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いわゆる、カエデがミシェル(体)にお邪魔するきっかけとなった回
少し内容が重めです。
ミシェルは、メイドに用意してもらった荷物が馬車に入れられるのを確認した後、父親がいる執務室をノックする。入りなさいという声を確認すると静かにドアを開ける。
「お父様、今日からクレアシオン王国に行ってまいります」
微笑みながら報告をすると、父親は書類から目を離しミシェルの方を見る。
「…。そうか、気を付けて行ってくるんだよ。向こうの方が魔法に関して色々進んでいるからね。技術も、考え方も。だから、ミシェルが肩身の狭い思いをすることはないと思う。ゆっくり学んで、体も休ませておいで」
そういうと、ミシェルの傍に行き優しく抱きしめる。
ミシェルの頭の上で
「しがらみも何もかも忘れて楽しんできて欲しい…。」
それが父親の本心なのだろうなと思うと、ミシェルは心が暖かくなる。
だから余計に迷惑になる事はしたくない。
ミシェルから離れた父親に
「お父様、セオドア殿下についてなのですが…。」
多分父親にも二人の関係は知られているだろう。もしかすると、この短期留学で関係がもっと悪化するかもしれない。最悪の場合は…。
ミシェルの父親は、彼女の両手を握り
「向こうでは、しがらみも何もかも忘れて…。な?」
そして、頭を撫でると
「さあ、もう行きなさい。お母さまにもご挨拶をしなければいけないだろ?」
その言葉に促され、ミシェルは母親と弟がいるエントランスに向かった。
「ミシェル、気を付けていってらっしゃいね。」
「お姉さま!お土産よろしくね!」
二人もミシェルを抱きしめると
「はい。行ってまいります」
抱きしめ返しながら少しのお別れを伝えた。
学園に着くと、ミシェルを待ち構えたようにレベッカとエリックが立っていた。
「ミシェル!もう、聞いてないわよ!私を置いていくなんて。私を捨てるつもりなの?」
レベッカは昨日聞いたらしくとても怒っていた。
「ごめんね。私も急だったのよ。また、クレアシオン王国に着いたら連絡するからね」
ミシェルはレベッカをそっと抱きしめると背中をポンポンと叩いた。
少し涙目になったレベッカは
「しっ仕方がないわね。これを私だと思いなさいよ」
と言いながら、刺繍の入ったハンカチを渡してきた。
隣でエリックが「えっ」というのが聞こえる。
ミシェルは動揺しながら
「あの~、レベッカさん。普通こういうのは、男性に渡すものでは?」
レベッカは胸を張りながら
「ダイバーシティというヤツだから」
とミシェルが理解できない言葉で誤魔化した。
それを羨ましそうにみるエリック、言葉には出さないがもう、ね。雰囲気が駄々漏れです。
ミシェルはエリックの方を怖くて見れなかったが、
「ん!」と言いながら何かを持っている手を突き出した。
「これは何?」
そう言いながらミシェルはエリックから渡された物を確認する。
それは小さなタガーナイフを手渡された。
「ええぇ~」
エリックは真剣な表情で
「昨日、親父に言ってミシェルに渡す許可を得た。何もないと思うが敵はどこにいるか分からない。ミシェルが怪我をすると。レベッカが悲しむ」
エリックっぽい理由に思わず笑うミシェル
「ありがとうね。二人とも」
二人がミシェルの言葉に頷く。
「さて、学園長室に挨拶に行ってそのまま向こうに向かうから、ここでお別れだね」
そうして、ミシェルは二人と別れ学園長室に向かった。
最後までお読みいただきありがとうございました。