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セオドアと一緒に食堂に行くとそこには、ジェフが既に席を確保し待機していた。
二人を見つけると小さく手を振ってきたので、カエデも手を振り返す。
「おはようー。ジェフ。今日もいい天気だね!」
ジェフにもきちんと挨拶をする。社会人としてはあたりまえだよね。
しかし、ジェフは驚きながら
「おはようございます。ミシェルさん、朝から元気です…ね?」
いやいや、元気に質問するとか意味が分からんなと思いながら、今の若い子はそういうのものなのかも知れないなと一人で納得する。
早速、朝食を食べていると食堂の入り口が少し騒々しくなった。
「誰か来たのですかね?」
ジェフは入り口を確認しながらカエデ(体はミシェル)とセオドアに話しかける。
セオドアは
「あ~」と何かを思い出したようにジェフと同じ方向をみると
軍服を着た可憐な少女がお付きのものを連れてこちらにやってきた。
そして、三人の前で立ち止まると
「皆さま、おはようございます。あっまだお食事中でしたのね。でも、そのままで、私はクレアシオン王国第一王女のラエティティアよ。よろしくね」
すると、三人は立ち上がり
「おはようございます。私はメリディエス第三王子のセオドア・メリィデイエスです。よろしくお願いします」
「おはようございます。私は、ミシェル・バイヤーズと申します。セオドア様の婚約者であり今回の短期留学に随行させていただきました。どうぞお見知りおきを」
「おはようございます。私は、ジェフ・テイトと申します。ラエティティア王女様には本来ならばご挨拶できる爵位を持ち合わせていませんが、どうかお許しください」
三人が三通りの挨拶をすませると、ラエティティアは自己紹介のタイミングを間違えていることに気づき少し頬を赤らめた
「公式な場所ではないのだから立場など考えなくても良いのよ。私も少し、ちょっと、早く来すぎてしまったのかもしれないわ。それじゃあ、後でね!」
そう言いながら直ぐにどこかへ行ってしまった。
三人で目を見合わせた後セオドアが
「…とりあえず、残りも食べてしまおう」と言ったので、カエデとジェフは頷いた後朝食を最後まで頂いた。
朝食の後は、オリエンテーションまで時間があったので各自の部屋で過ごすことになる。
部屋に戻る途中でセオドアはオリエンテーションの為の打ち合わせの為、先に別行動となった。カエデはジェフと戻りながら
「ジェフの部屋ってどんな感じ?私の部屋はすっごいよ。すごいよ」
ジェフは苦笑いしながら
「僕の部屋は普通の客室だよ。セオドア様やミシェルさんの部屋とはさすがにグレードが違うよ」
「そんなに違うものなの?」
「そうだね~。多分二人には貴賓室って所を割り当てられると思うよ。王宮の貴賓室だからかなりのグレードだよね」
カエデは、ジェフの説明を聞いた後
「えっここって王宮なの?」
キョトンとした顔でジェフに問いかける。
ジェフはもぅ~と言いながら
「学園長先生はきちんと説明していましたよ。そう、ここはクレアシオン王国の王宮です」
一般庶民のカエデには理解できなかった…。
「…ミシェルさんもいずれは王族に入られるんですからね!しっかりしてくださいよ」
と言いながら立ち止まった。
自分が思いの他セレブな階級だったことにショックを受けていたので注意散漫になりそのままジェフの背中にぶつかった。
「うわっ」
思わず小さく声を出してしまうカエデ
「あっすみません。大丈夫ですか?」
ジェフは慌ててミシェルを確認する。
「ごめん。大丈夫」
少し鼻が当たっただけだった。
ジェフは少し溜息をつくと
「僕は、この先のフロアーには行けませんから、ミシェルさん、ちゃんとお部屋に戻ってくださいね。多分、セオドア様が迎えに来てくれると思いますから!」
「は~い」
カエデは生返事をしながらそのまま前に進んだ、ジェフの視線を感じたので少し手を上げておいた。
その後ろ姿を見送るジェフ
「…大丈夫ですかね。」
その心配はカエデには聞こえなかった。
ラエティティアはこの後、きちんとお母さま(王妃様)に怒られましたとさ。
最後までお読みいただきありがとうございました。