-4.武内 苑子Ver.
苑子、準備に没頭する。の巻
昨年は受験の下見を兼ねて遊びに来ていた「泰斗祭」。今年はお客様をもてなす側だ。
私のクラスはお化け屋敷をすることになり、怖がりの私は早くもちょっとビビリ気味だ。
私と樹理ちゃんはお化けの衣装を作ったり、脅かす小道具を作る係になった。
「私、お化け役やりたかったなあ~」と樹理ちゃんはクラスで集めた使い古しのTシャツにスプレー血のりをつけながら言う。
「私は、この係りでよかったよ。怖いの苦手だもん」私は脅かす小道具として空気砲に入れる紙ふぶきを作っている。他にも首マネキンに胴体をつけたり、お墓を作ったり。昼間に見ると怖くないのに、どうして暗闇で見ると怖いんだろうか。
「そういえば、苑子は昔からお化け屋敷だめだよね~。お兄さんたちの後ろから離れなくてね」
「う・・・だって。本当に怖かったんだもん。」
小さい頃は、お化けが苑子をさらっちゃうぞ、とか扉の後ろで見てるぞ、とか言って聡太お兄ちゃんが、私を泣かせて伊織お兄ちゃんに怒られるというパターンが出来上がっていた。
今はさすがに泣いたりしないけど、やっぱり心霊写真とか(最近は動画らしい)、怪談話はやっぱり苦手だ。
「遠山、武内。そっちの準備は進んでる?」と、発案者の高野くんが声をかけてきた。
私は以前ほどじゃないけど、いまだに同年代の男の子が苦手なので基本クラスでも男の子と用件以外でしゃべらない。
なのに、この高野くんは、何かと樹理ちゃんと私に話しかけてくるんだ。もしかして、樹理ちゃんのこと好きなのかなあ。高野くん悪い人じゃなさそうだから、そうだったら協力しちゃうのに。
「こっちは順調だよ。高野くんのほうは進んでる?」
高野くんは暗幕などの材料調達係だ。
「ばっちり。暗幕もそろえたし、スーパーからダンボールももらってきた。恐怖音楽のCDも借りてきたよ。あとは前日にセッティングするだけ」
「お~、さすが発案者。行動がはやいね」
「うわー、この血のりは迫力あるね~。うまいなー、遠山」
「褒めても何もでないわよ」
会話は樹理ちゃんにまかせて、私はひたすら紙ふぶきを作ることに没頭した。樹理ちゃんは、誰とでも気軽に会話が出来るので、人見知りな私はうらやましい。
だから、樹理ちゃんが席を外したことや、高野くんが目の前にいても、全然気づきもしなかった。
「・・・けうち、武内」
なーんか私が呼ばれてるなあ~と思ってふと顔をあげると、すぐ目の前に高野くんの顔が。
「へ・・・わ、わぁ!」私はびっくりして思わず大きな声が。
一気にクラス中の注目を浴びてしまった・・・・ううう、恥ずかしい。
「ごめん!びっくりした?」
「あ、ううん。こっちこそ、ごめんね。紙ふぶき作るのに没頭しちゃって。えっと、高野くん、何か用事?」
「え?あ・・・用事。用事ね。えーっと、なんだっけ。忘れちゃったから、いいや」高野くんはちょっと焦り気味に言って、そそくさと離れていった。
高野くんは友達になんか言われたらしく、赤くなっている。
「高野くん、用事ってなんだったのかな。いきなり忘れちゃうって変なの。」
「苑子・・・・ま、いいか。」戻ってきた樹理ちゃんは何かを悟ったように私の肩をたたく。
「なによう~。気になるじゃない」
「気にすることじゃないし・・・・高野くんじゃ、お兄さんたち納得しないだろうし」
「なんで、うちのお兄ちゃんたちが出てくるの?」
「んー?なんとなく。さ、苑子、残り仕上げちゃお。明日はお互い部活と委員会の準備があるんだからさ」
確かに、明日は図書委員会で準備がある。さっきの高野くんのこと気にしてるヒマはないのだ。
私はまた、紙ふぶき作成に没頭し始めた。
読了ありがとうございました。
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苑子の周辺に別の男の子が出現です。
本人はスルーしてますが。