筆記魔法の力
私は、アントーニオさん、アンナさん、ルチアーノさんにオークの拠点を見つける方法を提案した。私が考えた方法は以下の通りだ。
まず、ピラソン周辺の街道、小さな獣道、山・川、廃城、打ち捨てられた荘園など可能な限りの情報をまとめた詳細な地図を作成する。そして、その地図を私が筆記魔法で複製し、冒険者や商人、都市近郊に住む村人に渡し、どこでオークの襲撃を受けたかその地図に書き込んでもらう。
書き込んでもらった地図を集め、改めてオークが出現した地点を一つの地図に転記することで、ピラソン周辺でオークが目撃された場所を一つの地図で見えるようにする。そうすることで、エルフの狩人トリグラフが魔物の出現パターンを見つけ出したように、オークの移動経路や彼らの拠点が推測できるのではないかと考えた。
私が提案内容を話し終えると、真っ先に賛同してくれたのはルチアーノさんだった。彼は冒険者とも付き合いが多く、協力してくれる冒険者は多いだろうと言ってくれた。また、詳細な地図は元冒険者で土地勘があるルチアーノさんが作成できると思うとのことだった。
アンナさんも、冒険者ギルドに依頼をしに来た商人や村人に協力してもらうことは可能だろうと賛同してくれた。
話はとんとん拍子に進み、早速ルチアーノさんと彼と仲が良く土地勘のある冒険者が中心となってピラソン周辺の地図を作成した。その地図をもとに私が筆記魔法で地図を複製し、冒険者や冒険者ギルドに依頼にきた人にオークの襲撃があった場所を書き込んでもらうことができた。
冒険者や商人、近郊の住民にオークの目撃情報を書き込んでもらった地図を一枚一枚確認し、一つの地図に転記していく作業はとても楽しかった。
街道で襲撃されたという情報はよく耳にするが、具体的にどのあたりかまでは確認したことがなかった。一つの地図にまとめていくことで、どのあたりでよくオークが現れるのか一目瞭然となっていくのだ。
情報を集め始めてから1か月ほどして、オークの拠点をほぼ特定することができた。もちろん実際にこの目で確認したわけではないが、オークの目撃情報を集約した結果、ほぼ間違いなくこの地点にオークの拠点が存在すると思われる場所を見つけたのだ。
オークは、獣道や打ち捨てられた街道、山の尾根を移動し、主要な街道や村に出て人を襲っていることが分かった。そして、そのようなオークの移動ルートはすべて現在は廃墟となっている荘園につながっていることが分かったのだ。
ルチアーノさん曰く、荘園といってもただの農場というわけではなく、要塞化されていることが多いらしい。
帝国の衰退による治安の悪化、オークや魔物の出現によって、荘園の主は、自衛する必要に駆られ、堀や防壁を築き荘園を要塞化していったそうだ。オークが拠点にするにはぴったりの場所だろう。