18
いわゆる、カエデがミシェル(体)にお邪魔するきっかけとなった回の続き
17話を読んでいただいた後こちらを読んで欲しいです。
引き続き内容が重めです。
学園長室が見えてきたとき、ドアの前でセオドアとケイトが何か話し合っていた。
セオドアは背を向けており気づかないが、ケイトはミシェルに気づいたらしい。
ミシェルは、一瞬怯んだが自分も学園長室に用があるので隠れて二人の逢瀬を見続けるのもおかしな話だと思いそのまま向かう。
そして、二人の会話が聞こえてくる
「では、セオドア様向こうから帰ってきたら私にお時間をくださいね。」
セオドアの表情は見えない
「ああ、分かってますよ」
すると、ケイトがセオドアに刺繍入りのハンカチを渡した。
「…。これを、私だと思って肌身離さず持っていただけると…。嬉しいです」
そう言って渡す。セオドアも
「…。ありがとう」
と言って普通に受け取っていた。
それを見せつけた後、ケイトがまるでミシェルの存在を今気づいたように
「まぁ!バイヤーズさんじゃないですか!」
と声を上げてミシェルに話しかける。セオドアも同じタイミングでこちらを向いた手にはケイトから貰ったハンカチを持っている。
「ミシェル、君も学園長にご挨拶回?」
セオドアはいつも通りの対応でミシェルに話しかける
「ええ、そうね。いくつか注意事項もあるって言ってたから」
セオドアは微笑みながら
「じゃあ、一緒に入ろうか?」
そういってエスコートをしようとした。
「セオドア様!私、バイヤーズさんにもお別れの挨拶をしたいので、先に入ってもらってもいいですか?」
ケイトは甘えるような声でセオドアに意見をする。
セオドアは一瞬表情を無くすが
「ミシェルは、ケイト嬢と仲がいいのかい?だったら、私は先に部屋に入っているね」
ミシェルは、ケイトの言葉をそのまま信じるセオドアにショックを受ける。
「ええ、そうしてちょうだい」
しかし、何も言えずケイトの流れに巻き込まれるしかなかった。
セオドアが学園長室に入ると、ケイトの表情が変わる
「そういえば、バイヤーズさんも短期留学に行かれるのですね。少し、セオドア様との距離が近くなるなんて思うのは止めた方がいいですわよ」
そう言いながらミシェルに近づいてくる。
「だって、貴方はその留学が終わる頃には隣にいる立場かどうか分からないですからね」
そして、耳元で
「セオは私が頂くわ。ごめんなさいね。」
そして、ミシェルにわざと目を合わせ、ニヤっと笑うとそのまま教室に戻っていった。
ミシェルは、怒りや虚しさで感情が溢れそうになった。
どうして、ここまで私を追い込もうとするのだろう。
かってにセオドアの婚約者になればいいじゃない。
少しずつ溢れてくる涙が零れ落ちないように上を向く。
しかし、それに間に合わず、涙が止まらない。
「もう…。嫌だな…。」
早く気持ちを切り替えたいミシェルは、涙をすぐに拭うと深呼吸をしてから学園長室に入った。
学園長室に入ると、学園長と各科の主任とセオドアと…。
「ジェフ!」
ミシェルは、ジェフを見つけると驚いて思わず声をかける。
ジェフは一瞬セオドアを見るがすぐにミシェルに向かって
「実は、私も今回の留学に参加になりまして。よろしくお願いしますね」
と微笑みながら言ってきた。
ミシェルもよろしくね!と伝えるとソファーに座った。
話があると言われている学園長の方を見ると、なんだか雰囲気が変だった。
ミシェルは恐る恐る
「あの~、私遅刻しましたか?」
この雰囲気はミシェルが遅れてきたのが原因だと思ったので学園長に聞いてみるが
「…。いいえ。大丈夫ですよ」
と微笑みながら言われたので、ミシェルはそれ以上何も言えなかった。
そして、ローテーブルに置かれている水晶のような物を見つけると
「あれ?これって魔力判定装置ですか?少し大きいですが?」
ミシェルは魔道具も好きなので思わず学園長に聞いてみる。
学園長は少し動揺しながら言葉を考えていると
「これは、セキュリティを担ってもらうための装置だよ。まだ、何ができるかは教えられないんだ。ごめんね」
セオドアはミシェルに対して両手を合わせてごめんのポーズをとるので少し面白くなかったがそれ以上聞くのを諦めた。
「正式に運用するようになったら教えてくださいね」
ミシェルは、学園長にお願いした。もちろんですよ。と答えてくれた。
それから、学園長の軽い説明の後ミシェル・セオドア・ジェフの三人はクレアシオン王国へと旅立つ。
馬車も三人で乗ると思っていたが、どうやらジェフは別の馬車で移動するらしい。
会話のないミシェルとセオドア。
お互いが別々の方向の風景を見ながら静かに時間が過ぎていく。
ミシェルはふとセオドアの方を見た。するとセオドアはさきほどケイトに貰ったハンカチを真剣に見つめていた。
ミシェルは思った。ワザワザ私と二人でいるときに、あの人のハンカチを見る必要なんてないのに…。
ミシェルは無意識に手を力を入れて握る。爪が白くなっていた。
そのハンカチを奪って、燃やしてやりたい。
その炎はきっと、綺麗に違いない。
だって、ミシェルの嫉妬でできているのだから
セオドアが学園長室に入る。先に着いていた先生方とジェフがいた。
ジェフはまぁ…。大変だな。と思いながらとりあえず学園長に挨拶をした後
セオドアは思い出したようにポケットから水晶みたいな球体を取り出す。
「学園長、防犯の一環としてこのような魔道具が開発されました。ロストの世界ではよくあるらしいのですが防犯カメラ?という機能をするらしいのです。」
セオドアは魔石を持ちながら魔法を放つ。すると、先ほどまでいた学園長室の廊下が映し出された。その場にいた全員がおぉ~と言う歓声がです。セオドアは静かにしてください。
と言った後
「少し改良して音声も聞こえるようになったらしいんです」
セオドアはさらに何かの魔法をかける。
すると、ミシェルとケイトの会話が聞こえてくる。
ーーー
「そういえば、バイヤーズさんも短期留学に行かれるのですね。少し、セオドア様との距離が近くなるなんて思うのは止めた方がいいですわよ」
「だって、貴方はその留学が終わる頃には隣にいる立場かどうか分からないですからね」
「セオは私が頂くわ。ごめんなさいね。」
ケイトの一方的な会話が流れてくる。思わず教師陣は息をのんだ。
「もう…。嫌だな…。」
ーーー
ミシェルの呟きも綺麗に聞こえてきた。
セオドアはこんな表情のミシェルを本当は見せたくなかったが、背に腹は代えられなかった。
一連の会話を聞いた後、セオドアはそっと魔法を止める
そして、
「でも、残念ながらまだ録画機能ができてなくて…。魔力もけっこう消費するんですよね」
そう言ってセオドアは空になった魔石をコロンと机に置いた。
セオドアの防犯カメラのメリットとデメリットの説明を受けるもケイトの態度の方が全員印象深くてまるで頭に入ってこなかった。
セオドアは少し溜息をついてから
「この話はクレアシオン王国から帰ってきてからもう一度しますね」
と言った後、空になった魔石をポケットに入れた。
その後、ミシェルのノックが聞こえたので学園長が入室許可をだす。
ミシェルは気づかれていないと思っていたが、全員がミシェルの目元が赤くなっていたのを確認した。
なんとも言えない雰囲気になった。
それを確認したセオドアは心のなかでニヤリと笑った。
最後までお読みいただきありがとうございました。