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お久しぶりです。
魔法師団長との会談を終えた二人は部屋に戻るまで終始無言だった。
カエデはセオドアが何を考えているのか分からないが思い詰めているのは分かった。
カエデ自身も、あのモーエン魔法師団長の話をミシェルが直接聞いていたらもしかするとずっとこの国に残るという選択もあったのかなと思った。
カエデはセオドアに部屋まで送り届けてもらうと
「ありがとうございました」
とお礼を言った。
セオドアはカエデのその言葉で自分が部屋に戻っていることに気づく
「…ああ、こちらこそ今日はありがとうね。」
それでは、とカエデは自分の部屋に戻ろうとした時
「ちょっと待って…今から少し話せる?」
とセオドアに言われたので、特に予定もないカエデは大丈夫ですよと言ってそのままセオドアを部屋に招き入れた。
お茶を準備し、セオドアに渡すとありがとうと言われながら口につけていた。
「どうかしましたか?もしかして、モーエン師団長の「この国に滞在しますか?」の話が気になったのですか?」
カエデが思い当たることと言えばそれくらいなので、とりあえず聞いてみる。
「その件についてもだが、もうすぐ私たちは帰国するだろ?これからの連絡手段をどうしようかなと思って」
カエデはセオドアの言葉を聞きながら少し笑う
「セオドア王子は大変そうですが、私はこの後2カ月の長期休暇に入りますからね~」
少し意地の悪い表情を作って見せるカエデ
それを見たセオドアは肩をすくめながら
「ミシェルならそんな事は言わないよ…。かなり塞ぎこんでしまっていただろうね」
「そうですよね…。私がいて良かったですよ」
自分の胸にわざとらしく手を組みながらカエデはおどけてみせた。
しばらく感謝してよポーズをしたあと恥ずかしくなったのか小さい咳払いをした後、
「何かメッセージを送れる方法とかはないのですか?」
カエデのいた世界ではSNSで簡単に伝えることができるがこの世界ではどうなのかなと考える。
「鳥?鳥系ですか?」
こういう世界での連絡方法はやっぱり鳥だよね!と答えを見つけて嬉しそうにセオドアの反応を待っていると
「えっ、王宮から鳥なんて飛ばしたらすぐバレるでしょ…。」
苦笑いしながらカエデに答える。
カエデは、セオドアが高い塔からハトを飛ばす想像をすると
「セキュリティー的に無理か…。」
と残念そうな表情でセオドアを見た。
「えっ私?私が悪いの?違うでしょ、そもそもそのような原始的な方法使えるわけないでしょ!」
責任転嫁されそうになったのでセオドアは慌ててカエデに言い返した。
カエデは再び考え込んだ後、何か思いついたのか再びセオドアの方を向きながら
「よく考えてみれば、私からはセオドア王子に御用なんてないので!別に連絡手段とか考えなくてもいいじゃないですか!」
嬉しそうに話しかけるカエデに
「えっもしかして、考えることを放棄したでしょ?面倒くさいからまぁいいかとか思ったでしょ!」
呆れながらカエデの考えを見抜くと、カエデは「ん?」と誤魔化した後、ぬるくなった紅茶を飲んでセオドアからそっと目をそらした。
本当にミシェルじゃないよね…。その発想がミシェルだったら私は消えてなくなりたくなるかもしれない…。
セオドアは、挙動不審なカエデを見ながら小さく溜息をついた。
最後までお読みいただきありがとうございました。