閑話: 早川 圭吾の決着
悪役王子。の巻
夏休み中に、俺はずっと好きだった涼乃と両思いになった。新学期からの学校生活は楽しくなること間違いなしだ。
しかし、俺には夏休み中に解決しておきたい懸念事項が一つある。
それは、夏休み前から俺に付きまとっている1年生の派手な女の子のことだった。俺は名前も忘れていたが涼乃から「桜井さん」だと教わった
どうやら、部活説明会のときに目をつけられたのか図書室でつかまったり、俺の部活帰りとかに出没して付きまとってくる。何度もはっきりと断りの文句を述べているけど、どうも彼女は俺が付き合っている女の子がいないのに、自分のことを断っていることが信じれないらしい。あの子は、相当自信家のようだ。
「圭吾、もてんなあ。あの子、1年の桜井さんだろ?」と同じテニス部の友人・高田に言われるのも、いい加減うっとうしい。
部活が終わり、わいわいと大人数で正門まで歩いていくと、夏休み中だというのに桜井さんが立っていた。
「テニス部の部活が終わる頃に、ここにいれば早川先輩に会えるかなと思って」と桜井さんは笑う。
ボーっとみてる奴もいるけど、俺には効果がないよ、桜井さん。いい加減、わかってほしいよなあ。
この子の自信家ぶりだと、俺の断り方一つで涼乃に嫌がらせするかもしれない。ここはひとつ、最低の男だと思わせるような断り方をしたほうがいいな。
「えーと、名前なんだっけ」
「ひっどーい、先輩。私、たくさん名前いったじゃないですかあ。桜井です。桜井 麗香」
「俺さあ、興味のない人間の名前、何度聞いても覚えなくてね。だから、何度来られても俺、あんたの存在、ぜったい覚えないから。」
桜井(もう呼び捨て)の顔色が変わった。テニス部員が大勢いるまえで邪険にされたのだ。今まで、その外見で断られたことがないんだろうな~。悪かったな。俺はどーでもいい人間には関心がないんだよ。
「おまえ・・・それはひどいのでは」と高田は口ではそう言うが、俺が困っていたのを高田はしっているので、それ以上は何も言わない。
「俺ね、ついこの間、かわいい彼女ができたから。俺に付きまとっても時間のムダだよ。」再度のダメ押し。
「彼女・・・って誰ですか?あの2年の地味で普通な人ですか」
失礼な。涼乃は俺にとっては特別な女の子だ。
「彼女の事を、あんたにとやかく言われる筋合いはないよ。不愉快。」
他のテニス部員たちは「先輩、ひどいっすよ~」とか「早川、言葉選んでやれよ~」とか言ってるが、俺が彼女に辟易しているのを知っているので、彼女の擁護をする人間がいない。
桜井はキッと俺をにらんで「わかりましたっ!!今まで時間の無駄でした!!」と言い捨てて走り去っていった。
「逆ギレで退場か。あっちが本性かな。」俺の心を読んだような高田の口ぶり。
「俺は、あの子が俺の視界から消えてくれれば、どうでもいい」ほんとに。
午後、涼乃と会ったときに「今日、何かいいことあったの?」と聞かれた。
「どうして?」
「だって、なんか悩み事が解決したって感じがするから」
「うん。確かに解決したことがあるんだ」
「へえ。よかったね」涼乃は、相手が話すまでは根掘り葉掘り聞いたりしない。俺も、自分のああいうブラックな部分は彼女に知られたくない。だから、今は彼女のこの性格でよかったと思った。
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早川くんにも、こんな一面が・・・という話にしてみたかったのですが、いかがでしたか?