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いわゆる人物紹介回
新生ミシェルの成長はすごかった。
まず、魔力を蓄えるとされていた綺麗な黒髪を腰の長さから肩がギリギリ届くぐらいの短さにした。メイドたちの「お嬢さまぁ~」が屋敷中響いたが、もういいのよ…。と、しおらしく呟くと誰も何も言えなかった。
父親もミシェルの髪型を見て一瞬怯んだが敢えて何も言わなかった。
ちなみに、母親は倒れた。
次に学校生活、以前は魔法関連の授業を中心に熱心に取り組んでいたが今は座学が中心の為実習の時間は別のカリキュラムを選択しなければならなかったが、ミシェルは…。
「魔法以外は意味がないのよ!」
の一言で授業も受けずお気に入りの東屋でのんびりと時間を潰していた。
のちに、ミシェルがいたその場所は『ミシェルの花園』と呼ばれ聖域化された。
「で、どうしてあなた達も一緒にここにいるわけ?」
言葉も崩し始めたミシェルは秘密基地(絶賛公開中なので秘密になっていない)に自分以外の人が我が物顔でいることがお気に召さなかった。
「あら?連れない事をいうのね?他の殿方は邪魔かもしれませんが私は必要でしょ?」
自称ミシェルの親友と語るレベッカ・コールマンは侍女が入れた紅茶を優雅に飲んでいる。
あっ私にも入れてくれるの?ありがと~。
「レベッカのいる所が俺の居場所だ!」
お気に入りの短剣を丁寧に手入れしながら自信ありげに語る騎士科のコイツは
自称レベッカのナイト、エリック・ストゥーキー。
あっレベッカの侍女がエリックにも紅茶を入れてる!ソイツにはいらないと思うよ。
「まぁまぁ、ミシェルさん、そんなに警戒しないで下さいよ」
銀色のフレームをクイッと上げながら場を落ち着かせようとしているのは
子爵の子息のジェフ・テイト。自分の爵位を気にしすぎだと思うんだけど敢えて言わない。
だって面倒だもの。
あっレベッカの侍女と楽しく会話しながら紅茶を入れてもらっている。多分、侍女の方が身分的に釣り合うんだろうな。
「ジェフ、僕のミシェルに気軽に話しかけないでね」
「すっすみません」
そして、この独占欲強めの男前は、私の婚約者の
セオドア・メリディエスだ。苗字に国の名前って強いよね。色々な意味で。
レベッカの侍女がセオに紅茶を入れていいのか悩んでいる。毒見関係かな?
「セオにも入れてもらえるかしら?」
困っていそうなので私から一声かけてみた。
かしこまりました。と小さくお辞儀をしてからレベッカの侍女が紅茶を入れてくれた。
それをセオドアが口を付けると
「ん。いつも美味しいよ。ありがと」
と笑顔で労っていた。
そんなセオドアを呆れた表情でミシェルは眺めていた。
すると
「ねぇ~見てみて、またあの人達サボッているわよ」
「本当ね。でも、仕方がないんじゃない?」
「あ~。そうね、使えない子なんだもんね」
「キャ~。聞こえるわよ。本当の事が!」
「でも無くなって良かったんじゃない。魔法なんて無くても私達には関係ないもの」
「ダメダメ、魔法しかできない子に聞かれちゃうよ…」
キャハハハハ。
同級生達がミシェルを見つけると聞こえるように悪口を言って去っていく。
王様が魔法を禁止した後、魔法イコール悪という間違った認識がされるようになった。
当然、百年に一度の人物とされていたミシェルにもその悪意が向けられる。
そんな、ミシェルと婚約させられているセオドアはハズレ王子と言われていた。
ミシェルは、許せなかった。自分の事は良しとしよう
でも
「魔法をバカにするなんて…」
気持ちを押さえることができなかったミシェルはその女生徒達を睨んだ後
教科書を見つめながら呟く
「裂けろ」
すると、女生徒達が持っていた教科書が木端微塵に切り裂かれた。
「キャー!」
「何これ!」
パニックになる女生徒たちを尻目にミシェルは鼻で笑った。
「魔法をバカにするからよ」
ザマーみろと思ったミシェルを見ていたセオドアが心配そうにミシェルに声をかける
「ミシェル?大丈夫?」
ええ大丈夫よと答える前にミシェルは気を失った。
最後までお読みいただきありがとうございました。