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感謝

 こうして私は、ギルドマスターのアントーニオさん、依頼の受付を担当するアンナさん、冒険者の登録や斡旋を行うルチアーノさんとともに、冒険者ギルドに出資し、働くことになった。

 相談の結果、私はアンナさんとともに依頼の受付業務を担当することになった。


 「エミーリエさん、自己紹介のときは敬語で話したけれど、一緒に働く仲間だし、これからはもっとフランクに話すわね。」

 アンナさんは、そう前置きをして受付の業務について教えてくれた。とはいえ、貴族の生まれの彼女の話しぶりはとても柔らかい。


 「依頼を受け付ける際は、依頼主から依頼の内容をヒアリングして、依頼の難易度や危険度、依頼を受けるために必要なスキルを確認するの。

 もし、あまりに危険な依頼であったり、対応可能な冒険者がいない場合、依頼主の予算が少なすぎる場合には、その依頼は断ることにしているわ。

 依頼の難易度や危険度を確認した後は、依頼主と、依頼の受付料・報酬額・手数料率の交渉するの。

 依頼の受付料とは、文字通りギルドが依頼を受け付けた際に、依頼主がギルドに支払う料金のことね。」


 「依頼を受け付けた後、冒険者に依頼を斡旋できなかった場合は、受付料は返金するのか?」


 「仮に依頼を冒険者に斡旋できなくても、受付料の返金は行わないわ。でも斡旋できない依頼はほとんどないわね。」

 


 「報酬というのは、依頼主が冒険者に支払う報酬のことで、そのうちの一部をギルドは手数料として受け取るの。手数料率は10%から20%が相場ね。」


 「受付料、報酬、手数料率はどのように決めているのか?」


 「農作物の収穫の手伝いや、荷物の運搬など、比較的危険が少ない仕事は、依頼の受付料・報酬は安く手数料率も低く設定しているわ。

 一方で、都市間の移動の警護や人間の生活圏に出没したオークや魔物の討伐など、危険が伴う仕事や依頼を受けられる冒険者が限られている場合は、依頼の受付料・報酬、手数料率も高く設定するの。

 ほかにも依頼の緊急性や、依頼主が冒険者を指名する場合には、依頼の受付料、手数料率を高く設定しているわね。」




 受付料や報酬額、手数料率の決定はとても難しい業務だった。依頼の内容がほとんど同じなのに、報酬額や手数料率に差があると、依頼主から不満が出てしまう。また、危険度に比べて報酬を安く設定してしまうと、依頼を引き受ける冒険者パーティーがいなくなってしまう。


 依頼の受付は、アンナさんのほかに2名のギルド職員が担当していたが、経験も少ないため、受付料や報酬額、手数料率は、長年この業務を担当してきたアンナさんが最終的な決定をしていた。


 受付を行う職員は、依頼主から聞いた依頼の内容を羊皮紙に記録して、その記録をアンナさんが見て受付料や報酬額、手数料率を判断している。



 羊皮紙は貴重なものであるがギルドには羊皮紙が豊富にあった。ギルドが使用している建物は、帝国時代にはとある商会の支店として使用されていたそうだが、地下室には大量の羊皮紙に書かれた帳簿や書物が保管されていたからだ。ギルドがこの建物を使用し始めたときは、地下室への通路は石で埋められていたため、だれにも荒らされていなかったのだろう。


 ギルドでは、古い羊皮紙に書かれた文字を消し、その上に依頼の内容を記録していた。つまり羊皮紙の再利用だ。


 私は、彼女から聞いた仕事内容の説明を筆記魔法で羊皮紙に書きとっていた。せっかく見つけた仕事だ、クビになりたくはないので、仕事内容を忘れないようにメモを取っていた。


 「エミーリエさん、あなたの筆記魔法はとても便利ね。このメモを今後、新人ギルド職員のためのマニュアルに使用したいのだけど、何枚か複製することはできるかしら?」


 「もちろんできる。」アンナさんに筆記魔法を褒められて少しうれしかった。



 「ちなみにエミーリエさんは魔法を使って、文字だけでなく、図形も書くことはできるのかしら?もしできるのであれば、依頼を受け付ける際に、ヒアリングが必要な項目を記入するための表を作成してほしいの。」


 「私の魔法では文字以外にも図も書くことができる。参考までに、どうしてそのようなものが欲しいのか教えてほしい。」


 「最近、職員が依頼内容の重要事項を聞き漏らしたり、記録し忘れるミスが多いの。報酬額の判断にも影響するから、必要事項を一覧化した表があれば便利だと思ってね。」


 「それなら難しくない。どんな項目が必要なのか教えてほしい。」


 こうして、私は筆記魔法を使って、冒険者ギルドが依頼を受け付ける際の用紙を作成することになった。



 私が作った用紙を業務で使用し始めてから、受付業務を担当している職員に、この用紙のおかげで必要事項の確認漏れがなくなり、受付がスムーズになったと感謝された。


 アンナさんからは、今までは職員ごとにばらばらの形式で依頼の内容を記録していたが、私の作成した用紙のおかげで、情報が整理され、受付料や報酬額、手数料率の判断もしやすくなったを言われた。


 私の魔法が誰かの役に立ち、感謝される——そんな経験はエルフの国にいたころにはなかった。


 ここでなら上手くやっていけるかもしれない、そんな気持ちとともに冒険者ギルドでの生活がスタートしたのであった。

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