第一章 1)プラーヌスからの手紙
私の魔法使いの友人、プラーヌスが手頃な値段で塔を手に入れたらしい。
まるで子供のように無邪気にその喜びを報せる手紙を寄こしてきて、私は微笑ましい思いをした。
しかしその手紙から察するところ、そこはかなり問題の多い物件のようだ。
最も近いエリュエールの街からでも、相当距離があるようだし、鬱蒼と生い茂った樹林に囲まれた場所に塔は建っているらしく、そこまでの行き来はかなり不便を極めるみたいだった。
しかもその樹海には大勢の蛮族が住んでいて、塔はたびたび襲撃されているという。
さすがの彼も、その対処に手を焼いているようだ。
そんな手紙を読んで、誰がそんな塔に行ってみたいと思うであろうか。
だいたい私も画業のほうが忙しく、病気がちの母もいる身である。
気軽に旅など出来る状況ではない。
しかし相変わらずプラーヌスはほとんど命令口調の横柄さで、私をそこに招待したいと言ってきたのであった。
断るすべはない。
彼がそう決めたのなら私は従わざるを得ない。プラーヌスは私を拉致してでもそこに連れていくだろうから。
彼は本当に手加減も何も知らないのだ。
私に対する嫌がらせのためにも、派手な魔法を使って私を連れ去っていくに決まっている。
そうなれば、この静かな街が大騒ぎになってしまうのは請け合いである。
そういうわけで、プラーヌスがしびれを切らしてこの街にやってくる前に、私はトランクの中から旅用のフードを久しぶりに取り出し、高い金を出して馬車を借りて、ここまで来たわけである。