第2章:橋野 誠介の忍耐-1
涼乃が白衣萌えだと言っていた彼視点の巻
僕は泰斗高校・化学教師の橋野 誠介28歳、独身。通りかかった2年1組の教室で実に興味深いものを見た。
学校でも目立つ生徒の一人早川 圭吾と図書委員の岡崎 涼乃が二人だけで教室にいるのだ。
しかも、状況から察すると早川のほうが岡崎に告白したところらしい。
岡崎の顔が半ば呆然としたままなのは、いったいどういうことなのか。岡崎というのは図書委員のなかでも、いたってマイペースな性格で、あまり物事に動じるところを見たことないだけに逆に心配になってきた。告白じゃないのか?
「まだいたのか。もう帰りなさい」とりあえず、ドアを開けて声をかける。
「は、はいっ!」と岡崎はあせったようにあたふたと帰り支度を始めて慌てて出て行った。
早川のほうは部活に行くらしく、エナメルのでかいバッグをななめがけして、のんびりと出て行った。
数日後。
「・・・・というようなことがあったんだよ。藤村はどう思う?」ここは居酒屋。金曜日ということで店は混雑していた。
僕は、一人の女性と酒を飲んでいた。図書室に司書として勤めている藤村 恵理子。彼女と俺はかつて泰斗高校で同じクラスだった。二人とも母校に勤務しているわけだ。
「へえー。岡崎がねぇ。ま、委員会のときに気にかけて見てみるよ。」
僕がウーロン茶ジョッキを飲んでいる間に、藤村はビール→ハイボール→芋焼酎水割りに突入している。顔は赤くならないし、状態も変わらない・・・・こいつはザルだ。
同じクラスのときは、お互い気に留めることもなく卒業したのだが、大学卒業時のクラス会で再会したときにお互い泰斗高校に勤めることが判明して、それいらい二人で食事をしたりするようになった。
それにしても、高校のときはおとなしそうな外見と内気な性格で目立たなかった藤村。再会したときには「豪快な男前」に変化していたのには驚いた。藤村いわく「高校のときは内気でもよかった。大学に入ったら自分で動かないといけないと分かったから、頑張ってる」だけで、本質は変わっていないらしい。僕は、今の藤村のほうが好きだから、どっちでもいいけど・・・
そう。僕は藤村に片思いをしている。藤村も俺の誘いを断らないので嫌いではないと思いたい。が、僕がほのめかしても、こいつは全然気づきもしない。
「しかし、早川か~。岡崎、押し切られたのかもね。だって、岡崎の好みと真逆だもん、早川」
藤村は岡崎と好きな作家が同じとかで気が合うらしく、わりと色々話すらしい。教師とは違うから友達感覚で話せるんじゃないの?という藤村の分析だ。
「は?なんで藤村がそんなこと知ってるのさ」
「図書委員会のガールズトークで、“男性のどんな服装に萌えか”って話になってさ~。へっへっへ。岡崎の好みはずばり、白衣メガネ理系男子。橋野なんかは「どストライク」でしょうね。橋野先生の白衣姿はいいです~とか言ってたもん。私も白衣メガネ理系男子は嫌いじゃないからさ、気持ちは分かるわね。橋野は白衣似合うもん」
なんつー会話をしてるんだ。・・・・しかも、自分をちゃっかり「ガールズ」に入れてるあたり、つっこんだほうがいいのか?
それにしても、普段はこういうことを言う人間じゃない。もしかして、酔っ払ってるのか。
「藤村、酔ってるのか?」
「はぁああああ?酔ってるわけないじゃ~~~ん。はしのったらなに言ってんだか」
・・・・間違いない。よっぱらい誕生だ。
「おい、出るぞ。送る」
「は~~い。わっかりました~。さいふ~さいふ~~っと」
「あとで割り勘してくれればいいから」
「そお?わっるいわねぇ~♪」すでに出来上がりつつある藤村を連れて僕は店を出たのだった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
この彼と彼女の話でR15を書きたいと思ってます。
といっても、この章ではありません。
もうすこし後になってから予定しております。