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王子、涼乃のモヤモヤにニヤニヤの巻。
いつの間にか閉館時間になったらしく藤村さんが呼びに来るまで、私は書庫の整理に没頭していた。
「岡崎。閉館時間よ。」
「はい。すみません、1/4くらいしかできませんでした。」
「それだけできれば上出来よ。あとは重そうなのがあるから、橋野先生がヒマな時間に合わせて委員みんなで整理しましょ。」
私は、橋野先生と聞いて、どうしても聞きたかったことがあるので藤村さんに聞いてみた。
「藤村さん」
「はい?」
「橋野先生と付き合ってるってほんとうですか?」
「は・・・?(ゴン)うぉ~~~いてぇ~~」藤村さんはどうやら箱に足の小指をぶつけたらしい。
「藤村さん、動揺しすぎ・・・・」
「え、なんで?どうして?」
「図書委員は全員知ってます」
「どこで見られたんだか・・・・」
「お似合いだと思います」
「生徒にそういうことを言われる日がくるとは・・・・なーんか年取った気分・・・でも、内緒にしてね?」
「大丈夫です。図書委員はみんな口堅いです」
「それは・・・ありがとね。」赤くなったり青くなったりした藤村さんは、失礼だけどとてもかわいかった。
施錠した藤村さんと別れて私は正門へと急ぐ。早川くんは桜井さんと帰ったのかなあ・・・・そう思うと、私は足取りが重い。
「涼乃」と前から走ってくるのは、早川くんだ。おや?一人だよ。
「圭吾くん・・・・あれ、帰ったんじゃなかったの?」
「涼乃と帰ろうと思って待ってた。今日は、途中でカウンターからいなくなってたよね。どうしたの?」
「藤村さんに頼まれて、書庫の整理をしてたの。つい没頭しちゃって・・・待たせたのならごめんね」
「そんな待ってないから、大丈夫。そういえば、今日は司書の藤村さんとカウンターにいた1年生の視線が冷たかったんだけど・・・なんでかな」
・・・・・藤村さん&そのぽん!!あからさまな扱いをしすぎ!!私は「さあ、わかんないや」と知らないふりをした。
ところで、さっきから早川くんから甘ったるい香りがする。・・・・面白くない。
「なんか早川くんから、甘い匂いがするね。」
とたんに早川くんが、眉をひそめる。王子は眉をひそめようが、唇とがらせようが(今はとがらせてないけど)イケメンだな。
「今日、図書室に向かっているときに、女の子がいきなり現れたんだよ。
自分に自信があるんだろうな~、どうやら俺と涼乃の事を知っているけど“あきらめませんから”って言われちゃったよ。俺としてはあきらめてほしい」
どうやら、桜井さんとやらは、なかなかきっつい人物のようだ。あとで、そのぽんに聞いてみよ。
その前に、早川くん・・・私と早川くんの間には「友達」しかありませんが。
「桜井さんって、すごいね~」と私は思わず彼女の名前を出してしまう。
「涼乃、なんで名前知ってるの?」
「え、えーと。ちょうど圭吾くんが来たときに私もカウンターにいたので・・・・一緒にカウンターにいた武内さんと同じクラスらしくて。私と違うなーと思ってみてた。」
「でも、俺がカウンターに行ったときは、いなかったよね」
「あのあと、すぐに藤村さんから書庫整理を頼まれたから」
「見てたなら、助けてくれてもよかったのに」
「えー。だってなんかモヤモヤしちゃって」
「モヤモヤ?涼乃があの光景をみてモヤモヤしたの?」早川くんが、こっちを見て不思議そうな顔をしたあと、ちょっと嬉しそうな顔になった。
・・・私、今、何言った・・・・?二人を見てモヤモヤ→そのあとすぐに閉館まで書庫整理→早川くんから香る甘ったるい匂いが面白くない・・・私、焼きもち??うそーっ!
「そっかー、涼乃やきもち焼いてくれたんだ~。うわー、ここまで長かったなぁ~♪」
たちまち上機嫌になる早川くん。
「ちがうよっ!ちょっと気になっただけ!!」
自分の失言を取り繕うことに必死の私。
私は瑞穂先輩の“早川王子はクモで岡崎ちゃんは餌の蝶”という言葉を思い出していた・・・・。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
第6章はこれで終わりです。涼乃の気持ちに若干の変化が現れ始めました。
第7章は大人の二人です。
ちょっとだけR15風味が登場です。
せっかくR15つけたので、生かさないと。