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王子、涼乃に翻弄されるの巻
今日は部活がないので、俺は放課後に図書室に行ってみることにした。話しかけるチャンスがあるかもしれないじゃないか。
図書室に入ってみると、そこは静かで落ち着いた空間だった。大きいテーブルが並べてあり、そこで課題を済ませたり読書をしたり、みんな思い思いに静かに過ごしている。
カウンターを見ると、司書の人だろうか、髪の毛をくるりとまとめてアップにしている人と岡崎さんが座っている。書棚に戻す本がある程度たまったらしく岡崎さんが席をたち、ワゴンに本を並べ始めた。もしかして、話しかけるチャンス！！
「岡崎さん」後ろから声をかける。
「！？」とちょっとびくっとした彼女は振り返って俺を見て「なんだ・・・早川くんか」と安堵していた。
「これから本を戻しに行くの？」
「そう。早川くんも手伝う～？なんてね」図書室は彼女のテリトリーなのか、いつもより俺と会話をしていても気楽そうだ。
「いいよ。重そうな本もあるし、手伝うよ」
「えー、いいよ。そういえば私、早川くんを図書館でみたことないや。本を借りるなら学生証が必要だよ。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「そっか。じゃあ今日覚えたね。よかった。」と岡崎さんは笑う。
図書室に来たことがないということで、こんなに恥ずかしく思ったことが今まであっただろうか。いや、ない。
「これからちょくちょく来ようかな。だから岡崎さんの当番の日を教えてくれると嬉しいな」
「部活さぼると、部長に怒られるよ。そうだ、来た記念に何か読んでいったら？で、それを“早川くんも感動”とか“早川くんも納得の面白さ”ってオススメ図書にしちゃうからさ」
「それって、捏造じゃ・・・」
「本当に読んで感動したり、面白いと思えば捏造じゃないもーん。だから、何か読んで面白かったら教えてよ。藤村さんに言って宣伝コーナーに入れちゃうからさ。藤村さんも、他の委員も喜ぶ～♪」
「俺は、図書委員会の宣伝担当かよ」
「ぷっ。橋野先生みたいなこと言う～」・・・そういえば、オススメ図書コーナーに“化学の橋野先生も感涙”とかコピーがついてる本があったな。・・・・こういう仕組みだったのか・・・・
どうせ家に帰ってもランニングしたあと勉強だけだし。息抜きに何か読んでいくかな。それに閉館までいれば一緒に帰れるかもしれない・・・。
「じゃあ、閉館まで本を読んでるから、俺と一緒に帰ろう？その代わり読んだ本を宣伝コーナーに入れていいからさ。どう？」
岡崎さんは一瞬固まったが、ぷっと笑って「委員会活動に協力してくれる人を邪険にはできないな。いいよ、一緒に帰ろう。ただし、駅までだよ。」やんわり釘をさすことを忘れない彼女は手ごわい。
「早川くんは、どんなジャンルが好きなの？」
「うーん。なんせ部活で帰ったあとに課題したりするのと眠くて。テレビもろくに見てない」
「じゃあ、前に見たドラマで好きだったものとかあった？」
「あ。あれ面白かったな。物理学者が事件を解決するドラマ」
「ああ～。あれはよかったよね。主役の人の白衣＆メガネ姿、たまらなかったよ～。“実に面白い”とか“意味がわからない”とか言われたい～ってＴＶの前で思ってたもん。ストーリーも面白かったし。でも最終回がいささか力技に走ってたのが残念だったよ」
・・・さすが岡崎さん。まずは白衣とメガネなのか。
「だったら、ドラマの原作を読んでみたらどうかな。読みやすいからサクサクいけると思うよ。ちょっとドラマと違うところもあるけど、楽しめると思う。ちょうど返却されてきたから、どうぞ。」と彼女は俺に本を差し出した。
「へえ。じゃあ・・・読んでみようかな。学生証があれば借りられるんだよね」
「そうだよ。じゃあ、またあとでね」と彼女は返却ワゴンを押して行ってしまった。
はっ！俺、手伝うって言ってたはずなのに、うまくかわされたのか？？
読了ありがとうございました。
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涼乃が熱く語っていたドラマは、ピンと来た方もいらっしゃると思いますが、月○の○リ○オです。もともとイケメンでいい声のあのお方が、あんなに白衣にメガネ＆スーツが似合うなんてっ！！原作も読んだ上に、映画まで見に行っちゃったじゃないか！！
涼乃同様「意味が分からない」とか「実におもしろい」とか言われたい～と思っていた作者なのでした。
