第12章:武内 苑子の邂逅-1
聡太のサプライズ。の巻
「苑子、今度の日曜日に俺の友達が来るから、なんかお菓子焼いてくれないか?」
今日は金曜日。朝、顔を合わせた聡太お兄ちゃんが、いきなり頼んできた。
「日曜日に?・・・急だね」
「その日しかお互いの都合が合う日がなくてな。悪いっ!頼めないか?」聡太お兄ちゃんにおがまれてしまった。
日曜は何の用事もないから、家にいる。朝早く起きれば作れるから聡太お兄ちゃんの頼みを聞いて、恩を売っておくのもいいかもしれない。
「いいよ。なんか作るよ。」
「おお~~。ありがと。楽しみにしてるよ」聡太お兄ちゃんは笑顔になった。
うーん、何を作ろうかな。家にあるレシピから考える。こういうこと考えるのって楽しいから好き。
日曜日、両親は「二人でデートしてくるからね♪」と言い残し、出かけていった。
私はキャロットケーキを作り始めた。パウンドケーキ型で何本か作って、あした樹理ちゃんや図書委員会のミーティングで食べよう。
「おはよ~」と焼きあがった頃に聡太お兄ちゃんが顔を出した。
「おはよ~、そうくん。友達は何時ごろに来るの?」
「あー・・・確か午後。そうだ、苑子、悪いけど今日は部屋まで持ってきてくれない?」
「そうくんや、おりくんの友達が来ると私には顔を出すなっていつも言うくせに。変なの」
「今日は頼むよ~。後で勉強みてやるかさ~。お前、また数学詰まってんだろ?」
「・・・なんで知ってるのよ」
「昨日の夜、「わかんなーい」ってぶつぶつ言ってただろ。自分の部屋に入るときに聞こえたぞ」
私は、負けた。
お昼が過ぎ、インターホンが鳴った。「お、きたきた。苑子、お茶とお菓子よろしくな」と聡太お兄ちゃんが友達を迎えるために部屋を出て行った。こっちに聞こえない程度の声でなにか話して、二人は聡太お兄ちゃんの部屋に入っていった。
「そろそろ、持って行ってもいいかな」私は充分に冷ましたケーキと紅茶を持ってお兄ちゃんの部屋に向かった。
「そうくーん。ケーキ持ってきたよ」
「おー。入れよ、苑子」と言われたので、私は扉を開けた。
そこには、私服姿の内藤さんがいて私に「おじゃましてます」と頭を下げた。
私は、びっくりして聡太お兄ちゃんを見た。お兄ちゃんの顔は・・・まさに「してやったり」だった。
「こ、こんにちは」と挨拶をした私が、ケーキもお茶もこぼさずに置けたことは自分を褒めたい。
そのあとは、そそくさとお兄ちゃんの部屋を出て・・・居間で座り込んでしまった。
読了ありがとうございました。
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ちなみに苑子は聡太のことを「そうくん」、伊織のことを「おりくん」と呼んでます。