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いわゆる読んでしんどい回
とりあえずセオドアに謹慎処分になった事を報告する為にいつもの溜まり場に向かった。きっと苦笑いしながら慰めてくれるんだろうなと思ったりする。
東屋が見えてくる、セオドアが背中を向けているのでそのまま声をかけようとしたときその奥に女子生徒が数名いた。
セオドアも女子生徒もミシェルの気配を感じることなく楽しい笑い声が聞こえてくる。
ミシェルは両手をギュッと握りしめるとセオドアに声をかけずにそのまま自宅に戻った。
ミシェル用の馬車に揺られて一人で考え込む。
あんまり見たくない光景だったな。別に嫉妬とかじゃないはず。同級生だもの会話ぐらいするし笑ったりするよね。でもどうして心がズキズキするんだろ。どうしてこんなに悲しい気持ちになるんだろ。
馬車にもたれかかり天井を見ながら
「なんだか疲れちゃったな…。」
誰もいない車内で一人呟いていた。
それから3日間、ミシェルは誰にも会わず部屋で過ごすことになった。
セオドアから何度も面会を申し込まれたが謹慎中という理由には会わなかった。
お菓子やお花を毎日届けてくれた。もちろんメッセージも
「ミシェルに会いたいです」
シンプルなメッセージだった。それが余計にミシェルの心を苦しめた。
セオドアからもらったメッセージをライティングデスクの引き出しにそっと入れる
ミシェルの謹慎が明け再び学園に通うことになる。
いつもならセオドアが迎えに来てくれるのだが公務で2,3日欠席するということを前日に教えてもらった。
ミシェルは気にせずに普段通りに教室に向かおうとしたところ
謹慎前にセオドアと話をしていた女生徒たちに呼び止められる。
「あなたは、魔法科のバイヤーズさんですよね。
三人組の真ん中の女子が声をかける。
ミシェルは一瞬無視をしようかと思ったけど謹慎明けでこれ以上面倒なことは嫌だったので対応することにした。
「はいそうですが、あなたは誰ですか?」
ミシェルの返答に三人組の両サイドがざわついた。
「まぁ、失礼な方ね」
「いいんですか?ケイト様」
「二人ともおやめなさい」
両サイドの女子が静かになる
真ん中の女子生徒がミシェルに話しかける
「初めまして、私は文化芸術科に所属しているケイト・カイザーと申します」
「はぁ…。」
ケイトという女子生徒は、綺麗なブロンドの髪を腰まで伸ばし優しそうなスカイブルーの瞳を持っていた。華奢な体はミシェルでも支えてあげたくなるぐらいだ。
フフフと微笑みながらミシェルを見る
「突然話しかけてごめんなさいね。バイヤーズさんは今日セオドア殿下がどうして学園にいらっしゃらないか知らないのではと思いまして」
初対面の人に自分の婚約者の事を言われるとは思わなかったミシェルは内心驚いた。
そのままケイトに話を促すように何も言わずに待っている。
「実は、公務の後に私のお父様との会談がありますの。私は話の内容までは知りえませんが」
そう言いながらミシェルとすれ違うように真横に立つと小声で
「新しい、婚約者についてのお話しかもしれませんねって」
ミシェルは思わず真横にいるケイトを見つめる。その時のケイトの表情は何とも言えず
怖かった…。
「お話しは終わりました。あなた達、教室に行きますわよ」
両サイドの女子も走ってケイトの後についていく
ミシェルは初対面のケイトの話をそのまま信じる気はないがセオドアにそのような話があってもおかしくないと思うと何とも言えない気持ちになった。
そして、そっと左手首に付けられている白金のブレスレットを触る
「運命の相手って本当にいるのかな…。」
ミシェルでさえその不確定要素にすがりたくなった。
最後までお読みいただきありがとうございました。