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学園の生徒たちはミシェルとセオドアの関係が破綻したと思い、セオドアの周囲にはミシェルの次を狙う女生徒達が、ミシェルの周囲には魔法を以前から良く思っていない生徒たちが群がった。
ミシェルは魔法師を目指していた為ある程度の体術はできるがさすがに複数の男性に絡まれたときは、エリックも参戦してくれた。噂などで陥れようとするものはジェフによって返り討ちにされていた。レベッカは…まぁいつも傍にいてくれた。
学年が上がるにつれミシェル達は学園に通わなくなった。特に魔法科のミシェルは上級生になるほど実技の時間がメインになるので学院にいる意味がなかった。騎士科のエリックと文官を目指す領地経営科のレベッカとジェフは時々見かける。
メリディエス王立学園には魔法科・騎士科・領地経営科・文化芸術科の4つに別れている。その中でも魔法科は花形だったが今はかなり静かになっていた。変わりに人気が出てきたのが文化芸術科だった。この文化芸術科の一般教養部はいわゆる花嫁修業科と呼ばれていて将来家に入り切り盛りをする為のカリキュラムが組まれていた。当然、自立を目指して魔法科に入る女子生徒とは仲があまり良くなかった。
その代表とされているのが魔法科ミシェル・バイヤーズと文化芸術科のケイト・カイザーだった。魔法に夢中になれていた頃のミシェルにはそのような派閥があることはもちろん知らなかった。逆になぜそこに派閥ができるのか理解できなかった。その時間を自分の鍛錬につかえばいいのにと客観的にとらえていたからだった。
しかし、裏でネチネチと嫌味を言われる内にミシェルは精神的に参っていた。
自分の事だけならば無視をすればいいのだが、同じ魔法科の爵位の低い者を囲んで嫌味を言っている姿をみたり、セオドアをハズレ王子と呼んでいる一部の領地経営科の男子生徒を見ているうちにミシェルの中の良心がゴリゴリと削られていった。
そんな鬱蒼としている日々を過ごしていたある日の夜
ミシェルは寝る準備をしていたが寝付けることができず、ソファーにもたれて天井を見つめていた。
「あー、明日も学園か…。私は毎日何しに行ってるんだろ」
ミシェルは左手首のブレスレットを恨めしく見つめている。
「明日も休もうかな…。」
ミシェルのライティングデスクには領地経営の基礎が載っている教科書が数冊あった。
ジェフに頼んで用意してもらったものだった。
学園のしがらみにまとわりつかれるぐらいだったら独学で領地経営を学んだ方がよっぽど身に入りそうな気がした。
「かなり参っているようだな…。」
ミシェルは声のする方を見るとソファーのもう片側にちょこんと座っている魔王がいた。
苦笑いしながらミシェルは話しかける
「そうですね。参っているどころじゃないです。将来不安で仕方ないです。まだ、魔法は使用できないんですか?」
ミシェルの質問に魔王は首をゆっくり横にふる。
「……そうですか」
魔王は懐から紅い魔石を数個取り出し、ミシェルに渡した。
「魔王様これは?」
「私の魔力が込められている。たまには気晴らしでもすれば?お主の魔力を使おうとするからそのブレスレットが発動するのだ。私の魔力だと大丈夫だろう」
ん?何か問題が?みたいな表情でミシェルを見てくる
「魔王様、普通は魔王様から魔石なんてもらえませんからね?」
ミシェルはそういうとクスクス笑い出した。
「でも、ありがとうございます。これで少しはやり返せそうです」
そう言って魔王から貰った魔石をギュッと握りしめた。
【注意】
物語内で、魔法科と文化芸術科の一般教養科の生徒たちが対立している場面がありますが、大人になりそれぞれの立場を良く知ると学生時代どうして対立していたのだろうお互い大変だよねと理解しています。若気のイタリーです。
ご了承ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。