四天王
冒険者ギルドの会議室で五人の冒険者が円卓を囲っている。
「本日お集まりいただいたのはほかでもありません。我々”南大陸冒険者四天王”についてです」
そのうちのひとりが両肘を卓に置き、手を組んで言う。
「ご承知のとおり我々は長年にわたり大きな懸案を抱えております。本日はこれを解消したく思います」
「えー。なんかあったっけ?」
斜め向かいに座るギャルが頬杖をつく。
「有り体に言えば四天王なのに五人いることです」
「えー、別に良くない?」
「良くないわい!」
老いた冒険者が声を荒げる。
「わしは”南の知者”と呼ばれておるが『知者のくせに数も数えられぬ』と、北の冒険者どもに馬鹿にされておる。ゆゆしき事態じゃ!」
「じゃあ、五天王とか、名前変えちゃえば?」
ギャルは眉をひそめ、うっとうしそうにする。
「”南大陸冒険者四天王”の名前は売れています。改名すれば混乱をもたらすでしょう」
「そうじゃ。これは名前だけの問題ではない。もし依頼主が『四天王だから四人分しか報酬を用意してない』と言い出したらどうする? ひとりあぶれるぞ」
老いた冒険者の一言で、場がピリッと引き締まる。
「それはまずくない? 誰か抜けてよ」
四天王は互いに探るような視線を送り合う。
「ここは若いもんから抜けるべきじゃな」
「投票で決めてみては?」
「弱い奴が抜けるべきだ!」
ムキムキの冒険者が丸太のような腕を見せつける。
「間違いなくアンタが一番頭弱いけどね」
「なんだと!」
ギャルとムキムキが睨み合う。と、
「四の五の言わず、じゃんけんで決めたらいいじゃねえか! (≧▽≦)/」
鎧の男が大声で言った。場がシーンとする。
進行役がコホンと咳払いし、
「我々が争っても得をするのは魔物だけです」
「そうじゃな」「そうね」「そうだな」
場を収める。
「私は当番制を提案します。曜日ごとに四天王を持ち回りしてはどうでしょう」
「えー、そのほうが混乱しそうだけど」
「非番の日は四天王を名乗れなくなるのかよ」
「当番の日を待っておったら、ぽっくり逝ってしまいそうじゃ」
非難轟々である。
「お、今日は9番か。四捨五入したら10番だ! なんちゃって(^^)」
鎧の男をのぞいて。
ムキムキが岩のような拳で「ドンッ」と机を叩いた。
「休みがほしくて四天王やってるんじゃねーんだよ」
「そうですね」「そうね」「そうじゃな」
なにかほかに案はないか全員で考える。と、
「良い案を思いついたのじゃ」
”南の知者”が、ポンっと手を叩いた。
「それはのう……」
話し合いの末、五人はそれを採用した。
次の日。冒険者ギルドの職員が、今日も会議室にたむろする四天王を訪ねる。
「東の国の王様から”南大陸冒険者四天王”宛てにご依頼です。冒険者育成のため、どなたか一名を一ヶ月ほど派遣してほしい、とのことです」
職員が言うと四人は一斉に考え込む。
「一名ですか。難しいですね」
「そうね」
「うーむ。どうするかのう」
「めんどくせえなあ」
その冷ややかな反応に職員はうろたえる。
「お得意様からのご依頼ですので、どうかお願いします」
「そうは仰られても、難しいものは難しいですね」
「そんな……」
職員は「ならば」と別の依頼書を取り出す。
「では『南の岬にあらわれたワイバーン討伐のため、四天王から三名ほど派遣いただきたい』とのご依頼いただいております。引き受けていただけないでしょうか」
「三名、となると四人で向かわなければなりませんね」
「は?」
職員は首をかしげる。
「え、いや、依頼料は三人分しかいただいておりません。おそらく三人でも十分達成できるご依頼だと思いますが」
戸惑う職員に、
「そうではないのじゃ」
”南の知者”が「チッチッ」と指を振る。
「わしらは五人で四天王。つまりひとりで0.8天王じゃ」
「会議やりなおせ。半端者」




