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私の邪悪な魔法使いの友人  作者: ロキ
シーズン1 魔法使いの塔
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第四章 10)朝食もしくは昼食

 花屋が持ってきた花を、プラーヌスは次々と塔に送っていった。

 先程、黒猫二匹と鴉二羽を瞬間移動させたのと同じ魔法を使ってだ。


 魔法陣の上に花を載せる。

 宝石を手に持ったプラーヌスが何か言葉を呟く。

 それだけで大量の花たちは目の前からかき消えた。


 私の金貨を目にしていた花屋たちは、これでもかってくらいの花を部屋にまで持ってきていて、三人目の花屋が来た頃には部屋は足場の踏みどころもなくなっていたのだけど、魔法を使えば、それほどの花であっても一瞬で塔に輸送されるようである。


 「今頃、謁見の間は花で溢れているだろう」


 プラーヌスが言う。


 「だとしたらアビュや召使いたちは驚いているだろうね」


 私は彼女たちの仰天している姿を想像して、思わず笑う。


 「いや、今更、そんなことでは驚かないだろう。彼女たちは魔法使いの塔で生まれ、そこでずっと育ったんだから」


 「そんなものかな」


 「そうさ」


 まあ、とにかく花の問題は解決した。これで大量の花を塔に飾ることが出来そうだ。


 それから私たちは近くの食堂で食事をした。プラーヌスにとっては朝食、私にとっては昼食となる食事だ。


 「だけど大量の花を送ったり、あの少年の様子を覗き見たり、この旅でかなりの量の宝石を使った。いや、これからもまだまだ使う必要がある」


 プラーヌスがパンをかじりながら、かなり不満そうな表情でそんなこと言ってきた。「また何かでしっかり稼いで、宝石を補充しないといけない。さもないと僕は、塔以外では魔法を使えない間抜けな魔法使いになってしまう」


 「でも魔法使いなら、宝石の十個や二十個分の金貨、すぐに稼ぎ出せるだろ?」


 魔法使いは引く手数多だ。大金持ちの貴族や、大成功した商人たちが様々な仕事の依頼をしてくると聞いている。

 いや、それどころか、ときには王が戦争の助力を頼んでくることもあるし、冒険家と共に冒険をすることもある。

 そのような依頼を幾つかこなせば、金貨や宝石などあっという間に溜まるはずである。


 「いや、そういう時間もおしいのさ。俗人たちの依頼を叶えてやる時間があれば、魔法の研究をしていたい」


 プラーヌスは言った。「しかしそうも言っていられない。魔法使いも労働しないと、魔法使いでいられない。宝石を持たない魔法使いは、剣を持たない剣士以下だ。シャグラン、だから塔の人員を出来るだけ削る必要があるんだよ。塔には不要な召使いを雇っていられるほどの余裕はないわけさ」


 「ああ、そうだね」


 プラーヌスのその言葉で、私は塔でやらないといけない自分の仕事を思い出し、少し憂欝な気分になった。

 もうすぐ旅は終わろうとしているのだ。

 あまりに短い旅だった。しかし逆に、まだ旅の最中でもあることが確認出来て、時間が許す限りこの街を堪能しようという気分になる。


 「多分、魔法使いが望む究極の魔法は、無から金を作る魔法か、ただの石ころを宝石に変える魔法だろうな」


 プラーヌスが最後の一口のパンを食べながら言った。


 「さすがの魔法使いもそれだけはまだ不可能なんだね」


 「ああ、それが出来れば世界は邪悪な魔法使いが支配することになるだろう」


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