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孝一郎は瑞穂が大切の巻
きっかり15分後、俺は瑞穂の家のインターホンを鳴らした。瑞穂の応対する声がした。
「俺。準備できたか」
「うん。今開けるよ」瑞穂はドアを開けて外に出てきた。
「どこか行きたいところはあるか」
「んー。特に・・・あ、噴水のある公園行きたい。天気いいし暖かいし。」
歩いて10分くらいのところに公園があって、そこはちょっとした噴水や、たくさんのベンチがありちょっと散歩するのにちょうどいい広さなのだ。
「そうだな。途中で飲み物でも買って公園でのんびりするか」
ほんとは、ここで手でもつなぎたいところだけど・・・・こいつ、動揺すると長引くからなあ・・・ムリか。
暖かいせいか、公園には結構人がいる。俺はコーヒー、瑞穂はカフェラテを買ってベンチの一つに座った。
「図書委員の引継ぎ始めるのはいつだ」
「文化祭終わってからかな。生徒会は?」
「会長が出るやつが全部終わってからだから・・・こっちも文化祭のあとだな。」
「文化祭か~。」
「今年、どうするんだ?」
「調理部と合同でやった読書カフェが好評だったから、今年もやろうってハセちゃんと話してるの」
ハセちゃんというのは、瑞穂の親友で調理部部長の長谷川 志保のことだ。のんびりした瑞穂に対して、しっかり&ちゃっかり者の長谷川が部活の予算委員会で希望額をもぎ取っていく手腕は豪腕の一言に尽きる。
「読書カフェに今年も来てよね。で、面白いと思った本を教えてちょうだい。“生徒会長も感動の1冊”とか言ってコーナーに飾るから」
「・・・・最近、そのコーナーに“早川くんも一気読み”とかコピーのついた本が置いてないか?」
「岡崎ちゃんが、見事に彼を口説き落としてねえ。おかげで、その本の貸出率がものすごくって。」
その本を読んで面白かった人が他の本を借りていくパターンが出来上がってね、活性化してるよお。と暢気に笑ってる瑞穂。
「岡崎ちゃんといえば、 “瑞穂先輩は生徒会長のことを普通に名前で呼んで噂になったりしないんですか?”って聞かれちゃったよ。そういえば、私たちお互い名前呼びだよね~」瑞穂はすっかり岡崎さんの相談役になっているらしい。
「そうだな。でも、今さら苗字でよぶのも気味悪くないか?」
「そうだよね。何より、私と孝一郎じゃ噂にもならないよ」
「当たり前だ。俺が潰してきたからな。」
「はっ?」
「実際、1年のときにお前と俺がそういう噂になりかけたことがあった。だけど、お前はそれを知ったら間違いなく、俺を避ける。噂というのは、逆をたどっていけば大元にたどり着くからな。あらゆる伝手で大元を見つけて、そいつをあからさまに潰しておいた。1年の頃から生徒会にはいっていてよかったことの一つだな」
瑞穂を見ると驚いて声も出ないらしい。
「俺がそれだけのことをするってのは瑞穂との関係を大事にしたいからだ・・・だから、どうしてこの2週間俺を避ける?理由を教えろ」
「・・・・避けてなんかいないよ。孝一郎の気のせい~」
「お前のその“気のせい”の言い方は、ごまかすときの言い方だよな。」
グッと詰まる瑞穂を見て、思わず笑いが出てしまう。まったく、何年瑞穂のそばにいたと思ってる?可愛すぎ。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ものの言い方で、瑞穂がごまかしてるか分かる孝一郎って、どんだけ瑞穂溺愛なんでしょうか。
自分で書いててびっくり。