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いわゆるカエデと魔王のお話し回
「で、お主は誰なんだ?」
カエデの訴えをスルーした魔王は改めて聞いてきた。
カエデもここに来た経緯を軽く魔王に説明する。
「ふむ。お主もロストと呼ばれるものか?」
カエデはミシェルの記憶を少し借りて
「いいえ。だって私の本体は多分生存していると思いますよ。敢えて言うなら一時的にミシェルさんの体をお借りしている状態って言うのが正解かもしれないです」
カエデは、目をつぶりながらしばらく動かない。
「なんか…。この体の持ち主って精神的に追い詰められてますか?」
カエデは、この人に聞いても分からないかもな~と思いながらとりあえず聞いてみる。
「そうだな…。色々と追い詰められていると思うぞ」
カエデは腕を組みながらうんうんと相槌を打つ
「そうでしょうね。だってミシェルさん、寝込んでいますからね…。」
そして、カエデは胸に手を置きながら。
「ここで、眠っている状態です」
「そうなのか…。」
魔王の表情は変わらない。しかし
「魔王さんは悲しいんですか?なんか、そんな雰囲気に見えます」
カエデは苦笑いしながら話す。
「仕方ないですね。この子が元気になるまで私がなんとかしましょう」
胸に添えていた手でトンと叩く。
「早く帰らないと、私も報告書を提出しないといけないですし…。」
溜息をつきながら仕事を思い出して口を尖らせた。
「ということで、この世界の情報を教えてくれませんか?魔王さん?」
カエデは、お前も手伝えよと無言の圧力で言った。
魔王は、この世界の出来事を説明していく。
この世界は現在ペナルティーを受けて魔法が使えない事、そして使うと生命力を取られることなど
「へぇ~。なんか大変な時に来ちゃいましたね。」
次はお主の状況だ。
魔王は、カエデが間借りしているミシェル・バイヤーズについて知っている限りを説明する。
「うへ~。なんかそりゃ病んじゃいますね…。」
自分だったらさっさとどこかに逃げてしまいそうと思ったが、ミシェルの人生を狂わせるのはいけないと思い。とどまる。
「それにしても、生命力を魔力に返還するって、あちらの世界で可能になったら戦争が起こりそうですよ」
そう言いながらカエデは自分の中の魔力をチェックする。
「ん~、でも普通に使えそうですけどね…。」
魔王は、少し考えてから
「それは、カエデの魔力だからだろう…。ミシェルの魔力を借りて使ってみればよい」
カエデは、そんな器用なことができるかなと思いながら眠っているミシェルに借りますと心の中で言いながら魔力を循環させてみる
「あっ、なんかこのブレスレットが一時的に吸収してますか?上手く循環できない…。」
カエデは、そのブレスレットをジッと見る。そして、
「この魔力…。」と小さく呟いたとゆるく頭を振りそれ以上は何も話さなかった。
魔王と話をすり合わせたカエデは
「とりあえず、今日はここまでにしてください。私寝ないと明日この国の学園に遅刻しちゃいますよ」
「そうだな…。留学先で初日から遅刻はよくないな…。」
その言葉を聞いたカエデは、ベッドに行くのを辞める
「えっ?ここどこなんですか?」
「うむ。今日着いたばかりだが、短期留学先のクレアシオン王国だ」
カエデは、しゃがみ込むと
「どこだよそれ…。」
と気を失いたくなった。
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