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死装束

 定期市から帰ろうと歩いていると、アンナさんが防具を扱う露天にいるのを見かけた。


 彼女がなぜ甲冑を必要としているのかは私にはわかる。冒険者パーティーさまよえる黒狼のメンバーと戦うには矢を通さない頑丈な防具が必要だ。彼らは丈の短い弓を使用しているため重装備で戦えば勝機があるとみているのだろう。彼女は軽くて頑丈なドワーフ製の防具を探しているように見えた。


 復讐は彼女自身の問題だ。話しかけずに立ち去ろうとしたところ、アンナさんのほうから私に声をかけてきた。


 「エミーリエさん、ちょっと待って!防具を買うのを手伝ってくれないかしら。」


 アンナさんは私を呼び寄せると迷っている甲冑を見せてくれた。3種類の防具で迷っていて、順番に試着して見せてくれた。試着といっても甲冑の装着には時間がかかるため大掛かりだった。


 1つ目は、胴の部分は細くなっているドレスのような形状をした鎖帷子だ。胸と肩と腰回りを守るためのプレートと兜もセットになっている。


 金属光沢はあるが葡萄酒のような色で、おそらくドワーフ製の特殊な合金でできているのだろう。持ち上げると布でできているのかと思うほど軽かった。



 2つ目は、黒っぽく角ばったプレートアーマーだ。胸のふくらみから女性用と分かるが、いかめしい甲冑だ。兜はつばの広い帽子のような形状で、黒いレースのようなものがつばから垂れている。もちろん金属製だから防御力はあるだろう。


 彼女のオレンジ色の長い髪が、黒色の金額光沢のプレートアーマに映え、独特の不気味さがあり、死者の軍隊を率いる将軍のようだ。



 3つ目は、流線形のデザインのプレートアーマーで細かな植物のような装飾がされている。全体的に白っぽい光沢をしていて、縁は金のメッキが施されている。エルフの王族が身に着ける甲冑のように見える。



 彼女によるとどれも軽く、多少の調整は必要なもののサイズはピッタリで着心地はいいため、あとはデザインで選びたいそうだ。それぞれ3つの甲冑を着た彼女についての感想を伝えるとアンナさんは2つ目の黒色の甲冑を選ぶことに決めた。


 「エミーリエさん、死者の軍隊の将軍とはよく言ったものね。私はブランシャール家の亡霊を引き連れ、死地に赴く将軍よ。私の死装束にぴったりだわ。」

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