-2.松尾 恵Ver.
恵、土屋先輩の別の顔を垣間見る。の巻
2学期の中間テストが終わり、学校は「泰斗祭」一色になった。
今年、私のクラスは泰斗高校の過去の受験問題を参加者に解答してもらい、合否判定をするイベントを行なうことになった。参加者にはもれなく先生方の解説がついた模範解答をプレゼント。
私たちのクラスはとくに装飾もせず、机を並べ問題をコピーするしかないため、クラス以外でイベントを行なう生徒は、そちら優先でOKということになった。
図書委員会は昨年好評だった「読書カフェ」をすることになり、放課後ミーティングで瑞穂先輩が今年の段取りを発表した。今年の内装は「昭和モダン」で決定している。
「紅茶はいつものように紙コップ。お菓子も調理部の皆様で決定済み。今年も演劇部からインテリア用の小道具を借ります。会場の仕上げは図書委員が引き受ける、ということでOKだね。」
瑞穂先輩は口調はのんびりしてるけど、行動はてきぱきしている。あっという間に各々の役割分担も揉めることなくすんなり決まった。
「じゃあ、調理部の皆さんとのお菓子の打ち合わせは私がするね。他の図書委員は内装のほうをお願いします。平田会長も時間が空いたら手伝ってくれるらしいから、今年も助かるね」
瑞穂先輩がにっこりと笑って、ミーティングが終了した。
次の日、図書室も文化祭が近づくと閉館になるため、委員総出で放課後にジャージを着てテーブルを片付け始める。すると、「「恵ちゃん♪手伝いにきたよ~」と声が。振り向くと土屋先輩がジャージを着てニコニコして立っていた。
「土屋くん・・・化学部の準備は?」
最近、ようやく私は土屋先輩を「土屋くん」と呼び、敬語を使わないことに慣れてきた。そうしないと、「恵ちゃんが、つれない~」とすねるからだ。
「3年は、お店とか出さないからねえ。ヒマなのよ。化学部も俺は化学ショーの司会だし~」
「出演者と打ち合わせとかしないの?」
「出し物の選別とリハーサルが優先だよ。司会者の打ち合わせはそのあと。今日はヒマだからね。日ごろ、うちの顧問もお世話になってる図書委員会を手伝いに来たわけ。」
「・・・どうもありがとう。じゃあ、お手伝いお願いします。」
先輩の都合の良すぎる言動を怪しみつつも、人手があったほうが早く終わるのも事実なので、私は割り切って、先輩に作業を手伝ってもらうことにした。
作業があらかた終わった頃、化学部の人が現れて「すみません部長、ちょっと進行でもめてしまって・・・場を収められるのは部長だけなんです!休みなのは分かってるんですけど、化学部に顔出してください。お願いします」と土屋先輩に頼み込んできた。
土屋先輩は「もめてるんじゃ、仲裁するしかねえよな」と後輩とともに化学部に戻っていった。
ふうん、言動はチャラチャラしてるけどちゃんと「部長」なんだ。私は、自分の前にいるときとは違う土屋先輩の様子を垣間見ることが出来たのが、なんだか嬉しかった。
その様子を見ていた瑞穂先輩から「うふふ。めぐちゃん、土屋くんの違う一面を見てドキドキしちゃった?」とからかわれたのは言うまでもない。
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恵ちゃん視線の準備編です。