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帰りたくない

作者: 水嶋ゆり

 がんばろう 日本

 がんばろう 東北

 がんばろう 福島


 がんばろう… にも"がんばれない"

私は職を失った。ハローワークに出ている求人はパートかアルバイト。正規ではない。がれき収集や除洗作業にしても正規ではない。一時しのぎの仕事に将来は見えない。緊急時避難区域は解除になったものの若いヒトタチは戻らない。高校も再開したが正門前には朝夕、送迎バスが生徒たちを飲み込む。表向きは平常に見えるが、以前とは全く変わってしまった。

 今年は柿や栗が大きく育った。誰も採らないからだ。採っても食べられないからそのままにしている。だからより一層育つのだ。最初は気にしていた私も最近はあまり気にも止めなくなった。


 実は私は今、避難している。自宅は地震の影響もあまりなかった。にもかかわらず、避難を余儀なくされている。周知の事由からである。しかし起こってしまった事に怒りを表してもイマサラである。だからこれからの事を考えたい。


 首長は数年で民を戻すと公言した。しかし私の周囲の人たちは戻りたくないと言っている。除洗に何億も掛けるなら、各家庭にその分を分配し、自由にさせたらどうだ。というのだ。尤もな意見だと思う。山や川を一時的に洗っても数日、否、数時間で元の状態に戻ってしまうからだ。災害復興を唱えるなら一番有効な策だろう。


 今日は寒かった。自宅のある地は今日氷点下まで温度が下がった。これからどんどん寒くなるだろう。仮設住宅に住む人たちはそれにも耐えなければならないのだ。幸いにもうちの家族は比較的暖かい地に居を構えられた。数年後自宅に帰ろう!と言われて喜ぶのは年寄りしかいない。しかも帰っても田畑を耕作することは叶わない。おまけに店がない、というのでは家にいるだけ、になってしまう。結局は息子や娘の居住地にいるしか道はないのだ…  


 とても良い土地で他のどちらからいった者にも暖かく迎えてくれた土地柄でも、あそこに戻る気はないし、帰りたくはない。

 

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