ベースボールボール・急ノ上 パート5
またまた中途半端ですが、すいません、これが僕の限界です。
「あー、いや、別に答えなくてもいいよ。そうか、あの子は“長谷川”って言うのか」
少女は俺が何かを言う前に、舞台裏を覗いて、面倒くさげにそう言った。
「……何をされたんだ?」
様子を見るに、相当腹に据えかねているようだが。すると少女は微妙なことを言う。
「……いや、その“娘”じゃあないんだけれど。けれど“長谷川”ではあるかな」
………………?
よく分からない。
「まあ……質問に答えるのが先か。いやいや、大したことではないんだよ? ちょっと気まぐれをおこして、僕は外に出て。門の手前で寝てみたんだよ」
「棺で?」
「棺で」
……そうですか。
目立つなあ。
というかさ。少女は訊ねてくる。「きみは疑問に思わなかったかい?」
「何を?」
「長谷川さんが、どうして、どういう過程で、野球ボールを”投げ込んだ“のか」
………………。
それは……考えても、みなかったことだ。
俺は混乱する頭で言った。
「それは、きゃ、キャッチボールでもしてたからじゃあねえのか?」
「違うね。全然違う。……“その必要があったから”、かな? まあ、別にそんなものはなかったんだけれど」
原因は僕だ。少女は言った。
「たまたま僕の前を通りがかった女子高生は、僕に突然ボールをぶつけて来たんだ」
”投げ込んだ“、ではなく、”投げつけた“。
………………。
そんなことやってたのか長谷川。いやキャッチボール、なんて、まあ別に文句をつけるわけじゃないが、女子がそんなことをするのは、しかし不自然ではある。
考えても、みなかったが。
考えれば、わかることだ。
……そもそもあいつ『友達がいない』とか言ってたしな。”誰と“って、最初に疑問に思わなければならないことだ。
浅はかだ、俺はどうしようもなく。
──となると。
俺は思考する。色々と事情が変わってくるな。
そりゃあ、怒る。よなあ。眠りを妨げられたんだ、怒るに決まっている。
つーか。
あの女ァ……!
最悪じゃねえか。なんつーところに俺を送りこんでいるんだ。
情報を伏せて。矢面に立たせて。
……あの、なんか俺、あいつに好かれていないような気がするんだが。
あの『告白』。あれは……嘘、だった。のか?
普通にショックだった。うわー、ぬか喜びさせられた。
この分じゃあ猫耳メイドも嘘くさい。それは困る、大いに困る。
……まあ。
「だが、“どうして”がわからねえな。“どうしてお前にボールをぶつけた”のか」
俺は訊ねた。まあ、それは後回しだ。あとで怒ろう。今、ここに長谷川はいないんだし。
それに。それは別に、頑張らない理由には、ならない。
「理解が早いね、そういうのは嫌いじゃない」
少女は言った。そう言われると、ちょっと照れる。
「いい質問です!」
池上彰か。
「ダルビッシュ!!」
「……ああ! ベル坊か!」
「よくわかったね」
「アンソニーが13位だった『SKET・DANCE』第二回人気投票に、二人(?)ともネタ投票されてたからな」
「ほんとによくわかったね」
驚いているのは俺自身だ。『ダルビッシュ』でベル坊と気づくか普通……。『べるぜバブ』読んでるとたまに決め台詞で『ダルビッシュ』使うけどなあ……。
って、これは脱線。
少女は悩ましげな表情を形作って
「そうだね……どう言えばいいのか。まあ僕がその気になれば地球くらいなら消し飛ばせることは知ってるよね?」
初耳である。
「……殺せんせーかよ」
「間違った。『宇宙くらいなら』だった」
「……………………」
んん? なんかとんでもねえこと言われてないか、俺。
あまりに突飛で冗談とも本気ともつかない。
「『魔法』って極めるのは簡単だったけれど、わりあい使い勝手が悪いんだよねえ」
そんなことを言う少女。あー、極めるとそんな感じなのか、 魔法って。
正直、吸血鬼兼魔法少女ってどんなキャラかと思ってたんだが、あー、なるほど。トンデモキャラかー。
「……まあ信じる信じないは勝手だけれど、真実僕は取り扱い注意の吸血鬼兼魔法少女。それが」
それが目の前に、いる。……まあ言われてもピンとこない。
「ピンとくるやつがいたのさ」
誰だと思う? 少女は笑ってそう言った。
誰か、など。答えは一つしかなかった。
道を通りがかって。棺を見つけて。吸血鬼に遭ったのは──
「……長谷川、か」
「ある意味そう言える。“長谷川”ではあるなあ、確かに」
だが。少女ははぐらかすようにそんな答えを返した。
「どういう……」
「おいおい。おいおいおいおい。まだわからないのかい? きみは今日、何を見てきたんだよ、うん?」
言われて……思い返した。俺が、見たもの。
教室であったのは長谷川亜華、それから墓場ではゾン……いやグールか、テケテケ、フランケンシュタイン──、狼男、吸血鬼。
そして。
「『ボール』……」
野球ボール。長谷川亜華に頼まれて探していた……
「まさか……」
──“弟”の“形見”。
まさか、この、仰々しく『封印』されている『野球ボール』に。その『いる』ということか?
“長谷川”ではあるな──そういう意味なのか?
長谷川の弟が、
「『このボールに取り憑いている』……うん。あってるぜ、それで」
ちょこっとサービスで解説してあげよう。少女はなんの感慨もなさそうにそう言った。
感慨なんて、あろうはずもない。
無意味な感想だ。
無味乾燥。
みたいな。
あんまり面白くないですが、次頑張ります。ちなみに僕は『明日やる』と言ってやっぱりやらない人です。すいません。




