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お久しぶりです。
レベッカとエリックを見送った後、部屋に戻ったカエデはソファーにポスンと座る。
周囲を見渡し、急に部屋が広く感じた。
「久しぶりに誰かと話したから、寂しくなったよ~。」
この世界ではあまり行儀が良いという姿ではないが、ソファーの上で自分の膝を抱えてその上に額を乗せた。
「はぁ~早く向こうに帰りたい…」
レベッカもエリックも初めましてのカエデに気さくに会話をしてくれたがそれはあくまでもミシェルちゃんの友達としてだからだよね~。
と大人げない発想になってしまう。
悩んでいても仕方ないか…。
カエデは、気を取り直して提出しなければいけないという卒業論文をミシェルの記憶を借りて探し出す。
ライティングデスクの引き出しにその論文が入っていた。レベッカの言う通り既に出来上がっていた。清書も必要なさそうだった。
「ミシェルちゃん、すごいね…。多分、夏休みに入る前に課題を終了するタイプの子だよね」
ペラペラとミシェルの論文を読むカエデ
「う~ん。このロストって呼ばれる人が作る物の動力を空気中にある魔素を集めて魔力の代わりに使っていきたいのね」
ロストと呼ばれる人は、自分と同じ世界から時々出現する人の事を指しているらしい。
その人たちが時折便利なものをこの世界の物から作成するが、基本的にその動力は向こうの世界で言う「電力」なんだろうなと。現時点では、魔王サマが使用している瘴気を空の魔石に吸収し取り込むことができる装置が存在しているみたいだけど、それを空気中にある魔素を吸収して取り込むことができれば、体内にある魔力を使用しなくても半永久的に動力として活用することができるんじゃないかと
「で、ミシェルちゃんは魔素をまとめてモバイルバッテリーみたいにな物に充電できると便利なんじゃないかと…。」
目の付け所が鋭角だね!
と思わず言ってしまった。
ミシェルの発想はこれまで無かったわけではないが、魔王サマが使用している物を見せてください~と言える強者がいないので解読して応用することができないってことなのかな?
彼女の卒業論文でこの国が大きく変化することはないと思うけど、魔力を封じられたミシェルなりの妥協案なのかもしれないな。
「これ、実践できれば面白いと思うんだけどな…」
私になる前だったら可能性で終了していたかもしれないけど、セオドア王子とも魔王サマとも普通に会話できるこの状況ならもう少し踏み込めるかもしれないな~。
とりあえず、セオドア王子に他の国ではどんな状況なのかを聞く事から始めようかね
それと、魔王サマが暇そうだった例の装置を見せてっておねだりして
これは、あくまで私の暇つぶしだから論文には入れないで現状はこんな感じですよとミシェルちゃんにメモ書きみたいな感じで渡せたらこちらに戻った時に研究できるかもしれないしね。あ~でも、セオドア王子と結婚したら王子妃とかになって公務とか忙しくなるのかな?
セオドア王子に確認してみよう。うん。聞くことが一つ増えたよ。
よしよし、謹慎期間の暇つぶしができたよ。
カエデはホクホクしながら何からしようか考え始めた。
「あっ、セオドア王子と連絡する手段がなかったの思い出したよ…。」
自分から連絡手段イラねとセオドア王子に啖呵を切っていた事を思い出したカエデでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。