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瑞穂、流される?の巻
「おまえさ」と孝一郎が口を開いた。
「なに」
「橋野のこと、好きだろう?」
「は・・はぁ?!」なぜにこいつが知っている!しかも先生を呼び捨て!!
「だけど、橋野は藤村さんと付き合ってるよな。」
恐るべし、生徒会長。どこから、その情報仕入れた。
「おまえが橋野を見てるときの顔が先週とは違う。なんだかおまえ、泣きそうな顔をして二人を見てるし、分からないわけがないだろーが」
泣きそうな、顔・・・?
「瑞穂は昔から、外で我慢して家でこっそり泣いてるだろう?ここは俺しかいない。泣くとすっきりするぞ・・・・俺のまえで、我慢するな」
「ばっ・・・」私は笑おうとしたんだけど・・・・目の前の孝一郎がぼやける。
私は涙を流していた。傷ついてないなんて嘘だ。私は橋野先生が好きで、相手の藤村さんも好きで。二人はお似合いだけど、見てるのは辛いし、くやしい。私だってきっと好きな気持ちは負けてなかった・・・だけど、先生は藤村さんを選んだんだもん。
「・・・・」私はひたすら涙を流し続けた。孝一郎は、そんな私をなぐさめるでもなく、黙ってパソコンで仕事をしている。
私の涙が出尽くしたのが分かったらしく、孝一郎は黙って2杯目の紅茶を入れてくれた。
「飲んだら帰るぞ」
「うん・・・ありがど」
「少しはすっきりしたか」
「うん。なんか、これから二人を見ても・・・前みたいにしてようって思えるようにがんばる。ありがと、孝一郎。あんたって、いい人だったんだね。」
「・・・おまえは、俺をどう見てたんだ」
「外面のいい俺様」
「・・・・・」がっくりとする孝一郎。
「どしたの?孝一郎。」がっくりする孝一郎なんて、最後に見たのはいつだったか。
「まったく・・・・瑞穂。俺は、自分にメリットのないやつとは付き合わない。でも瑞穂だけは違う。わかるか、この意味が」
「幼馴染だからでしょー。」
「おまえ、どんだけ鈍いんだ」
「むー。なによ鈍いって」私はちょっとむかっときた。
「失恋したばかりのおまえに、つけこむのはどうかと思ってたけど・・・・もういい。瑞穂、俺と付き合え」
「は?付き合う・・・どこに?今からじゃ遅くなっちゃうじゃん」
「今度は天然かよ・・・付き合うというのは、彼女になれということだ。わかったか鈍感瑞穂」
「は・・・はぁー?!あんた、彼女いたでしょうが。近所の女子高の子」
「3ヶ月前に別れた。瑞穂が俺のことを男として認識してないのは分かってたから、言い寄ってきた人間と付き合ってきただけだ。」
「あんた・・・サイテー」
「サイテーで結構。鈍すぎるお前が俺に目を向けるのを待ってた俺がバカだった。」
「は・・・?」
「とりあえず、お互いのメルアドは知ってるし友達としては認識されてるからな。・・・あとは彼氏彼女になるだけか」
「えー、あんたみたいな俺様やだよー。私はもっと穏やかな人がいい」
「お前には俺がぴったりだ。俺にはお前がぴったり。・・・理想的だろう。失恋の傷を癒すには新しい恋が一番だからな・・・俺で手を打て。」
確かに孝一郎は嫌いじゃない・・・でも、私流されちゃっていいのか??
とはいえ、さっきの孝一郎の優しさにぐらっときてしまったのも事実。
「大事にするから、瑞穂。俺にしておけよ。」と孝一郎。
いつの間にか、片思いのまま失恋したことよりも、目の前の孝一郎にどう対応したもんだか考えてしまう私であった。
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