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いわゆるお説教回
ミシェルは目を覚ました。このシンプル天井は保健室かな。
体に痛みもないのでそのまま起き上がると
「ミシェル!」
セオドアがミシェルに気づき駆け寄ってくる。
「大丈夫?急に倒れたから驚いたよ」
心配そうにミシェルの体調を確認した。
「そりゃ倒れますよ。バイヤーズさん、あなた魔法を使用しましたね」
白衣を着た保健医がミシェルを見ながら質問してきた。
ミシェルは誤魔化そうと保健医との視線を外す。
保健医は小さく溜息を着くと、自分の左手首についているブレスレットを指さす。
「ほら、あなたのブレスレットのここ赤くなってるでしょ!」
保健医に指をさされた箇所を確認すると、小さいが赤く光っている箇所があった。
「それ、魔力の異常放出があった時に知らせるヤツだから」
そうなのかぁ~と初めて見る機能に興味も持ちながら自分のブレスレットを確認する。
「何があったのかは分からないけど、無茶をしてはいけないわよ」
ブレスレットは魔力放出防止の役割をしているがどうしてもその機能以上の魔力が出力されると漏れてしまうらしい。すなわち、魔法が発動されるという事だった。
そして、それ以上の魔力放出を防ぐための緊急策として意識を飛ばすように処置されている。
「というのを私は確かにこのブレスレットの装着時に研修で聞きましたよ。でもまさか本当にその機能が発動するなんて本来はありえないからね!」
ミシェルは偽装することを諦めて素直に謝った。
「すみません…。」
保健医はニコリと笑いながら
「いいのよ。私に謝らなくても。この後、あなた学園長室にお呼ばれしているからね」
そう言って、一枚の小さなカードを手渡された。
「魔法学科 魔法師科 ミシェル・バイヤーズ このメッセージカードを受け取ったら速やかに学園長室に来ること」
それを横からみたセオドアは苦笑いしながら
「あ~あ、これはやっちゃったね…。さすがに僕もそこには着いていってあげれないから送っていくよ」
ミシェルは、初めて表彰以外で学園長室に訪れる事になった。
コンコンコン
学園長室のドアをノックすると
「お入りなさい」
いつもより厳しい声が室内から聞こえる
「じゃあ、がんばってね。僕はいつもの場所で待ってるからね」
セオドアはミシェルの耳元で囁くとそのまま廊下を歩き出した。
ミシェルは小さく息を吐き出すと。
「ミシェル・バイヤーズ 入室します」
と言いながらドアを開けた。
学園長室には、大きなデスクに座っている学園長、魔法科の主任、そして
「お父様…。」
ミシェルの父親も呼び出されていた。
「ミシェル!」
ミシェルを見つけた父親はすぐに駆け寄り
「体調は大丈夫かい?」
と優しく声をかけてくれる。
いたたまれない気持ちになったミシェルは何も言えず俯いてしまった。
「ミシェル・バイヤーズ こちらに来なさい」
髪の毛もお髭も真っ白な学園長がミシェルをソファーに座らせる
目の前にはこめかみから血管が浮き出そうなほど怒っている魔法科の主任が座っていた。
全員が座ると主任が話始める
「バイヤーズさん、魔法を使用してはいけないと国王がおっしゃた事を覚えていますよね?」
「はい」
「バイヤーズさんのブレスレットは魔王様に付けていただいたと聞いています。魔法を使用することによって本当はどうなるかの説明も聞いてますよね?」
ミシェルは下を向きながら小さく「はい」と答えた。
「だったらどうして…。」
ミシェルは、主任の先生が自分の為に怒ってくれている事は十分に理解していた。
でも、どうしても許せなかった。
「先生、魔法は本当に必要ないのですか?使えなくなったからって魔法そのものを否定してしまうのですか?」
ミシェルの訴えに学園長室は静かになる。
「ミシェル…」
父親はそっとミシェルの肩を自分に寄せる。
学園長は静かに話始めた。
「確かに昨今は魔法を悪ととらえる不思議な動きがこの学園内でも浸透してきてはおる。それは、我々教師が教育の一環として生徒に教えなければならいな」
その言葉にミシェルは顔を上げる。
「園長先生!」
学園は前向きに魔法の偏見について訂正してくれると思い喜ぶが
「だが、規則は規則じゃ。どれだけ魔法は悪では無いと言っても、それを使用することによって亡くなる生徒が出てくると不安をあおってしまうのではないか?バイヤーズ」
学園長の正当な理由にミシェルは何も言い返せなかった。
「さてと、今回は初犯だから。謹慎3日間じゃ。良く考えておくようにな」
と言ってミシェルだけを退室させた。父親とはまた別の話があるらしい。
「失礼しました」
シュンと落ち込みながらミシェルは学園長室を出て行った。
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