三店方式
町外れにある朽ちた石窟寺院から帰還した冒険者は、
「また拾っちまった」
剣を手に、ため息をついた。
この間、持ち帰った剣を盗品呼ばわりされたばかりである。
「とりあえず、組合に相談してみるか」
冒険者は剣を上着に隠し、コソコソと冒険者ギルドへ向かった。
大通りに面した古い建物が冒険者ギルドである。さっそく木戸を押して中に入った。
掲示板の前でモヒカンや酔っ払いがたむろしている。それらを避けて受付へ。
「あのー、ダンジョンでこれ手に入れたんですけど」
冒険者が受付でちらり剣をみせる。
と、モヒカンや酔っ払いらが一斉に視線を向ける。
「あー、そうなんですねえ」
受付の女性はあごに人差し指をあて、とぼけた顔で、
「えっと。皆さん、あちらから出て左の方に行かれます」
裏口を指さす。
「は?」
「あっちです。あっち」
シッシッと冒険者は追い払われてしまった。
「なんなんだよ」
冒険者はひとまず指示通り東へ。
薄暗い小道を少し行ったところで広場に出た。
そこには武器、防具、薬、食糧、果ては傭兵まで、いろんな店が軒を連ねている。
冒険者がキョロキョロしながら歩いていると、
「ニイチャン。こっちこっち」
怪しげな店の店主が手招きする。
「なにか用ですか?」
「ダンジョン、行ってきたんだろ? ほら、早く出しな」
冒険者は剣をひったくられた。
「ちょっと、なにするんですか!」
「鑑定するから少し待ちな」
そう言って店主は片眼鏡でじっと剣を検める。しばらくして、
「はあ~~~」
ガッカリした様子でため息をついた。
「大事に抱えてるから、どんな逸品かと思いきや、ただの鉄の剣じゃねえか!」
店主はふところからコインをふたつ取り出し、机に投げた。
「銀貨2枚」
「へ?」
「だから、銀貨2枚で買い取ってやるって言ってんの!」
「いや、誰も売るなんて言ってませんよ。というか、これなんですか?」
冒険者はそのコインをひとつ手にとる。
表に1とあり、裏には商人ギルドのマークがある。
「おや、ニイチャン初めてか?」
店主はあらたまり、
「ここは交換所。ありとあらゆる品物をコインと交換できるお店だ。そのコインは商人ギルドが相応の値段で買い取ってくれるぜ」
じゃーんとお店を紹介した。
板を打ち付けただけの露店に、武器や防具、変な壺に、毛皮などが並んでいる。
冒険者はポンっと手を打ち、
「そういうことか。だったらコインじゃなくて、ふつうに銀貨で買い取ってくれないか」
コインを突き返した。
愛想よくしていた店主の顔が途端に曇る。
「だったら正規の店に持っていきな。銀貨3枚くらいで買い取ってくれるだろうぜ」
「じゃあそうする」
冒険者は去ろうとしたが、店主に袖を掴まれた。
「なんだよ?」
「ただし、それはあくまで正規品だったらの話だ。もし誰かの遺失物だったりしたら、ちょいと面倒なことになるぜ」
「いや、これはダンジョンの宝箱に入ってたやつで……」
「誰がそれを証明するんだ?」
「それは……」
折り悪く衛兵が広場にあらわれた。
冒険者の顔が曇る。
「初回サービスってことで銀貨3枚におまけしてやるぜ」
店主はすきっ歯をみせてにっこり笑い、その手にコインを握らせた。
ここは命を賭けてダンジョンへ挑み、一攫千金を夢見る冒険者の町。
そして、そんな彼らを相手に今日も商売に勤しむ者たちがいる。




