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いわゆる1話の続き
ミシェルが放つ優しい抵抗魔法を押しのけて魔王は彼女の傍に近づく
桃色の瞳に涙を貯めながら
「魔王…。さま?」
巨大スクリーンで一度だけ見た事のある男性に声をかける
「ああ、私は魔王と呼ばれているな」
ミシェルの左手首をそっと持ち上げるとそのままブレスレットを装着させた。
白金に輝くブレスレットは息をするように輝いたり輝かなかったりする。
「お主の魔力を放出しないように一時的に受け止めているのだ。気持ちが落ち着いた頃にそっと体内に戻るだろう」
ミシェルは体を起こしそのブレスレットをしばらく眺めた後貯めていた涙を落としながら
「どうして魔法を使用してはいけないのですか?私は魔力をたくさん貯めることができます。私から魔法を取ったら何も残らないのに…。」
ミシェルは魔王の服と掴むとエグッエグッと泣き出した。
周囲に期待されて歩んでいた15歳には世界が自分を拒否したように感じられた。
見かねた魔法はミシェルの頭をそっとなで
「お主は何も悪くないのだが、理を破ってしまった一部の大人がいてな…。
一人は無自覚のまま魔法を使い消え、もう一人は無自覚に消えた者を愛するがゆえに消えた。お主もこのまま魔法を使い続けるとそれらと同じように消えてしまう」
ミシェルは魔法の説明を聞いた後
「だったら…。だったら私も魔法を思う存分使用した後消えてしまいたい!」
自分の存在意義が無くなったんだから別に消えてもいいよね.....?
魔王を見上げたミシェルの瞳には生きる気力が失われていた。
魔王は一瞬考えた、これもううちに呼んじゃおうかと…。
しかし、白金のネームタグがキラリと光る。魔王は溜息を着いた後ミシェルの額をペチンと叩いた。
「いたっ」
ミシェルは少し赤くなった額を触りながら魔王を睨んだ。
「れっレディーに暴力をふるうのは良くないと思います!」
ミシェルは魔王に抗議した。
魔王は少し笑ってから
「うむ。お主に少しだけまじないをかけておいた。そう生き急がなくてよいではないか。
もう少し人生楽しんだら?」
魔王様、語尾が嫌に軽いと思いますが…。
でも、魔王の言葉にミシェルの心に何かがストンと落ちたのが分かった。
そして、瞳を袖でゴシゴシを拭いた後
「そうですね。私、もうイイ子でいるのは辞めようと思います!」
ミシェルは立ち上がると魔王に抱き着き
「魔王様ありがとうございました!ミシェルは新生ミシェルとしてこれからの人生を進もうと思います!」
魔王はミシェルの意気込みを聞いた後
「うむ。ほどほどに.....な?」
そういうとその場から消えてしまった。
ミシェルはとりあえず部屋を出てメイド達に謝り父親にブレスレットを付けたことを報告にいった。
元気になったミシェルを見た父親はとても喜びミシェルを抱きしめた。
「魔法だけが全てではない、これを機に色々見つめなおすのも良いと思うぞ」
父親の優しい励ましにミシェルは抱きしめられた胸の中で小さく頷いた。
父親はそっとミシェルを引き離すと
「それに、魔王様が『そのブレスレットを外す人がミシェルの運命の人』と仰っていた。もし.....その.....セオドア王子との婚約が無くなってもミシェルにはその運命の人がいるから大丈夫だ!」
父親の不確定要素満載の自信にミシェルは眉を下げる。
「お父様、それはあまりにも曖昧過ぎて私にはなんと言って良いのか分かりません…。」
ミシェルの方が大人だった…。
最後までお読みいただきありがとうございました。