松尾 恵Ver.
恵と信康と花火。の巻
分割するのが難しく長文になります。ご了承ください。
うちのクラスで行なわれている「1人100円で泰斗の過去問を解いて合否判定をしてみよう大会」は、先着200名のイベントにしたのがよかったのか、始まる前から並んでる人もいて、予想外の盛り上がりを見せた。
本来のターゲットである中学生や在校生だけではなく、さまざまな年代の人たちが参加して頭をひねっていく。見事「合格」して喜んでいる人や「不合格」でも解説を熱心に読み込んでいる人が多い。
問題200枚もあっさりと終わってしまい、私のクラスは後夜祭“あとのまつり”まで、自由行動となった。
なぜかクラスの友人達はそろいもそろって彼氏と回ったり、先に行ってしまった。みんな、ひどすぎる・・・とちょっと思ったけど、1人もいいかもしれない。
図書室行ってカフェでまったりしようかな。自分の思いつきに気をよくした私は図書室に向かうことにした。
そこに前から土屋先輩がやってきた。私をみて「よかった。まだいたね」と安心したようだった。
「土屋くん、どうしたの?」
「どうしたのって・・・、一緒に回ろうと思って迎えにきたのに・・・・恵ちゃん、ひどい」泣きまねをするなよ・・・・もう。
「18の男がやっても、かわいくないですよ」
「うう・・・今日もするどいツッコミ」
「でも、どうしてうちのクラスが自由行動になったのを知ってるんですか?」
「だって、俺も過去問解いてたもん。みてみて~、見事、合格♪」と私に合格証を見せる先輩。
「あー、よかったですねえー」
「棒読みだよ、恵ちゃん」
「それで、問題解いて教室出たら、恵ちゃんのクラスの子が“さっきので200枚終わったから、自由行動だね~”って言ってるのが聞こえてさ。これはチャーンス!!って思ったの」
「土屋くん、化学ショーは?」
「俺の当番は昨日。今日は一日自由なの。さ、行くよ」
土屋先輩は、さりげなく私の手を取り歩き始めた。
「恵ちゃん、“あとのまつり”の花火、一緒に見ようよ。」ぶらぶら見て回っているときに、先輩から誘われた。
「いいよ。」
「どこで見る?」
「どこって、校庭でしょう?」
「え?違うよ。学校内で見ようよ。だって、学校ならどこで見てもいいのが決まりなんだから。」
「は?」
「理科室なんてどうかな。3階だし校庭近いし。俺、化学部部長だから、鍵あるし。よし、決まり。」
「校庭でいいのに」
「えー、俺は二人っきりで見たい。1年のときも2年のときも男ばっかりで花火見て、3年になって、やっと彼女と見る花火!!ね?片付け終わったら迎えに行くから、理科室で花火を見よう?」
私は、先輩に押し切られた。
迎えに来るというのを断って、私たちは理科室の前で待ち合わせをすることにした。
ほとんどの生徒が校庭に行ってしまい、学校の内部はとても静かだ。
まるで学校に私たちしかいないみたい。
私たちは、電気をつけないで黙って校庭を見ていた。花火が光ると理科室の中も光る。
「わあ・・・・きれい。土屋くん、誘ってくれてありがと」
「うーん・・・そんなに楽しまれると・・・俺が恵ちゃんに何もできない」
「は。」
「恵ちゃん。」
「はい?」
「好きだよ」
先輩の顔が近づいてきて、私たちはそのまま軽いキスを何度も繰り返して、抱きしめられた。
「ほんとは、このままどっかに連れ出したいけど・・・・学校だしねえ。今はこれだけで我慢するね。」
もう、花火が目に入らなくなってしまった。聞こえるのは先輩の心臓の音だけだ。
パーンっと音がして、最後の花火が光った。
私たちは、手をつないで、時々キスをしながら“まつりのあと”を終えたのだった。
(後日談)
「めぐちゃん、文化祭のとき一人にしちゃってごめんね」と友人たちに謝られた。
「へ?まあ、ちょっとがっかりしたけど・・・皆予定があったんでしょう?」
「うん・・・でもね、実は土屋先輩に“どうしても恵ちゃんと一緒に回りたいから、どちらかの日を恵ちゃん1人にしてくれ”って頼まれたんだ。だから、在校生だけの日は私たち、一般公開日は先輩ってことになったの。ほんと、ごめん!!」
「ほおー・・・そういうこと」
「め、めぐちゃん。ダメだよ。先輩怒っちゃあ!!」
「怒らないよ・・・・土屋くんらしいって思っただけ」
読了ありがとうございました。
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チャラチャラ信康をいつも斬っている恵ですが、ラブラブなんですよ~というのを書いてみました。