第五章 3)バルザの章3
更に手紙の中にはこんなことも書かれていた。
愛用の武器を携えて来い。
槍、鎧、そして自慢の大剣、岩を真っ二つに断ち切ったという伝説の剣も必ずと。
山賊が身代金目的で誘拐したのなら、そのようなことを書いてくるだろうか。
普通なら武器を持たずに来いと書いてくるであろう。
いや、そもそもあえてバルザの妻を狙ってくる愚かな賊などいるはずもない。バルザは最強の騎士なのだから。
だとしたら、どこかの国の罠なのだろうか?
しかしそうだとしても、そのような姑息で卑怯な罠など、岩のように真っ二つにしてくれよう。
腕に絶対的な覚えのあるバルザは豪胆にもそう思い、臆することは少しもなかった。
いや、それどころかむしろ戦意が湧き上がってくる。
背中に大剣を背負い、槍を携え、鎧を着込み、バルザは手紙の文言通り屋敷の前で待ち続けた。
手紙に書かれていた通りの黒い馬車が、夜明け前、本当にやってきた。
闇の中から、蹄の音もなく近づいてくる馬車を見て、バルザはようやく理解した。
これは悪魔の仕業か、あるいは悪魔を仲間として慕う、邪悪な魔法使いの仕業であると。
しかし悪魔か、悪魔を仲間として慕う邪悪な魔法使いが、いったいこの私に何の用があるというのか。
馬車はピタリとバルザの前で止まった。
そこから汚らしい襤褸をまとった若い男が降りてきて、バルザに向かって馬車に乗るよう促してきた。
どこかの農夫の息子か、石工か、あるいは墓掘り雑夫か、そのような雰囲気の男だ。
バルザはその若い男に詰め寄り、激しい口調で妻の安否を問い質したが、その男は怯えた表情で、自分はただ使いの者だと言うばかりであった。
それならば早く妻の許に連れて行けと、バルザは自らその馬車に乗り込んだ。




