第五話 レントリアスの午後[4]
不意に伝声機のコール音が室内に鳴り響いた。
「はい。1079室」
カエンが出た。
『ああ、カエン。念の為聞くが、アル=シュケイム=レイトはいるか?』
リヤオスだった。
「います」
『……代わってくれ』
カエンは無言でアル=シュケイムに代わる。
「はい、アル=シュケイム=レイト……」
『ぶぁっかもん!!』
キイイン、と声が響いてこだました。
アル=シュケイムは一瞬目を回しそうになった。
『早く来んかっ!! さっさとだ!! 子供の使いじゃないんだ!! ちゃっちゃっと来い!! 俺に恥をかかすな!! 二十秒で転送室へ来い!! 来なかったら減給だ!! ボーナスカットだ!! 食事抜きだ!!〕
「ええっ!!」
アル=シュケイムは反射的にガチャン、と通話を切る。
「減給!! ボーナスカットに食事抜き!?」
慌てて荷物を持って駆け出す。
「待て!! アル=シュケイム!! 服くらい着ろ!! 服!!」
言われてはたと立ち止まる。
ベッドに戻り、昨夜用意して置いた支給服を急いで着て、ブーツを履く。
「ほれ、アル=シュケイム」
ぽーんと渡されたヘルメットを受け取り被る。
「防風服と防砂マントは別に良いよね?」
「持って行けよ。必需品なんだから」
「重い。走れない」
「……俺が持ってやるよ」
カエンは呆れながら言った。
「あ、じゃあコレも持って」
と荷物の一部を押し付ける。
カエンは呆れた。
「甘えん坊め」
「お願い」
「……仕方ねーな」
カエンは溜息をついた。
「何でそんな大荷物なんだよ?」
「持っていきたい物がいっぱいあったから」
「……子供じゃないんだから、ちったぁ荷物整理しろよな。転勤でそんな大荷物持って行く奴、俺初めて見るぞ」
「とにかく急いで!!」
アル=シュケイムは駆け出した。
舌打ちしつつカエンは追い掛ける。
アル=シュケイムの足の速さはレントリアス内でも一・二位を争う。
転送室は居住区からは直接行けない。中央制御棟を経由し、物資管理施設の地下一階にあるのだが……。
「おい?! 何処行くんだ!! アル=シュケイム!!」
「近道!! 近道だよ!!」
「って近道って……アル=シュケイム!!」
アル=シュケイムは中央制御棟とは正反対の方角へと走っていく。
慌ててカエンは追い掛ける。
アル=シュケイムは後ろを走るカエンの事など気にもしてないのかマイペースに突っ走って行く。
「一体何処へ行くつもりなんだ!!」
「二十秒だよ!! 二十秒!! 制限時間二十秒!!」
「……にっ……二十秒!!」
そりゃ無理、と叫びそうになったカエンの目の前で、アル=シュケイムは突然壁にあるセキュリティ装置の蓋を開いた。
「なっ……アっ……!!」
止める間も無く、アル=シュケイムは中にあった数字キーを叩いて入力した。
すると、ぐぉん、という音がして、天井から半透明の玉子型の装置が降りてくる。
「なっ……何だっ!! これ!!」
カエンが一度も見た事無い代物だ。
「心配しないで。ただの緊急移動装置」
「緊急移動装置ぃ!!」
って緊急装置はただの、じゃないのでは、という質問をする暇は無かった。
「早く乗って!!」
引きずり込まれる。
すれすれで扉が閉まり、ぐぉん、という音がして猛スピードで滑るように装置が走り出した。
「うっわあぁっ!!」
べしゃ、とカエンはまともに顔から装置の内部に吸い付けられるようにぶつかった。
「ダメだな、カエン。ちゃんと掴まるかベルトしないと、吹っ飛ばされるよ」
遅い、という文句を言う暇も無かった。
今度は急停止して、反対方向へ吹っ飛ばされる。
がつん、と後頭部を打って、カエンは涙目になった。
頭がぐわんぐわんする。
「ほら!」
アル=シュケイムはカエンの状況などまるで気にもせずに腕を引っ掴んで走り出す。
カエンは足をもたつかせながら、それでも引きずられたくなかったので、目の前が良く見えないけれど必死に足を動かした。
「そして最後!!」
アル=シュケイムは更にそこにあった何かの装置をいじった。
「ちょっ……待っ……!! アルっ……!!」
サイレンの音と共に、目の前の『緊急用』と書かれたドアが開いた。
「あ、しまった」
そう言って、アル=シュケイムは先程の装置のボタンを、デタラメに見える無造作さでタカタカタカっと叩くと、警報は鳴り止んだ。
「……おい……アル=シュケイム……?」
「いやぁ、警報はマズかったね。さ、行こう。ここを抜けると転送室だ」
明るい暢気な声でそう言って、アル=シュケイムはドアの向こう側へと足を踏み入れた。
「ぶぁっかもーんっっ!!」
リヤオスの怒声がびりびりと壁が震える程に響き渡った。
カエンの心臓は凍った。
アル=シュケイムはけろりとしている。
カエンは逃げよう、と瞬時に思った。
「誰がそんなとこから来いと言った!! お前の頭は飾りか!! え!! アル=シュケイム!!」
「何言ってんだよ、リヤオス」
能天気な顔と声でアル=シュケイムは言う。
「約束通り19・98秒。20秒内に着いたよ?カスケイム=リヤオス、レントリアス本部長官は、経路や方法については何一つ言及しなかった。僕は貴方の命令通り二十秒内に到着するため、確実な最短距離・最速経路で来ただけだ。長官の命は『二十秒以内に来い』。それ以外の指示は無かった。従ってそれを成し遂げるためにはどのような手段も是とする。『依頼人』の命と条件及び期限は絶対だ。例外は無い。そのための経費や損害なら何とかする──そう言ったのはリヤオスじゃなかった?」
「……口の減らないくそガキめ」
リヤオスは唸るように呟き、舌打ちする。
「……では以降、無駄な経費と損害を出すな。じゃないと給料から天引きする。判ったな?」
「ええ? やだよ、そんなの」
「やだとかそういう問題じゃない。命令だ」
「……ケチ」
「ケチじゃない!!」
リヤオスは怒鳴った。相当頭に血が昇っているようだ。
無理もない、とカエンは思った。
アル=シュケイムは全然反省してない。
「……ところでそこで何をしている? カエン=タルウォーク」
背筋の凍るような声。
死角に隠れていたつもりのカエンだったが、全くの無駄だったらしい。
諦めて室内に入る。
「……すみません、止められませんでした」
「……何のためのルームメイトか判らないな。お前のせいとばかりは言わないが」
そういうリヤオスの目線は冷たい。 カエンは身震いした。
「てゆーか、リヤオスが全部悪いんじゃないかー」
(何でこいつ、こんなに能天気なんだ!? 今朝の起き抜けとエライ違いじゃないか!!)
とカエンは思ったところで、物凄く厭な事を思い出した。
(……まさか、こいつ、酔っ払ってるんじゃ……)
とても厭な考えだ。
アル=シュケイムは酒好きだ。だが、非常に酒に弱い。
ほんの少ししか与えていない。 確かに酒乱で酒癖は悪いが、だからと言って……。
カエンは今、考えた事を全て脳裏から抹消する事にした。
彼のか弱い心臓と保身のために。
リヤオスは人を石に変えんばかりの眼光で、アル=シュケイムを睨み付け、荷物と共に転送機へと放り込む。
「二度と帰って来なくて良いぞ」
唇だけでにやりと笑い、スイッチを押した。
アル=シュケイムが何か言いかけていたが、声が外に出る前に、転送機が作動し、姿を消した。
カエンは取り敢えずサンウォーク神に祈る印を切った。
普段は無神論者だが、サンウォーク神は幸運と賭事の神様である。何か御利益があるだろう、と思った。
だが、その後でかの神が諍い事も好むという伝承を思い出したが、忘れる事にした。
「……っとに頭の痛い。あいつがいると、頭痛薬と胃腸薬が手放せない」
「心痛お察しします。……が、そういう奴を274カラム基地へ送り込むなんて、大丈夫ですか? リヤオス長官。セドル支部長がお気の毒ではありませんか?」
「なぁに、これで暫く奴も増員してくれなんて言わなくなるだろう」
「…………」
カエンはつくづくカスケイム=リヤオス長官の恐ろしさを痛感した。
この人だけは敵に回してはいけない。既に手遅れかも知れないが。
リヤオスは笑った。
「……ところで、アル=シュケイムの件だが」
「あっ! すみません!! 本当に申し訳ありません!!」
「……その件はもう良い。……どう思う?」
「どうって……あいつは変な奴ですが、実際のところ普通の人間と変わりないですよ。『異界』の生命体を宿してるったって、あの二重人格に見えるアレ以外は別に異常は無いように見えました。表面上は。もっとも、まともという点で言えば、アル=シュケイムよりラナス=キウトの方がまともで常識的ですよ。あいつは変です。もっともその『変』な部分が、我々のとっかかりになるような気もしますが」
「……とっかかり?」
「実は、ですね……」
「……成程、『水が降らないのに水を使用する』か。確かにそうだな。我々は現在ある水をどう使用するか、とか今後の水をどうするか、とかどうして水がなくなるのか、とか雨の降らなくなった原因究明にこだわり続けていた。……『古代遺跡』に手掛かりがあるのではないか、などと」
「我々は『古代遺産』により『雨の降る原理』を知っています。やってやれない事は無いと思います」
「……確かに『気象データ』はある。その原理や予測方法のデータも。だが、それをどうやって現実にする? 『古代技術』の大半が失われ、それを再現する為の設備も無い。レントリアスの技術じゃ、限度があるぞ? それでもやれるという根拠はあるのか?」
「やりますよ。……確かにレントリアスの技術だけでは難しい点もあります。ですが、このサランテスワースで唯一つ、それが可能な施設があるでしょう?」
リヤオスは眉を顰めた。
「……まさか、『アスト』の事じゃないだろうな!!」
カエンはにやりと笑った。
「その『まさか』ですよ。あそこなら『可能』だ。長官もご存じでしょう?」
「……しかし、『アスト』は我々を敵対視している。絶対にこちらへ協力など……」
「何おっしゃってるんですか、長官。そんな悠長な事言って。……そういうのは『長官』らしくないでしょう?」
「……カエン=タルウォーク」
リヤオスは溜息をついた。
「……まさか『連中』と事を起こす気か?」
声をひそめて言うリヤオスにカエンはにやりと笑う。
「『学徒暴動』の『主犯者』が良く言いますね?」
「……あれは……」
リヤオスは厭な事を言われた、という顔をした。
「あの『暴動』の時には随分の『学徒』達が大脱走しましたよね。俺もあの時脱走した口でした。……もっとも、故郷のカルド村へ辿り着いた時は既に手遅れでしたが」
「……そうか……カルド村の……」
「旧コルドール地区は全部回ってみたけど、全滅でしたよ。『アスト』上層部の『人体実験』によって。あなたの『情報』は確かに正確でした。……俺以外にもかなりの人間があの時『アスト』から離反したと思いますよ。途中で別れたから、その後どうしたか知りませんが。一部はここへ来て再会しましたけれどね」
「……『レントリアス』の技術者の大半は、『アスト』出身者ばかりだよ。君と同じ『学徒』も数多い。経歴から君が『アスト』脱走者だとは知っていたが……」
「『アスト』が『レントリアス』を敵視するのは当然だと思いますよ。目的が、理想とするものが全く違う。『アスト』は『選ばれし者の救済と繁栄』をめざし、我々は『全ての者を分け隔てなく救う』事を理想としている。今、事を起こさなくても、いずれ大きくぶつかり合う羽目になりますよ。向こうに主導権取られるくらいなら、こっちから喧嘩売った方がマシです」
「……だが、うちには『兵器』は無いぞ? あるのは『対人用』だ。確かにうちは『傭兵』家業もやっているが──過ぎた火力や科学は身を滅ぼすものだと、開発・研究を控えてきた。『古代文明』がそれを示している。かつて、サランテスワースに存在した大国同士の『戦争』が、この地をこんな風に変えたと俺達は知っているじゃないか」
「知っていますよ。だけど、『アスト』とはいずれ『戦争』になる。俺は『アスト』で『生体実験』をしていたからこそ言います。『アスト』はいずれ、この世界全部を『選ばれし者』の為に掃討し駆逐しますよ。間違いなく、ね。あの頃の俺はそれを自覚していなかったけど──生物兵器の開発もしていたんですよ。俺は、ただ新種の『病原菌』の培養とその研究をして帳簿を付けているだけ、と思っていましたがね」
「…………」
「『アスト』は横同士の繋がりがない。だから隣の部署や研究所で、誰が何をやっているかなんて知らない。自分がやっている専門については詳しくても、それが一体何になるかは判っていない連中ばかりなんです。知っているのは上層部だけ。俺は、俺の『故郷』が俺の開発したウィルスで壊滅するなんて知らずに、上から言われた通りやってたんですよ。何も判ってないバカな子供だった。俺の親父は……ウィルスに汚染された水で死んだ。俺の妹も、お袋も。初恋相手も、幼馴染みも、何もかもだ。俺がやれたのは、これ以上感染を広げないために、村を自分の手で焼き払う事だった。俺の手で水脈を潰して、家を打ち壊して、火を付けて」
「……カエン……!!」
「……俺が『私怨』と『使命』をごっちゃにしてる人間に見えますか?」
リヤオスは悼むような目で、カエンを見た。
「『アスト』はいずれ滅びなくてはならない組織です。その意見にはたぶん私怨が混じっていますが、身内を切り刻むような真似をする組織なんて、腐り果ててる。『アスト』には多くの町や村、集落から人が集まる。『実験』に使われるのはいつだって『僻地』で、少数の出身者しかいない場所だ。そして、地下に『古代遺跡』や『古代遺産』が埋まってる場所に存在する集落は大小に変わらず攻撃される。『アスト』に恨みを抱く者は多い。俺一人じゃありません。……確かに、『アスト』には大小様々な各種の兵器が存在しますが──『アスト』は軍隊じゃないんですよ。一枚板じゃない。各種の専門バカが寄り集まった、寄せ集めの集団です。一方的な『虐殺』は経験していても、対等な『戦争』はした事が無い。だから、『学徒暴動』事件の時にあれ程混乱したんじゃないですか。あの時の『煽動』と『混乱』の手腕は見事なものでしたよ、長官。あれがあなたが『アスト』を脱出する為の手段ではなく、『アスト』を滅ぼす為だったなら、たぶん『アスト』は今頃壊滅していましたよ。……今更ですが」
「……確かに、あの時潰して置いた方が良かったかも知れんな。……そう思う事も時折ある。あの頃は……まだ、ただの『組織』だった」
「……『アスト』はまだまだ、これからも成長すると思いますよ。自分のやっている事が何かを理解しないバカ共によって。長官は……カース・ケイム=リヤオス=アレル・ドーン=ラダークレス殿は、『アスト』の実情を一番的確に理解し判断しておられる方だ、と俺は思っているんですが」
「……お前がそんなに嫌味な人間だとは、初めて知ったよ」
「……俺達『学徒』にとってはあなたは『伝説』のような人でしたからね。『アストで生まれた最後の天才』」
リヤオスは苦い笑みを浮かべた。
「……『最後の天才』ね。耳がむず痒くなるような台詞だ。誰が一体言い出したんだか」
「あなたが『人工知能』だなんて、きっと誰も信じませんよ。俺達の世代以降の連中は。あなたは生きる『古代遺産』だ。あなたをプログラムしたジーンハイム博士が死亡して六百年。あなたと同じ存在をこの世に生み出す技術は失われた。ジーンハイム博士があなたと同時進行でこの世に生み出したもう一つの『人工知能』が『軍用兵器』となって世界を滅ぼした。あなたは、この世の何処かに埋まっている筈の『自分の片割れ』を探している──そうでしょう?」
「…………」
「長官だって、俺の事をとやかく言える立場じゃありませんよ」
「……それでも……」
リヤオスは苦く笑った。
「『レントリアス』はもはや俺一人のものじゃないから、俺一人の意見じゃ決められない」
「長官の決めた事なら、皆ついていくと思いますよ?」
「その『長官』に意見言ってるのは誰だ? カエン=タルウォーク。それも物騒な事を」
カエンはぺろりと舌を出した。
「いや、長官にはいつも敵わない、と思ってるんですよ」
「まあ、それは脇に置いて、だな」
「酷いですよ、長官」
口を尖らして見せるカエンに、リヤオスは真顔で問う。
「……本気で言ってるのか?」
「この上なく『本気』ですよ?」
カエンは真顔で答えた。
「じゃあ、俺も『本気』で返事をしなきゃならんな」
「長官」
カエンが苦い顔をした。リヤオスは真面目くさった顔で言った。
「……暫く考えさせてくれ。……ただ、どうやって『雨を降らす』つもりなのか、その辺りの報告書はまとめておいてくれないか? 資料にする。……俺も、結局のところは『専門バカ』なんでね」
「……あなたにだけは言われたくない台詞のように思いますけど」
「……そうか? 俺は与えられたデータを元に演算処理をするのは得意だが、ひらめきを元に現存しないデータを考えつく事は出来ないんだ」
「……『そういう意味』の『専門バカ』ですか?」
カエンは呆れたような顔をした。
「『ひらめき』は人間だけの『特権』だよ」
リヤオスは笑った。
「機械には絶対不可能な事だ」
274カラム基地。
「そろそろだな」
とセドル支部長は言った。転送機は先程から待機状態になっている。約束の時間を数分ほどオーバーしているようだが、そういう事もあるだろう。レントリアス本部といえど、それ程電力に余裕がある訳では無いから──それでも、水の保有量が段違いだから総電力の差は桁違いだが──予定より大幅に遅れる事は有り得ない。
転送機が光を放ち、カプセルの中に幾つかの物体の輪郭が浮かび上がってくる。今度、転属してくる隊員の名はアル=シュケイム=レイト。レントリアス最大のスポンサー、カラ=セルム=レイトの末弟であり、レントリアスの稼ぎ頭。『夢幻の剣』を振るい、『魔』を単身倒し、『異界』の高等生命体をその身に宿し、『異界』の物を見聞きすると聞く。世にも珍しい銀髪で、左目が青。右目が銀。美しく聡明な青年だと聞いているのだが──。
「酷い!! 横暴!! 最低!! リヤオス!!」
甲高い怒鳴り声が響き渡った。
ぎょっとして目を見開くセドル支部長の前に、童顔・銀髪の少女のような顔立ちの青年が立っていた。
「……あ、どうも」
何処かとろん、とした目つきで青年はそう言った。
「……ええと……」
セドルは一瞬言葉に詰まった。
「……もしかして、君が、アル=シュケイム=レイト?」
「そうです。初めまして。……おはようございます」
ぺこりと青年は頭を下げた。だが、礼儀正しいのか何なのか、少し頭を下げすぎだ。
「……こちらこそ初めまして。宜しく」
セドル支部長の不幸が始まろうとしているとは、彼自身はまだ気付いていなかった。
──The End.
「孤高の天才」を読んだ方には「アスト」の前身、ある人の過去が判るはずですが。
それ以外は世界観も含め、ほとんどリンクしていないので、未読でも問題ありません。
アル=シュケイムにはモデルがいます。
ただし、だいぶ改変しているので、元の人物とは随分違いますが。
でも基本的にはああいう性格だよな、と思ってたり。
本人に言ったら「違うよ」と言われると思いますが。
カエンとリヤオスがお気に入りです。
カーラも。
本当は第一話にカーラを出せれば良かったんですが、出しようがなかったので、「レントリアスの午後」のプロットを作りました。
なので本筋だけを追うなら、「レントリアス〜」は省略して次話「アストの影」を書くべきだったんだろうなと思いつつ、しかしそれじゃつまらん、というか早くカーラとカエンを登場させたかったので、こんな感じになりました(私情入りまくり)。
というわけで次話は「アストの影」です。
ちょっと長くなるかもです。