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いわゆるカイザー卿のある日の一日の回
豪華な応接室に通された三人はそれぞれ資料を持ってソファーに座る。
進捗相手はいつも時間は指定するが自分がその時間にやってきたことはない。
またいつのもの事がと三人で目配せをする。
会話はもれなくこちらの国の言葉に変換されてしまうので筆談をする。
『今日でこの屋敷にどれくらい軟禁されているんだ』
『分からないわ。2カ月ぐらい?』
『そうだな、それぐらいだと思う』
三人は目配せすると小さく溜息をついた。
後には三人を見守る警備の人がいるが母国語で書かれている内容は理解できない。
きっと今日これからする進捗の打ち合わせと思っているだろう。
三人の手首には特殊な魔道具が付けられていた。
この屋敷外に脱走した時に主の元に連絡がいくものだ。
ロストの技術に興味を持っている王太子指導の元、プロジェクトを立ち上げる為声をかけられた人々だった。
しかし、いざプロジェクトを開始する時に行動の自由を制限される魔道具を装着されてしまった。どうやらこの地域の首領らしく自分達が脱走すると家族に危害が行くかもしれないと匂わされてしまった。
『とりあえず、今の目標はその王太子サマと呼ばれる人に会ってこの状況を知らせないといけないわね』
『上手く事が運べばいいが…』
『王太子には何度か報告書を出しているから面識は無くても我々の存在や氏名ぐらいは覚えてくれているだろう』
『まさか、自分が発案した事業でロストの人々が軟禁されているなんて想像もしてないでしょうね』
男性がその言葉を読んで思わず鼻で笑ってしまった。
すぐに表情を元にもどす。
『ああ、そうだな。まったく、ハズレの国に降りてしまったよ。クレアシオン王国だとこのような状況にはなっていないだろうな』
『そうね。向こうはロストが少ないからすごく手厚く保護してくれるみたいよ』
三人の筆談は続いたが、ドアの外からコツコツと足音が複数聞こえてきた。
男性が他の二人に声をかける
「さて、お仕事の始まりだ。昨日打ち合わせした通りに頼むよ」
「はい」
「りょ~かい」
ノックもなくお付きの侍従がドアを開ける。
「カイザー卿がいらっしゃった。」
その言葉に三人は立ち上がり頭を下げる。
どうして、こいつに頭を下げなければいけないのか納得はいかないが初めての面談で殴られたため仕方なく従う。
頭を下げている三人をみて満足したカイザーは一言「座りなさい」と言うとカイザーが座るのを確認した後、三人も腰を落とした。
「さてさて、サミュエル王太子殿下との謁見が此度決まった。お前たちのロストの技術に興味を持たれたからだ。その時までに必ず形にし王太子殿下が満足するようにしなさい」
三人の中のリーダー格の男性に向かって話しかけた。
「はい。仰せの通りに」
うんうんと頷いたカイザーが何かを思い出したように。
「そうそう、お前たちの家族も元気にしているとの連絡があった。」
そして、ニヤリと笑うと
「このまま元気でいられるようにしないといけないな」
そういうと進捗内容も確認せずに応接室を離れていった。
それを三人は苦々しい表情で見送った。
最後までお読みいただきありがとうございました。