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第3章:古川 瑞穂の再起-1

図書委員長、片思いのまま失恋決定の巻

 私、古川 瑞穂は学校で化学を教えている橋野先生に憧れている。

 先生の授業はわかりやすくて楽しい。そして先生の立ち居振る舞いはいつもきちんとしている。

 メガネの先生もすてきだけど、ときどき見かけるメガネなしの顔もすてきだ。

 誰にもこの気持ちを言わないで、このまま卒業していくのは当たり前だと思っているけど・・・


 だからと言って・・・・神様。もしいるならあんまりだわ。

私はその日、参考書を見ようと駅に近い大きな本屋にいた。参考書も見たいけど、好きな作家の新刊もチェックしちゃお~と、うきうきしていた。

 土曜日の昼間は家族連れやカップルも多い。新刊はなかったけど、目当ての参考書を見つけた私は、カフェで一息つくことにした。窓際に座って、ぼんやり外を眺める。


 すると、そこを通り過ぎていくカップルの中に自分の知ってる顔を見つけた。

橋野先生・・・・隣にいるのは司書の藤村さん・・・・。二人は手をつなぎ楽しそうに話しながら歩いていく。そこにいるのは先生二人じゃなくて、男の人と女の人。

 そういえば、二人は泰斗高校で同じクラスだったと藤村さんが言っていた。女子ばっかりの図書委員会で蔵書の整理をしたりする日にはなぜか、必ず橋野先生が手伝いにきていた。

 そっかー、そういうことか。ちぇーっ。傷ついたわけじゃないけど、確実に私の心に苦いものが広がってゆく。


 学校で図書委員長を務めているため、私は司書の藤村さんとは結構仲がいい。図書委員は皆、仲がよくて放課後の当番も全然苦痛じゃないはずなのに、今日はなんだか足が重い。

 当番のため図書室に向かう途中で、ふと見た窓の外。私は同じ委員の2年の岡崎ちゃんが中庭にいるのを見つけた。彼女の横には、なぜか同じ2年生の早川くん。整いすぎた容姿で目立つ彼は最近、岡崎ちゃんに話しかけていることが多い。そういえば先週・・・と私は岡崎ちゃんの様子を思い出していた。


 委員会のミーティングのあと、私は岡崎ちゃんに、最近、早川くんと一緒のところをよく見かけるけど仲良くなったのかと、軽い気持ちで聞いてみた。

「最近、女の子からの視線が痛いんです・・・・うう。早川王子のせいです~」と岡崎ちゃんは委員会のミーティングのあとに机にうつ伏せになった。ちなみに早川王子とは岡崎ちゃんが彼につけたあだ名で、図書委員の間で定着している。

 瑞穂先輩、聞いてください~と、岡崎ちゃんは「王子はいっつもキラキラしてて、オタク女子の私にはまぶしすぎるんです。自分のことを知ってほしいってメールをくれるんですけど、私みたいな人間からすると何書いていいのか返信にも気を遣うんです~」とぼやきっぱなしだったっけ。


 今だって、話しかけてくる早川くんを、岡崎ちゃんは適当にあしらっている・・・ように見える。岡崎ちゃんは、友人を見つけたみたいで、早川くんに断りをいれて、さっさとそっちに向かったようだ。

岡崎ちゃんの話から察するに早川くんは彼女と「友達になるところから始めて、いずれは彼女に」って思ってんだろうなぁ。


「おい。なに庭をぼんやり見てんだ・・・なんだ、瑞穂も早川のファンかよ」

 横にきて話しかけてきたのは、この学校で生徒会長をしている平田 孝一郎。

「なんだ、孝一郎か。」橋野先生だったら、きっと土曜日に見た二人を思い出してしまう。

「なんだ、孝一郎か・・・なんて俺に対してそんな反応をするのはおまえくらいだ。瑞穂」

 孝一郎とは家が隣同士で、幼稚園からなぜか高校まで同じという腐れ縁。しかも、昔から何かというとこいつは私にからむんだ。

 外面は優しげな顔立ちで物腰もソフトなやつだけど、本性は俺様。会長になった時点で、たちまち独裁体制を整えた切れ者でもある。

「それで、お前はこんなところで何してる。今日は当番じゃないのか。」

「そうだ、当番!まったくあんたと話して、いらん時間を取っちゃったじゃない。じゃーね」と言い私は早足で図書室に向かった。

 後ろで孝一郎が「・・・・やっぱり瑞穂は鈍いよなあ」とつぶやいていたことを、私は知らない。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。


第3章は、図書委員長の古川さんが主役です。


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