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あるシステムエンジニアの悶々とした悩み

作者: 群龍猛

あるシステムエンジニアの悶々とした日常業務に対する思考をツラツラと書いてみました。

 眼球の上部がかすり傷を負ったかのようにヒリヒリと傷む。


 目の炎症と片付けられる出来事かもしれない自覚症状であるが、これが妙に男のコメカミを親指で強く押し付けるかのような圧迫感に類する痛みを伴って、両目の位置を水平にしてぐるりと締め付ける頭痛を随伴させていた。この頭痛は、男にとっては頻繁に起こるもので、風邪を本格的にこじらせる前兆だったり、花粉症の時期に良くある目の充血からくる眼球にデキモノが無数に現れたような感覚から引き起こされたりと、困った物であった。


 何かしらしっかりとした病名が付く持病と呼べる物なのかは、医者でもない男に分るわけでもなく、日々このような昼過ぎ辺りから起こる頭痛と静かに格闘しなければならなかった。


 この頭痛は、決まって昼過ぎのだいたい3時過ぎから起きはじめる。困った事にそれも強く起きるのが、会社のデスクに座り、西日が強くなりだし、窓にその日の光が差し込みだす頃に一段と目のヒリヒリ感を刺激して酷くなる。


 睡眠不足であると考える事も出来るが、それならば激しい眠気が瞼を引き降ろそうとし始めるはずだが、その様なことはない。では、横になってしまっても、寝ないのかと言うとそれはそれで、自信があることではない。


 男の勤める会社は、慢性的睡眠不足に悩まされる業界だ。


 それも彼は、世の中のメカニカルな仕事の内でシステムエンジニアと聞けば、関係者以外の方からすれば、瞠目を受ける職業に就いている。


 とは言え、年がら年中、PCのモニター画面に向き合い、キーボードと格闘する職業である。


考えてみれば、この職業ゆえに眼球上部に感じるかすり傷のような痛みもこのモニターからの発光を、常に受けているからこそ自覚症状として憶えるものかもしれない。


 要は、この目の痛みは、眼球疲労という事になる。


 眼球疲労は、積み重なると眼球に掛かる首筋を疲労させ、肩凝りを誘発すると聞く。


 そう考えると男もこの毎日の様に感じる頭痛にもそれなりの理由付けが出来ようであった。


眼精疲労から来る肩凝りが慢性化し、コメカミの奥にある視神経を更に刺激し、ぐるりと頭部を痛めつけている。


 男はそうやって毎日毎日同じように自分を納得させながら、日々の業務をこなす訳だが、それは体調の異変をもしかしたら矮小化させようとする自分自身への説得行為なのかもしれない。


 彼には、仕事を早々に辞める経済的基盤もなく、ましてや両肩には妻と子供三人の生活ものしかかっている。


 これを放棄するような無責任な神経を彼は持ち合わせていない。


 世の中は、彼のような責任を持って家庭を支える社会人が大半であるが、中には、自分の事しか考えない無責任という言葉がそのまま当てはまるような社会人も多いのはいるのは確かであった。そんな無責任な思考をなぜ出来るのか、男には分らないが往々にして世の中と言うのは、そんな自前勝手な人物にスポットが当たり、なぜか出世したりしているから不思議であった。


 ならば、そんな無責任な社会人に成り下がるという考えは、男には無い。


 彼には、末娘の無邪気に笑う顔が目を瞑るだけで鮮やかに映し出される。


 小学生になったばかりの長男の舌足らずではあるが、陽気な声がちょっと意識すれば呼び起こされる。


 もう直ぐ小学校6年になる長女のちょっとおませになってきた態度が、成長を感じさせてくれてちょっと嬉しい思いが沸きあがってくる。


 帰宅すると出迎える家内の笑顔が常に頭に浮かぶのだ。


 それが、この会社での閉塞感に包まれた状況を耐え、モニターとにらめっこして、キーボードと格闘し、乗り気で無い業務をこなす大きな原動力になっている。


 ただ、仕事に対して言うなれば、熱心、かつ純粋な喜びを感じていない事は確かだった。


もし、この今、目の前にある業務内容に男自身が興味を持ち、積極的に関わろうと言う意思があるものならば、もしかしたら修行僧のような感覚で、定期的に訪れる頭痛に耐え忍びながら仕事に向かい合う事はないかもしれない。


洞察力に優れた会社の上司ならば、男のその姿勢は既に見破られている事だろう。


男は、その事に関しては承知はしているし、敢えて何か対抗処置をとろうなどとは考えていない。思われてもそれはそれで、以下仕方ない事だと半ば諦めている。


 ちょっと前までは、その流れを変えようと様々なことを行ってきたが、これと言って効果は見られなかった。逆に疎んじられる始末である。傍目からは、男の行動が空回りしているように見えただろう。


 だが、今ではそれも仕方が無いことだったと男は、自戒の念を持って受け入れている。そして、もう無駄に下手な動きや働きかけは

しないことにしていた。


 この会社は、このままずっと変わらない。


 これが、男の出した会社への答えだった。


 ならば、長い事ここに居座る必要もないのだが、そこは世の中の常、早々に離れるわけにも行かない大人の事情もある。


 それが、責任と言う物だった。


 離れるならば、離れるだけのある程度の勝算が必要だった。


 それは、金とタイミングと呼ばれる言葉に置き換えられる。


タイミングは、昨年に一度大きくあった。残りの金も上手く行けば何とかなりそうだった。しかし、そうは簡単にいかないと言うのが常 套句でも使われる「世の中は上手く行かないものだ」だった。


 結局、肝心要の金が上手く事が運ばず、それに引きずられる形でタイミングも逃してしまった。


 そうなると、一旦、その場をやり過ごすしかなく、次のタイミングを狙う必要になってくる。無計画に収入のみこみのない生活に身を投じられるほどの身軽な立場ではないのだ。


そんな悶々とした思考を持ちながら男は、この会社での惰性的な業務をこなし、時間を無駄にしているように思っていた。


 危険では合った。


 熱心ではない故に、確実にその仕事に対する知識——ここの職場に限定はしているけれども——が徐々について来れなくなってきている事が分ってきているからだ。しかし、知識を吸収するように挑む気にはなれなかった。


 なぜならば、乗る気ではないからだ。


 完全に惰性で仕事をやっていた。よろしくは無い。道義的にも本来の男からすると許せない態度だ。


 それは、男にも分っている。されど、どうしても乗り切れないのだ。


 この感覚は、周囲と反りが合わないと言い切っていいのかもしれないし、さほどもうこの会社に情熱を入れ込むほどの価値を見出していないからでもあった。


 そんな自分の宙ぶらりんの態度と思考が、男の頭痛を更に悪化させているのかもしれない。と、男は思った。


普通の社会人が仕事にどう向き合っているのか、皆がそうであるとは言いませんがこの様に感がながら変わらない日常を過ごしているのかも?とか読み取っていただければ嬉しいです。

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