閑話-1:川田 唯の観察
唯ちゃんは見た!の巻
夏休みが明けた9月。私の所属する2年1組にも、ちょっとざわつく出来事があった。まあ、私は知っていたので驚くほどのことじゃなかったんだけどね。
“2年1組の早川圭吾に彼女が出来た。相手は同じ2年1組の岡崎涼乃。”この出来事がもたらしたのは、1組をわざわざ覗きにくるギャラリーの増加とクラスの団結だった。
1組の人間も早川くんが涼乃を名前呼びしだした当初こそ驚いたし、女子は涼乃に対しての嫉妬もあったと思う。だけど、そのあとの早川くんの様子と、名前で彼を呼ぶものの早川くんを淡々とあしらう涼乃を見ているうちに、早川くんへの同情票が集まったのか『早く、まとまってくれ』と周囲の空気がなっていった。
そして、今回めでたく付き合うことになったと分かったときにはクラス中が暖かい視線を二人に送ったのだった。
めでたく付き合っている二人だけど、嬉しそうな早川くんに対して涼乃はたいして変わっていない。 お昼だって、私や女子たちと食べるし、二人で話していても甘い雰囲気が皆無だ。
「涼乃ってさあ、あんまり変わらないよね」お昼を食べているときに私はついつい彼女に聞いてしまう。
「はぁ?」訳がわからん、という顔をする涼乃。
「ほらー、よく付き合うことになるとあからさまに校内でべったべたする人たちとかいるじゃん。そういうの、涼乃と早川にはないなあ~と思って。」
涼乃は食べていた卵焼きがのどに詰まったらしく、急にむせだしたため私はあわてて涼乃にお茶を差し出した。
「唯ちゃん、何を突然・・・ゲホッ」咳き込んで涙目の涼乃。
「いやー、あまりに涼乃が淡々としてるもんだから、ちゃんと早川と付き合ってるのを認識してるのかと心配に。」
「あーのーねー。そりゃあ私は鈍いけど・・・ちゃんと、認識してるよ・・・」涼乃は最後のほうは恥ずかしいのか声が小さくなっている。
私はどんどん赤くなっていく涼乃を見て思わず、かわいーと頭をなでてしまった。
その後、私は早川くんに「涼乃を泣かしたら、承知しないからね」とこっそり釘をさした。すると、早川くんから真面目な顔で「川田さんに頼みがあるんだ。涼乃が何か嫌がらせされたら教えてほしい。」とお願いされてしまった。
早川くん・・・・それを知ってどうする気?私の疑問が顔に出ていたらしく「川田さん。涼乃は絶対、俺にそういうこと言わないでしょ。俺は涼乃に“地味で平和な高校生活”を送ってほしいだけだからさ。協力してよ」とにこやかに言われてしまったのである。
私はなんだか逆らえずにうなずいてしまった。
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閑話その1:涼乃の親友で調理部の川田 唯の視点です。
いちおう、シリーズ化してるので時期はいつになるかわかりませんが
「図書委員会」編のあとは「調理部」編を予定しております。
そのときに、唯の話を入れようと思っております。




