もちろん覚えている。確か名前はフローリア。

 自らも囚われの身であったのに、あの改造された哀れな人たちの世話を最後まですると言って出たのだ。


 そのことは大変に印象的で記憶に残っている。

 いったい何を考えているのか驚かされたものだ。

 それに利発そうで、美しい少女だったという記憶もある。


 「その少女と、あの改造された者たちの様子を見てきてくれないか。何となく気にかかる」


 「えっ? ああ、もちろん、いいけど」


 「あの少女はどこか普通じゃないね。上手く説明出来ないが、何か他の人間と感触が違う気がする」


 プラーヌスは口達者な自分が、上手く言葉に出来ないことに苛立つ感じを見せた。


 「そ、そうかなあ、まあ、確かに元は人間だったとはいえ、あんなグロテスクな人間たちの世話をしようなんて並みの人間じゃ無理だけど。よっぽど心が優しいか、責任感があるのか」


 「そうだ、僕には理解しにくいタイプさ。だからそう感じるのかもしれないが」


 自分の極度に利己的な性格をよく認識しているのか、プラーヌスは苦笑いしながらそう言ってきた。「まあ、とにかくさっさと解決してくれ。あれが解決されないと、完全なる平穏を手に入れたことにならない。もちろん僕も出来ることがあれば手伝う。どこかにこういうことに詳しい者もいるかもしれない。魔界を通して、情報を収集しておく」


 「うん、是非、お願いするよ」


 そう言いながら私も、プラーヌスが気に入ったというエビのパイ包みを口にしたときであった。

 またあの泣き声が聞こえてきたのだ。


 その声は、美味しそうなたくさんの食事で彩られたテーブルの上を、まるで蛇かネズミが横切ったような不快さで、わたしたちのせっかくの楽しい時間を台無しにした。


 「うむ、改めてこれは実に不快な現象だな。旺盛だった食欲も一気に萎える」


 プラーヌスは怒りを滲ませた口調で言った。「さすがにこういうことはバルザ殿でも解決出来まい。僕たちで何とかしなければいけない」


 「うん、出来るだけ僕で何とかするけど・・・」


 そう言えば、アビュと一緒にいたときもそうであった。

 ちょうどこの泣き声の噂をしていたら折よく聞こえてきたのだ。

 そして今回もそう。


 これは偶然で片付けられるのか。

 何か意志でもあってそのようなタイミングを狙っているかのようではないか。

 まるで私たちに何か伝えたいことでもあるかのよう。


 いや、そもそも、この泣き声に主なんてものがいるのかどうかわからない。

 何か意志が込められているかもしれないというのも、こっちの思い込みかもしれない。


 しかしいずれにしろプラーヌスの言う通り、あのフローリアという少女と、前の主に改造されてしまった生き残りたちに会う必要があるだろう。

 少なくともこの声のことを探るとすれば、今の私に思いつく行動はそれぐらいしかない。


 そういうわけで私は夕食後、早速行動に移すことにした。


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