番外編:クリスマスはどうすんの?-松尾 恵Ver.-
松尾恵と土屋信康の番外編です。
土屋くんから「クリスマスイブにデートしよう」とメールが入ったのは冬休みまであと10日、という頃だ。「恵ちゃん不足で、どうにかなりそう」とメールに書かれていたけど・・・私にどう反応しろというんだ。受験生だろう、土屋くん。
とはいえ、会いたいのは私も同じだから「楽しみにしてる」とだけ返信しておいた。
うふふふ。この間買ったワンピースを着よう。
学校の最寄り駅にあるモールのツリー前で待ち合わせをすることにした。
待ち合わせ時間より早く到着してしまった私は、待ち合わせ場所のツリーを見ていた。
見上げるほど大きいツリーは、たくさんのオーナメントとリボンで飾られて、まさに「ザ・クリスマス」。
「めーぐみちゃん」という声とともに後ろから手が伸びてきて私に抱き着いてきた。
「ちょっとっ!!こういうことを人前でしないでよっ!!」と私は土屋くんの手をはたいて、腕から抜けた。
「恵ちゃん。しどい・・・・恵ちゃん不足な俺にこの仕打ち・・・ううっ」
「だから、18歳の男がしてもかわいくないから。・・・手ならいいよ」
「うんっ」土屋先輩は、それはうれしそうに私と「恋人つなぎ」をした。
う。今日は我慢だ、私。恥ずかしいけど、後ろから抱きつかれるよりは100倍マシだ。
「恵ちゃん、どっか行きたいところある?」
「うーん・・・・そうだね。土屋くんは?」
「俺?俺は恵ちゃんに会えただけでいいや。もー、ずっと恵ちゃん不足でさー、もーどうなるかと」
「試験終わるまで、我慢してメールだけにしようって言ってたくせに・・・でも、私も会いたかった。」
たまには素直に思いを伝えなくちゃ。
土屋先輩は「うわあ・・・・恵ちゃんが、俺に会いたいって言ってくれたの初めてだよね。わー、うれしいなあ」と変に感激しているけど・・・私はそんなに普段、土屋くんに冷たいのか??
なんか釈然としないけど、まあ・・・・土屋くんがうれしそうだから、いっか。
「とりあえず、寒いから暖かいものでも飲もうか」と私たちはカフェに入ることにした。
カフェで一息ついたあと、本屋をのぞいたり雑貨屋をのぞいたりしているうちにすっかり暗くなってしまった。
ツリーがライトアップするらしく、ツリーの周りには人がたくさん集まってきていた。
「あれ・・・?瑞穂先輩かな」私は、自分の視線の先に瑞穂先輩を見かけた。
土屋くんも「ほんとだ。古川さん・・・・あ。孝一郎も一緒だ。まったく受験生なのに、何やってんだか。」
「・・・それは土屋くんも一緒でしょう」
向こうはこっちに気づいていないので、私たちは声をかけないでおくことにした。
「恵ちゃん、今日は遅くなっても平気?」先輩に耳元で言われて、ちょっとどきっとする。
「え?えーっと、9時くらいには帰ってくるようにって言われてるけど」
「そっか・・・・女の子だもんね。俺が送っていくから、もう少し一緒にいよう?」
「うん。いいよ・・・信康くん」お返しに耳元でささやいてみた。
「え。俺のこと、名前で呼んだ?今」
「・・・・呼んだよ。だって、彼氏、でしょう?」
「クリスマスって素晴らしいなあ・・・・」
私たち、一通りのことはとっくに二人で経験してるのに、いつまでも名字呼びもないかなあってずっと思ってた。だから、私なりのちょっとしたサプライズだ。
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恵にツンデレ疑惑が浮上。
次は番外編最終。司書の藤村さんの話です。