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苑子の幸せな時間。の巻
びっくりした。お兄ちゃんの友達って、内藤さんだったんだ。
しかも、お兄ちゃんのあの顔。絶対、私が内藤さんを気にしてるって分かってる顔だよ~。
「とりあえず・・・残りのケーキをスライスしよ・・・・」両親の分、樹理ちゃんにあげる分、図書委員会で食べる分・・・そうだ、内藤さんにあげたら、食べてくれるかな。
もらってくれるかも分からないけど、私は内藤さんの分として2切れを包装袋に入れた。
いつの間にか、居間でうとうとしていた私は「苑子」とお兄ちゃんに起こされた。
「ん?なに?」
「俺、内藤と外でご飯食べてくるけど、お前も一緒に行く?」
「へっ・・・・わ、わたしはいいや。家にあるもので適当に作るから」
お兄ちゃんと二人ならともかく、内藤さんと一緒なんて緊張して何も食べれないよう!!
「ふーん。まだそこまで馴染んでないのか」
「はい?」
「いや・・・なんでも。あ、俺着替えてくるかさ、内藤の相手しといてよ」
「え・・・・ちょっと、そうくん!!」
私が戸惑っているうちに、内藤さんが居間にやってきていた。
「内藤さん・・・あの、ケーキはどうでしたか?」
「美味しかったです。武内さんは、お菓子作りが上手なんですね」
「ありがとうございます・・・あ、あのっ!これ、よかったらどうぞ!」私はありったけの勇気を出して内藤さん用に分けておいた袋を差し出した。
「あれ?これ・・・・」
「さっき、お出ししたケーキです。明日、友達と食べようかと多めに焼いたので・・・あのっ、」
「どうもありがとうございます」内藤さんは、ちょっと笑って受け取ってくれた。
しかし、ここから先の会話が続かない・・・・私も無口だけど、内藤さんも無口。そんな空気を破ったのは、もちろん聡太お兄ちゃんだった。
「わりー、待たせたな。内藤。・・・・と、お前何持ってんの?それ、さっきのケーキか?」
「先ほど妹さんにいただきました」
「ふーん。内藤が俺の妹とはいえ、女の子からプレゼントを受け取るなんて珍しい。いつもなら黙ってその場で返すのに・・・・へーえ。ほーお、苑子、よかったなあ」
「そうくん!何言ってるのよう!!内藤さん、困ってるじゃないの。ごめんなさい、内藤さん。バカな兄ですけど、これからも仲良くしてください」何考えてるのか知らないけど、恥ずかしい!!このバカ兄!!
「苑子・・・・兄ちゃんにバカとはなんだバカとは!!」
「なによう!!」
二人で言い争ってると、突然「ぷっ・・・」と笑い声がした。
見ると、内藤さんが「ぷっ・・・はははははっ」とお腹を抱えて大笑いしている。へー、内藤さんも大口あけて笑うんだ。
ひとしきり大笑いしたあとに、内藤さんは私たちを見て「す、すいません・・・・聡太先輩。妹さん、おとなしい人だと思っていましたけど・・・結構、言うんですね。聡太先輩にあんだけ食ってかかるのって、妹さんくらいですよね・・・」とちょっと涙目になって笑っている。
「内藤・・・お前、笑いすぎ。ま、いいや。じゃあ、苑子行ってくるから。なるべく早く帰ってくるけど、インターホンが鳴っても知らない人だったら、出ちゃだめだぞ」
「そうくん、私をいくつだと思ってるのよ・・・」
内藤さんは、また噴出しそうになってたけど、聡太お兄ちゃんを見て、下を向いてこらえている。
うううう・・・・今日はケーキを出すときも恥ずかしかったけど、後のほうがもっと恥ずかしい!
大笑いされちゃったし・・・・・でも、その大笑いで聡太お兄ちゃんとケンカにならずに、なんとなく仲直りできてよかったかも。
読了ありがとうございました。
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-3は聡太視点で、この後の話です。