第4章:早川 圭吾の奮闘-1
王子は実はヘタレなのか?の巻
彼女をはじめて見たのは、入試のときだった。俺の隣の席に座った彼女は緊張感たっぷりの教室で、深呼吸を始めたんだ。
俺はノートを見直しながら、その様子を眺めていた。すると深呼吸を終えた彼女はぼそりと「うしっ」と言った後ヘラリとした。そのヘラリとした顔が、とても可愛かったんだ・・・・・
一緒に受かるといいな・・・入学したら絶対見つけてメルアドを聞くんだと思っていた。
あれから2年・・・好きな子じゃなくて、全然なんとも思ってない子しか近寄ってこない。
1年生のときのオリエンテーリング、修学旅行、体育祭、文化祭・・・・1、2年生はクラス替えをしないのに、何も有効な手立てが見つけられない俺ってヘタレ。
「はー、どうすりゃいいんだか」俺は理系希望だから3年になったら理系を選択する。岡崎さんは文系クラス志望らしい。つまり来年はクラスが別なので、今年は最後のチャンスなんだ。
昼飯を食べた後、校内にある芝生に通りかかったとき岡崎さんの声が聞こえた。・・・ショックだ。俺は彼女いわく「いかにもモテまっせ」顔で、好きじゃないらしい。化学の橋野じゃ、俺と全然違う。しかも、俺のこと「早川王子」って呼んでるし。
しかも、彼女とのきっかけになれば、と放課後に話をしたついでに告白したところ、表情が固まったまま逃げられたし。もっとも、次の日には謝罪ついでに告白を断ってきた彼女を押し切って強引にメルアドを交換した。なんともいえない表情の彼女を目の前にして、俺はとにかく自分の存在をアピールすることにした。
俺はさっそく彼女に初メールをした。メルアドを交換したので送ってみたことと、自分にも送ってくれるとうれしいという文面で送った。ほどなくして、岡崎さんからメールがきた。
「メールあんまりしないので、時間があったら送ります」・・・・短い上に、そっけない。絵文字もない。なんとなく岡崎さんらしくて笑ってしまった。
その1週間後、先生に頼まれて集めた課題を抱えて歩く岡崎さんに走って追いついた俺は固辞する彼女を押し切って課題を半分持って職員室に向かった。
課題を先生に届け終わり二人並んで廊下を歩く。ううう、夢みたいだ。
「早川くん、半分持ってくれてありがとう。一人で持ってくってさっきは言ったけど、やっぱり重かったから助かったよ」
「どういたしまして。今度からああいうときは声かけてよ」
「んー。考えとく」どうみても断る気満載のニュアンスで答える岡崎さん。
「ところでさ、今日部活ない日だから一緒に帰らない?岡崎さん」
「ごめんね。図書委員の当番でムリ。じゃーね、早川くん。あ!唯ちゃーん」と川田さんを見つけた岡崎さんはそっちに走っていってしまった。
岡崎さんに声をかけられた川田さんは、俺の姿を見つけると気の毒そうな顔をして俺を見た。
な、なんの!勝負はこれから。とりあえず「接点ない人」から「アドレス知ってるクラスメート」に昇格したのは間違いないし、返事はそっけないけどメールすればきちんと返信をくれる岡崎さんの丁寧さが俺は結構気に入っているのだ。
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