閑話-2:武内 苑子(そのぽん)の観察
そのぽんは見た!の巻
夏休みが明けて、なんだか図書室に来る人が増えた気がする。
しかも、受付をちらちら見ている人が多い。
一緒にカウンター当番をしている2年の松尾 恵先輩に「なんか、ここのところ人が多いですよね」とこっそり聞いてみた。
恵先輩は、「あ~。それはね・・・」と私にあんまり口外しないようにと念押ししたうえで「涼乃と早川王子が付き合ってるのをききつけた人が涼乃を見に来てるんだよ」と教えてくれた。
涼乃先輩・・・いつの間に!!まじですか!!
「はあ・・・本当ですか。驚いちゃいました。」
「そのぽん、その口調はあんまり驚いてない感じに聞こえるって」
私は、なぜか図書委員会で「そのぽん」とあだ名がついた。あだ名をつけてくれたのは3年の古川先輩で、図書委員長をしている。
「それにしても、恵先輩。涼乃先輩、大丈夫でしょうか」
「何が?ああ、王子ファンからの嫌がらせとか?」
「そうです。よく恋愛小説とか少女マンガであるじゃないですか。校舎の裏へ呼び出しとか」
「あと、下駄箱の上履きを隠すとかね。あ、でもうちの高校上履きないもんね。ちっ。」
「めぐちゃんも、そのぽんも・・・人で遊んでるでしょ。めぐちゃん、“ちっ”って何よ、“ちっ”て。」とカウンターから声がかかる。
そこには涼乃先輩が立っていて、「ちょっといい?」と内側に入ってきた。
「涼乃。今日当番じゃないのに、どうしたの?」恵先輩が聞く。
「この時間に帰るといろんな人がこっち見てヒソヒソして嫌なんだよ。悪いけど裏作業手伝うから、しばらくいさせて~」
「私らはかまわないけど、藤村さんはなんだって?」
「一言“時の人だからね~。”って笑って許可してくれた。」
「藤村さんらしい言い方だね。じゃあ、裏作業よろしくっ。あのさ、王子にはメールしといたほうがいいんじゃないの?」恵先輩は、あっさり涼乃先輩に作業をお願いする。
「えー、なんでよ。一緒に帰るわけじゃないし。」と不思議そうな涼乃先輩。
「何言ってるのよ。閉館までここにいるとしたら部活終わる時間と重なるよ?ついでに王子と一緒に帰ればいいのに。ねえ、そのぽんもそう思うよね?」
ひゃー、なんでここで私にふるんですかーっ。恵先輩は彼氏がいらっしゃるのでそう思うかもしれませんが、私は彼氏はいたことないので、わかりませんよおっ。でも、ここで求められてる返事は「そうですよ」だろな・・・。
私は「そ、そうですよ。涼乃先輩。恵先輩の言うとおりです」と答えた。
涼乃先輩は「ふーん。二人がそう言うなら、メールするかあ。そういうもんかね~」とぶちぶち言いながら、メールをするために裏へひっこんだ。
それにしても王子へ連絡するのを面倒くさがるのって、きっと、この学校で涼乃先輩だけだと思う・・・。
その後、閉館時間に部活帰りの早川先輩がやってきて、さらうように涼乃先輩と一緒に帰っていったのは言うまでもない。
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閑話その2:1年生の図書委員、武内 苑子視点です。
第10章は、彼女の話です。
じれじれ初恋ものにしたいのですが、どうなることやら。